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【2019秋冬パリメンズ ハイライト4】ユッタリと優しく 広がるフェミニンなシルエット
4日目の夜には、21時よりオリヴィエ・ルスタンによる「バルマン(BALMAIN)」のショーが開催された。実は19時に予定されていたが、翌日に開催予定だった「ディオール(Dior)が、「黄色いベスト運動」の影響を避けて「バルマン」の時間に移したため、「バルマン」が2時間遅くスタートすることとなった。こんな形で、「黄色いベスト運動」はパリコレに大きな影響を与えている。
そして5日目の朝には、午後に行われる予定だった「トム・ブラウン(THOM BROWNE)のショーが、「黄色いベスト運動」の影響で時間を繰り上げて開催された。そして夕方に開催されたマーク・ウェストンによる「ダンヒル(dunhill)」が最新コレクションを発表した。
バルマン(BALMAIN)
「バルマン」は、パリ市内、しかし郊外一歩手前のポルト・ドゥ・サン・クルーに位置するテニスコートを会場にショーを発表。パールやチェーン、クリスタルで彩られた「バルマン」のジャケットやドレスに身を包んだきらびやかな顧客たちが世界中から勢揃いし、固唾を呑んでショー開始を待ったのだが、登場したのは、意外にもモノクロームのストリート感覚溢れるアイテムだった。
これまで通りウィメンズのコレクションも含まれていたが、一見して男女のモデルの区別がつかないほど、アイテムに違いを持たせていないのも特徴で、ドレスは一点も見当たらない。スモーキングから始まり、マリン、ツイード、ライダースジャケットなど、定番が続くものの、アイテムによっては背中に刷新された「バルマン」のロゴと、スローガンがプリントされ、ストリートを意識したワイルドな仕上がりに。
ハーネスでハードな味付けをしたり、装飾的なチェーンのベルトやキャップなどのアクセサリー類で、グラマラスなイメージは保っているが、アイテム全体として見ると、非常にアクセスしやすく、「バルマン」版リアルクローズとなっている。クチュール期間中に発表されるクチュールラインとの差別化を図っているようだった。
・「バルマン」2019秋冬コレクション
トム・ブラウン(THOM BROWNE)
「トム・ブラウン」は国立高等美術学校(通称ボ・ザール)のホールを会場に、最新コレクションを発表した。
会場全体をビニール製の緩衝材で覆い、ランウェイの中央にはオブジェのようなものが置かれている。ただ、緩衝材の袋が被せてあり、それが何なのかわからない。コック帽のようなハットを被った緩衝材製のスーツを着用したモデルが登場し、ショーがスタート。ジャケットやシャツなどが一体化したドレスが多く見られ、その技巧の高さとアイデアに驚かされる。ジャケットが裾にだけ付いたドレスや、コートとジャケットとシャツがミックスされたドレス、ブルゾンとセーターと下着のタンクトップが繋がったドレスなど、見ていて楽しいものばかりだ。
最後に緩衝材製のスーツを着用したモデルが登場し、ランウェイに置かれているオブジェに被せられている袋を取り外すと、今まで登場した三十体以上のルックの人形が姿を現した。フィナーレではモデルはランウェイを歩かず、トム・ブラウン本人だけが登場。会場は大きな拍手に包まれた。
・「トム・ブラウン」2019秋冬コレクション
ダンヒル(dunhill)
「ダンヒル」はカルノー高校の体育館を会場にショーを発表。オーセンティックなブランドイメージを保ちながらも、差し色やアクセサリーで遊びを加えてモダンな仕事着を提案した。
フランネルのコートの襟にはコバルトブルーのバックスキンを配したり、ゆったりしたシルエットのスーツにはパープルのカマーバンドをコーディネートしたり、ほんの少し見える色味が目をひく。
ニットとレザーのボンディングスウェットやドロップショルダーのチェックのジャケットなど、若々しいアイテムも交えているのも新鮮。レザーカラーのハウンドトゥースチェックコートにコーディネートされたマホガニープリントのエナメルバッグは、今季のアクセサリーの中でも特に目立っていたアイテム。招待状にも使用されたが、マホガニーの木目はキーモチーフとなっていた。
今季は特にシャツの下に色味のあるタートルのTシャツを合わせるレイヤードのスタイリングが多く、それが全体をフレッシュに見せている。またトワル・コスモスと呼ばれる素材のブルゾンや、ゴム引きのルージュ・アッシュと呼ばれるボルドーのダウンジャケットなど、質感の異なる素材がコレクションを彩っていた。馬具メーカーのイメージが強く、馬のモチーフが度々登場するが、今季は西洋風のドラゴンがミリタリー調のコートのボタンで、ジャカード織りのジャケットのモチーフで、そしてシャツのプリントで登場。これまで以上に、語るべきトピックの多いコレクションとなっていた。
・「ダンヒル」2019秋冬コレクション
「黄色いベスト運動」は、メンズのパリコレクションにスケジュール的な影響をもたらしたが、会期5日目の土曜日、恒例のデモの日は、さして混乱も起きることなく淡々と進んでいる印象を与えた。コレクションに目を向けてみると、全体的にはカジュアルでスポーティなリアルクローズが多く見られ、またドロップショルダーやオーバーサイズなど、レディースのトレンドからの影響が散見された。ユッタリした優しいシルエットは、時代が求めているものなのかもしれない。そこに発色の良いカラーリングとちょっとした遊びのディテールを加え、目新しさと今っぽさを演出。そんなブランドが多かった印象だ。
取材・文 :清水友顕
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※この記事はアパレルウェブより提供を受けて配信しています。
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