【2019秋冬パリメンズ ハイライト3】パリの不穏なムードの中、彩豊かなルックが次々に登場

2019年1月20日 22:32

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記事提供元:アパレルウェブ

 3日目の午後から夜にかけては、藤田哲平による「サルバム(SULVAM)」、「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」、そして、「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)」のショーが開催された。4日目は、セバスチャン・ムニエによる「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」、ジュン・ジー(Junn.J)」、クリス・ヴァン・アッシュによる「ベルルッティ(Berluti)」、そして三原康裕による「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)」のコレクションが発表された。
サルバム(SULVAM)


 「サルバム」は、パレ・ドゥ・トーキョーで、ミニショー形式で最新コレクションを発表。アウグスト・ザンダーや、ダイアン・アーバスが撮影した1930年代の世界恐慌を生き抜いた人々のポートレイトからインスピレーションを得たコレクション。
 ジャケットに使用された黒のギャバは、30年代のジャケットで見られる素材。今回は特に、頭の中にシルエットが浮かんでからフリーハンドでパターンを引いたという。そんな自由さがトップスやパンツのステッチに現れている。
 メインモチーフとなっていたものが、レオパードと小花をミックスしたもの。パールを刺繡し、更に艶やかに仕立てたブルゾンやフーディなども登場。一見フリースのような質感のニット素材のノーカラージャケットもレトロモダンな印象で、30年代という時代設定を強く想起させるアイテムとなっていた。
「サルバム」2019秋冬コレクション
ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)


 「ドリス ヴァン ノッテン」は、アコー・ホテル・アリーナ内の複合競技場を会場にショーを開催した。
 フォーマルウェアを主軸に、次世代のテーラリングをイメージして創作したコレクション。モチーフとしては、フォーマルウェアとは対局にあるサイケデリックなタイダイを多用し、今シーズンも意外なミックス、意外なコントラストを見せる。
 ジャケットはショルダーラインを強調し、ウェストは高く細いのが特徴。またニット類についても構築的な肩のラインを見せている。カラーパレットは、ブラック、ネイビー、グレーといったダークカラーの他に、コントラストを描くキャメルやカーキを交え、終盤には万華鏡のような色合いへ。
 フライフィッシングの防水ウェアから着想したダンガリーシャツとウレタン引きのパンツのセットアップや、パッドが入ったキルティングのジャケットなど、引き続きスポーティなアイテムも登場。これまでのコレクションと比較すると、刺繍やプリントの要素が少なく、華やかさは控え目ではあるが、その美しさと味わい深さがジワジワと伝わってくるようなコレクションだった。
「ドリスヴァン ノッテン」2019秋冬コレクション
オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE)


 三宅一生による「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」のショーは、ポンピドーセンターで開催された。会場中央には綱渡りの装置と吊り輪が置かれ、アスレチックな雰囲気。プリーツをまとったダンサーたちが登場し、縦横無尽に走り回り、綱渡りをし、吊り輪でパフォーマンスを見せる、という演出。
 テーマは“Playground”。これはイッセイ ミヤケが2013年に企画した「青森大学男子新体操部」の特別ショーを手掛けたダンサーで振付師であるダニエル・エズラロウの手によるもの。
 ダンサー達がまとうイッセイプリーツは、身体の動きに合わせてグラフィカルなモチーフを描き出し、服とダンサーの身体が一体化しているかのような美しさを見せる。クライマックスは、ダンサー全員が走り回るパフォーマンス。その迫力に招待客達は圧倒され、会場は大きな歓声に包まれた。
「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」2019秋冬コレクション
アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)


 「アン・ドゥムルメステール」は、パレ・ドゥ・トーキョーを会場にショーを開催した。このブランドらしい、静かなロックテイストを保持しつつも、フローラルモチーフのシルクジャカードを用いたり、肩にギャザーを寄せて膨らみを出したり、といったフェミニンな手法を施して、新しいロックテイストを提案している。
 ゴートヘアのワイルドなファーコートには、ペールピンクのガウンシャツをインナーに合わせ、アストラカンのコートにはフローラルラメモチーフのジャケットをコーディネイト。どこかにフェミニンな要素を加えているのが特徴だ。
 差し色も、グリーン、ピンク、パープル、イエローなど、今までに無かった華やかさで、新鮮な印象を残した。
「アン ドゥムルメステール」2019秋冬コレクション
ジュン・ジー(Junn.J)
 「ジュン.ジー」もパレ・ドゥ・トーキョー内の別会場で最新コレクションを発表。モデルたちは全員フードを被り、アウトドアを思わせる暖かそうな装い。美しいシルエットのテイラード類は、異素材を半分ずつ組み合わせたり、トップ部分とボトム部分で異素材をドッキングさせたものが多く見られた。
 綿入りのジャケット類は、メタリック素材、迷彩などの素材を用いてバリエーション豊か。最後にカナダグースとのコラボレーションしたダウンジャケットも登場し、大いに目を引いた。
ベルルッティ(Berluti)


 アーティスティック・ディレクターがハイダー・アッカーマンからクリス・ヴァン・アッシュに交代した「ベルルッティ」は、オペラ座ガルニエ宮でショーを開催。中央の階段には、「ベルルッティ」の職人たちがレザーのエプロンを着用して、招待客達を出迎えた。
 ファーストルックは、「パティーヌ」と呼ばれる独自の染色法で染め上げた「ベルルッティ」の代表的なシューズを思わせるレザーのスーツ。
 ジャケットやコート類はドロップショルダーに仕立て、ライダースパンツを合わせたり、パーカにレザー製のロゴプレートを配すなど、これまでのオーセンティックなベルルッティのイメージとは異なり、一段と若々しくなった印象。
 パンツの多くは裾にジップが付き、フォーマルというよりもスポーティな仕上がり。赤やフューシャピンク、グリーン、コバルトブルーが差し色ではなく、むしろメインカラーとなっており、色の美しさが残像として目に焼きつく、華やかなコレクションとなっていた。
「ベルルッティ」2019秋冬コレクション
 
メゾン ミハラヤスヒロ(Maison MIHARA YASUHIRO)


 三原康裕による「メゾン ミハラヤスヒロ」は、ジョージ5世大通りに面する教会、アメリカン・カテドラルでショーを開催。太鼓隊が登場し、力強いパーカッションが鳴り響く中モデル達が登場。このブランドらしいカジュアルなストリートウェアを1950年代の雰囲気に落とし込み、様々なアイテムを再構築している。
 コレクションタイトルは“Play responsibly”。遊びをテーマに、シャツとブルゾンをミックスしたり、ボンバースの裏地と表地と分けたり、トレンチとGジャンを組み合わせたり、実験的な解釈を施して見せた。そこにカジノのイメージを加え、ルーレット台やトランプのカードケースを思わせるモチーフのニットを登場させたりするなど、ユーモラスに仕上げている。
 各アイテムをジックリと眺めてみたい、そんな衝動に駆られるコレクションだった。
「メゾン ミハラヤスヒロ」2019秋冬コレクション
 4日目を迎えて印象深かったことは、やはり色である。「アン ドゥムルメステール」は、本人がアーティスティック・ディレクターを務めていた時代から黒がメインで、クリスタル刺繍を施した原色のドレスが登場したシーズンが1回だけあったが、今回のようなバリエーション豊かな差し色を見たのは初めてだった。また「ベルルッティ」に至っては、今シーズンは原色がメインで、ベーシックカラーは引き立て役に回っていた。
 
 もちろん、実売の場でのメインは後者ではあるものの、ブランドとして打ち出したいものが原色だったのだろう。不況時には色が華やかになり、好況時には色が落ち着く、とする傾向は、常にファッション業界の中で指摘されることだが、今回はそれにピタリと合うシーズンになっているようだ。
取材・文 :清水友顕
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