【2019秋冬パリメンズ ハイライト2】ダスティパステル、イエロー、ピンク…目を奪う色の数々

2019年1月18日 23:02

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記事提供元:アパレルウェブ

 中盤にさしかかった2019秋冬パリメンズ。パリのメンズコレクション2日目の夜のハイライトは、高橋盾による「アンダーカバー(UNDERCOVER)」、そして常に注目を集める「ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)」のショー。それぞれ、カルト的な人気を誇る映画からインスパイアされていたことが興味深い。
 そして3日目の朝は、アレクサンドル・マテュッシによる「アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI Alexandre Mattiussi)」、そして高橋悠介による「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」のショーが開催された。
アンダーカバー(UNDERCOVER)


 「アンダーカバー」は、劇場・コンサートホールのサル・ワグラムを会場に最新コレクションを発表した。不穏な音楽が流れる中、登場したのが、羽の付いた山高帽を被り、大きな鼻を携える仮面を装着したモデル達。
 一見してベニスのカーニバルで着用される中世のコスチュームを思わせたが、ショーが進むにつれ、1971年のスタンリー・キューブリック監督作『時計じかけのオレンジ』に登場するアレックス・デラージをはじめとする少年達の衣装と重なっていく。少年達の写真をプリントしたスウェットなど、ストレートに表現したアイテムも。
 劇中、少年達が作家宅に押し入って歌う「Singing in the rain」が流れると、雰囲気は一気に毒々しくなり、身震いを感じるほど。そしてジーン・ケリーの「Singing in the rain」がかかり、ホッとさせるフィナーレへ。「アンダーカバー」にしか生み出せない、強烈な世界観に圧倒された。
「アンダーカバー」2019秋冬コレクション
 ちなみにコレクション中に登場したベートーベン(「時計じかけのオレンジ」のデラージ少年が崇拝する作曲家)のモチーフは、「ヴァレンティノ」のピエールパオロ・ピッチョーリとのコラボレーションによるもので、先日発表された「ヴァンレンティノ」のコレクションでも登場している。
ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)


 「ラフ・シモンズ」は、ナポレオン1世の弟の孫、ロラン・ボナパルトの邸宅だったシャングリラ・ホテルを会場にショーを開催した。
 ベルギーのバンド、ウィスパリング・サンズの演奏を挟んで、前半と後半に分けて発表。前半はダークカラーを中心にしたもので、オーバーサイズのコートがメイン。アイテムによっては蝶や花などの愛らしいチャームが付く。そしてオーバーサイズのセーターと、アニマルプリントのコートには、1986年のデヴィッド・リンチ監督作『ブルーベルベット』の中のローラ・ダーンが登場する場面のプリントをアップリケ。数分のバンド演奏の後、色鮮やかなコート・ブルゾン類が登場するが、実は前半に登場したアイテムの色違い、微妙な素材違い、モチーフ違いのアイテムを全く同じモデルが着用していることに気付かされる。
 「ラフ・シモンズ」らしい美しいシルエットに驚嘆しつつ、更に、同じカッティングでも色の違いによって全く印象が異なることを伝える、という実験的なコンセプトに唸らされたのだった。
 
「ラフ・シモンズ」2019秋冬コレクション
アミ アレクサンドル マテュッシ(AMI Alexandre Mattiussi)


 「アミ アレクサンドル マテュッシ」は、シャイヨー宮のボールルームを会場にショーを発表。非常にベーシックなアイテムで構成されたコレクションを発表してきたマトゥッシだが、今シーズンはオーバーサイズやドロップショルダーといったモダンなシルエットを取り入れて、モード寄りに移行しつつある印象を与えた。
 グリーンとオレンジを差し色に、ベージュ、ミントグリーン、パステルピンクを中心にした美しいカラーリングで、エレガントなパリジャン・パリジェンヌスタイルを提案。秋冬コレクションではあるが、春を待ちわびているかのような色合いとなっていた。
 終盤で客席を仕切っているカーテンが、そして窓際のカーテンが引かれると、目の前にエッフェル塔が現れて招待客たちは拍手喝采。美しいアイテムに、そしてロマンティックなパリの情景に酔いしれた瞬間だった。
「アミ アレクサンドル マテュッシ」2019秋冬コレクション
イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)


 「イッセイ ミヤケ メン」は、パレ・ドゥ・トーキョーを会場にショーを発表。コレクションタイトルは“Feeling the wind”。風が持つ自由さやエネルギーにインスパイアされ、このブランドらしいクラフトとテクノロジーをプラス。そして多彩な染織技法を用いて、“暖かくも爽快な仕事着”を提案している。
 高橋悠介が得意とするロウケツ染めによるイエローのモチーフを配したジャケットや、二重織りのウール生地を縮絨したフリンジのコートでは、風やスピード感といった目に見えないものをモチーフとして表現。ウール、ポリエステル、リヨセルの混紡素材を揉み洗いすることで、ウール部分だけを縮絨させた素材のコートやスーツは、突風をイメージし、非常にグラフィカルな仕上がり。
 絣の技巧を用いてスピード感ある柄を表現したシリーズや、ポリエステルの中空糸を用いて軽さを強調した渦風モチーフのプリント素材によるブルゾンなども登場。先染めチェックのフランネル生地を緯糸に用いてボーダーにしたツイードのシリーズや、上部分のみ起毛させたニットのプルオーバーなども独特の美しさを見せる。シルエットは一見してリアルクローズだが、このブランドにしか成し得ない巧みな素材使いにより、各アイテムには強い独自性を感じさせた。
「イッセイ ミヤケ メン」2019秋冬コレクション
 3日目を迎えて、やはり色の美しさに目を奪われる瞬間が多いことに気付かされる。特に、アミ アレクサンドル マトゥッシのコレクションでの優美な色使いは、ここ最近のフランスにおける切迫した状況を和らげようとするかのよう。エッフェル塔を眺めながら、夢か現か、虚実入り混じる感覚に襲われた。
 
取材・文 :清水友顕
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