【2019秋冬ミラノメンズ ハイライト2】オールダークが次のトレンドか 「プラダ」が示す新機軸

2019年1月15日 11:52

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記事提供元:アパレルウェブ

 ミラノメンズ3日目は、ミラノコレクション初参加の「ベッドフォード(BED.J.W. FORD)」に始まり、「エムエスジーエム(MSGM)」、「スンネイ(SUNNEI)」、「ダックス(DAKS)」、「ミャオラン(MIAORAN)」、「プラダ(PRADA)」、「ディースクエアード(DSQUARED2)」などが最新コレクションを披露した。
ベッドフォード(BED J.W. FORD)


画像:ベッドフォード
 前回のピッティでランウェイショーを行った「ベッドフォード(BED J.W. FORD)」、今回はイタリアファッション協会のサポートにより、ミラノコレクション初参加となった。デザイナーの山岸慎平は、“SELF REFLECTION”をテーマに自分が服作りを始めた頃に立ち返って今回のコレクションを作ったとか。“着飾る”をブランドコンセプトに掲げる山岸の原点回帰は、大胆なレイヤードと不均衡なバランスを前面に出しつつ、ディテールにはとことん凝ることで、ドレスアップされていく。
 アノラックの上にセーター、スーツの上からショートブルゾン、ベロアのジャケットの上にダウンといったテイストの違う重衣料たちを重ねる。アシンメトリーなカットや、細身のテーパードからワイドなクロップス、またはサルエルパンツまで様々なボトムとの微妙な組み合わせで、あえてバランスを崩しているのが印象的だ。そして裾を切りっぱなしにされたパンツや穴や、ほつれのあるニット、ドローコードがつけられたブルゾンなどディテールが個性を放つ。それに合わせる足元はウエスタンブーツ。こういった微妙なバランスの遊びはイタリア人デザイナーにはなかなかできない。それが、ベッドフォードがイタリアで早くも快進撃を始めている理由なのかもしれない。
「ベッドフォード」2019秋冬コレクション
エムエスジーエム(MSGM)


画像:MSGM
 今回の「エムエスジーエム(MSGM)」のコレクションは、インビテーションに書かれた“TURBO(ターボ)”という言葉が象徴するように、F1レースの世界。ライダーズジャケットやアノラック、ジャンプスーツなどのアイテムや、レーシングキャップ、ウエストポーチ、バンダナなどのアクセサリー類、プリントやディテールも炎やチェッカーフラッグが多用され、モータースポーツの世界を強調する。または前回の「アタッカー YOU!」に続き、漫画「キャプテン翼」のシュートシーンがプリントされているアイテムもスピード感を盛り上げる。が、そんな中にペンシルストライプのパンツやスーツやキャメルコートなどクラシックなアイテムが時々差し込まれているのが印象的だ。
 「RUN AWAY」、「MORE SPEED」などのロゴモチーフも多用され、まさにスピード感が強調されたパワフルなコレクションだが、これは猛スピードで走り過ぎている現代への、MSGM風の皮肉なのかもしれない。
「エムエスジーエム」2019秋冬コレクション
プラダ(PRADA)


画像:プラダ
 今回はまたプラダ財団に会場を戻した「プラダ(PRADA)」。今回のセットはまるで両サイドに並べられた火が暗い空間に道を作っているような、ダークでドラマチックな演出だ。そんな暗い空間から抜け出してきたかのようにトータルブラックのルックでショーはスタート。これがプラダ?と目を疑うようなトータルブラックやダークグレーのオンパレードだ。
 テーラードスーツやジャケットが多く登場し、それらはウエスト部分をベルトで何重にも巻かれている。またはモヘアやツイスト編のボリューミーなニットさえボトムにインするなどウエストを強調したコーディネートが印象的だ。中盤からはミリタリーウエアが登場するが、それは「ミリタリー風」という生易しいモノではなく、ドンズバの軍服でかなりタフなイメージ。そんな中にカラフルなフェザーのディテールやビジュー使い、ミニクラッチなどのフェミニンなディテールを部分的に入れているのがプラダらしい。洋服はあくまでダークがベースだが、ディテールやプリントに赤や緑など原色の差し色を入れたりカラフルなアクセサリーを差し込んでいるのもブランドの個性を強調する。
 テーラードスタイルもミリタリーもメンズファッションには必須のスタイルだが、それにプラダが真っ向から取り組んだというのは珍しいのではないだろうか。また、ここまでダーク感を前面に出したコレクションも意外な感じだ。が、いつもとまったく違ったことをやってもやはりプラダらしいところに、ブランドとしてのパワーを感じる。
・「プラダ」2019秋冬コレクション
エトロ(ETRO)


画像:エトロ
 今回、昨年末にリニューアルオープンしたミラノ店にてプレゼンテーションを行った「エトロ(ETRO)」。“ETRO DREAM”をテーマに夢の中のような幻想的な世界を、ドラゴン、ユニコーン、妖精など架空の生物たちをプリントなどのモチーフに使っている。
 また前回テーマだった“NATURA MANIFESTA(自然に関するマニフェスト)”という考えは今シーズンも継続され、エコサスティナブルな製法で出来たラインも。例えば、ペットボトルを再生したり、不要になったニットをリサイクルした糸で作ったアイテム、またゼロマイル運動の一環としてイタリア産の羊毛を使い、その羊毛も本来の毛の色だけを活かし手染めを行わないで作ったセーターなどが展示された。
「エトロ」2019秋冬コレクション
サントーニ(SANTONI)










画像:サントーニ
 「サントーニ(SANTONI)」のプレゼンテーションは、ミラノで最も有名かつ高級な星付きレストラン「クラッコ(Cracco)」で開催。そのゴージャスな雰囲気を活かし、架空のオークションという設定で新作を発表。招待客が参加して新作は実際にセリで落とされ、落札者には秘密の逸話が知らされるといったユニークな演出だ。コレクションはクラシック、アウトドア、ラグジュアリー、ストリートという4つのカテゴリーで展開。
 クラシックでラグジュアリーなスタイルは保ちつつ、パラゴム仕上げのソールやラバー素材など機能性やモダンなディテールを入れ込んだ現代的なコレクションに仕上がっている。
ハンティングワールド(HUNTING WORLD)


画像:ハンティングワールド
 今回はプレゼンテーション形式でコレクションを発表した「ハンティングワールド(HUNTING WORLD)」。クリエイティブ・ディレクター相澤陽介は、同ブランドらしい冒険の精神とアメリカンヘリテージを、森を舞台にしたアウトドアイメージで表現する。
 これまでイタリア製だった製品の中で、初めてアメリカンメイドのアイテムやブランドのアイコン的素材「バチュー・クロス」で仕上げたアウターやスニーカーなど、意外とこれまではなかったアイテム達が登場。またタイポグラフィーアートでポップに仕上げたベン・アインによるバッグやウェアのミニコレクションも発表された。
「ハンティングワールド」2019秋冬コレクション
トッズ(TOD’S)







画像:トッズ
 今回「トッズ(TOD’S)」は本ラインと、前回のコレクションでデビューした「トッズ ノーコード(TOD’S NO CODE)」の両方の新作を発表。本ラインは“ジェントルマンズ フロー”がテーマ。24時間流れるように活動し続ける男たちのために、どんなシーンでも使える、クラシックでありながら機能性にも優れたコレクションを発表。レザーに定評のあるブランドながら、あえてエコレザーのラインを一部提案したり、クラシックなアッパーにレザーソールを合わせたアイテムが多く見られた。また第3弾となる「ノーコード 03」をホロスコープで機能やデザインバランスを解説しながら展示するという未来的なプレゼンテーションが行われた。
「トッズ」2019秋冬コレクション
ダミアーニ(DAMIANI)


写真左から 「Dサイド」「ベル・エポック」
 「ダミアーニ(DAMIANI)」は「Dサイド(D.SIDE)」、「ベル・エポック(BELLE EPOQUE)」、「エデン(EDEN)」の新作を発表。男性も使えるユニセックスのアイテムとしては、「Dサイド」の半貴石のシリーズや、「ベル・エポック」のバングルタイプのブレスレットなどが登場した。ファッションウイークの機会に、「オスカー デッラ ジョイエレリア(Oscar della Gioielleria)」に選ばれた同社の18作品の中から3点を特別に展示した。
取材・文 :田中美貴
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