【2019秋冬ピッティ・ウォモ ハイライト1】頑張って洒落こむ時代は終わり!快適に便利にモーダを楽しむ

2019年1月11日 23:18

印刷

記事提供元:アパレルウェブ

 1月8日、第95回ピッティ・イマージネ・ウォモが伊フィレンツェのフォルテッツァ ダ バッソで開幕した。好天には恵まれたものの、かなりの寒さ。だが、それにも関わらず相変わらず会場の外ではスナップ大会が繰り広げられている。さて今回のテーマは「THE PITTI BOX」。びっくり箱をイメージし、様々なテーマで各所に置かれたいくつかのボックスがインスタレーションになっている。参加型でインスタ映えする仕掛けになっているのが“今”を象徴している。
 
 そんなインスタレーションからも再確認できるように、もはやピッティはかつてのクラシコイタリア全盛期のようなメンズクラシックの祭典ではない。これは今回に始まったことではないが、回を追うごとにそれは色濃く出ている。ゆえに、今回も全体的な流れはスポーツ&アウトドア、リラックス…といったトレンドが継続し、軽くゆったりと快適で、防寒、撥水や透湿に優れていたり、ウォッシュレスなどでケアが楽だったり、といった機能性に優れたアイテムがより求められる傾向にある。つまりはシャツを着てタイドアップするよりも、タートルやパーカーをジャケットに合わせ、足元は革靴ではなくスニーカー…という感じ。つまりお洒落のために頑張る時代は終わり、快適で便利にお洒落を楽しむ時代なのだ。だが、そんな中にも今シーズンは、(あくまで現代風に)クラシック回帰の小さな新しい流れが芽生え始めているように見えた。



 それを象徴するのが機能性はキープしつつも見た目はクラシック、というアイテムの登場だ。例えば、「ヘルノ(HERNO)」はゴアテックスを使用したアウトドアのライン「ラミナー」を強化し、本ラインとは別ブースにて展示。“サルトリア・エンジニアリング”をキーワードに、これまで黒、グレーなどのシックカラーを使ったアウトドアギアメインだった同ラインに、ウールやコットン、フランネルなどの素材をメンブランに張り付けたり、プリント、色を多用してビジネスにも対応できるエレガントなデザインを追加し幅を広げた。透湿性、撥水性などアウトドアギアとしての機能的部分はそのままに、デザインをクラシックにすることで都会のライフスタイルにマッチする。


「サマス(SAMAS)」
 またアウターブランドの「サマス(SAMAS)」にも同様のアプローチが見られ、リモンタのナイロンジャカードをダウンのライニングに貼り合わせたクラシックなテイストを持つアイテムも登場。お得意のダウンはタウンユースでも使えるようなモダンなデザインに仕上がっている。


 「ラルディーニ(LARDINI)」も本ラインとは別に「LIKNIT」という新ラインを打ち出し、メンブランとウールをはり合わせた独自開発した素材で、軽くて透湿性のある機能的ジャケットを展開していた。







 一方、スポーツウエアとテーラリングのミックスと言う点では先駆者的存在の「ジー ゼニア(Z ZEGNA)」はサイクリングをテーマに、より未来的なアプローチを提案した。ヒーティングシステムが内蔵された、「ICON WARMER」、携帯充電器が内蔵された「POWER+ジャケット」、さらに進化した洗えるアウターの「ウォッシュ&ゴー」など、ハイテクを駆使した素材やディテールを使用。それを高いテーラリング技術を駆使して仕上げているため、未来感の中に上品なエレガンスが混ざったアーバンスポーティーな雰囲気にまとまっている。




 機能性の高いハイテク素材を語る際に、同時にでてくるのがエコサステナビリティだが、そんな中にもクラシックテイストやテーラリングを入れ込むのは前出同様の流れの様子。
 その先駆者的存在ともいえるのが、ロロ・ピアーナファミリーのフランチェスコ&ジャコモ・ロロ・ピアーナ兄弟が創業し前シーズンデビューした「シーズ(SEASE)」。ブランド自体のコンセプトがサステナビリティを意識し、自然素材を使ったもので、そこにトラディショナルなテイストで表現している。今シーズンのテーマはマウンテンギア。また先日地震で被害を受けた中部イタリア支援活動の一環として、ヴィッソという地方に古くからあったウールを使い、マルケ州の山に生殖するグアドという自然の植物の葉(“ブルーゴールド”とも呼ばれている)を乾燥させてペースト状にした染料を使って染めた生地を使った製品作り“Seaching for the Blue”のプロジェクトも発表した。




 またアウターブランドの「パルト(PALTÒ)」は、リサイクルダウンを使って作った新しいブランド「プルメ(PLUME’)」をお披露目。破棄されたダウンを品質によって分類し、塵の除去、洗浄、乾燥をしてリサイクルして新しい製品に使用するというものだ。
 コレクション全体でエコを謳うわけではなくても、エコアイテムのシリーズを部分的に差し込んでいたブランドも多い。これまではあまりこの手の動きは追ってこなかった「イーヴォ(HEVO)」もアニマルフレンドリーでウォッシャブル、透湿、撥水性の高い新しいウール「AQA」を使ったアイテムを積極的に展開していたし、「ブリリア(BRIGLIA)」もウォッシャブル、UVカットなどの機能を持った「パフォーマンス」ラインを展開。素材自体の開発だけでなく、例えばサイドシームをなくし、内ももだけで縫うパターンを使うことで裁断の際の生地や労力の無駄を減らしているモデルもあった。
取材・文:田中美貴
ピッティ・イマージネ・ウオモでのコレクションをチェック

※この記事はアパレルウェブより提供を受けて配信しています。

関連キーワード

関連記事