木星の磁場に新たなモデル 説明できぬ複雑な磁場が判明

2018年9月11日 16:46

印刷

探査機ジュノーが撮影した木星の北半球 (C) NASA / JPL-Caltech / SwRI / JunoCam

探査機ジュノーが撮影した木星の北半球 (C) NASA / JPL-Caltech / SwRI / JunoCam[写真拡大]

  • ジュノーに搭載された3体のLEGO (C)NASA / JPL-Caltech / KSC

 アメリカ航空宇宙局(NASA)の木星探査機ジュノーが木星の磁場測定を行ったところ、これまで知られていた惑星の磁場モデルと異なる結果が得られたことが分かった。研究の詳細はイギリスの学術誌「ネイチャー」に掲載されている。

【こちらも】“木星の月“エウロパ 地中わずか1cm先に生命体の痕跡か

 今回測定を行ったのは、NASAが2011年に打ち上げた木星探査機ジュノー。打ち上げから約5年後の2016年に木星の極軌道へ、また観測に必要な周回軌道への投入に成功した。主な目的は木星の組成や重力場、磁場、磁気圏の詳細な調査であるが、今回初めて木星の表面近くの磁場の直接測定に成功。最初に行われた9回のうち、8周回分の磁場観測の分析を行ったところ、木星の外側の磁場が現在知られているどの惑星磁場とも大きく異なっているという結果が得られた。

 これに基づき、ハーバード大学地球惑星科学科大学院のキンバリー・ムーア氏らの研究グループは、木星の表面から一定の深さまでの磁場マップを作成しこれを分析。木星の内部では、磁束(磁界の強さと方向を表す線)が北半球の狭い帯状の地域から出、赤道付近で内部へと戻っていることが判明した。地球は全体でみると双極子磁場(NとS、二つの極がある)であるが、今回のこうした磁場は非双極子磁場と呼ばれる。木星の場合、この非双極子磁場は北半球に限定され、南半球は双極子磁場になっていることもわかった。

 研究グループは今回の予想外の磁場形状について、密度あるいは電気伝導度、もしくはその両方の半径方向の変動から(この磁場形状は)生じていると考えている。また今回得られたモデルは木星磁気圏の詳細を解明する上で特に興味深く、磁場の生成過程の解明にも役立つのではと期待されている。

 余談だが木星探査機ジュノーにはローマ神話の神ジュピターとその妻ジュノー、木星の衛星を発見したことでも知られるガリレオ・ガリレイの3人を模したLEGO人形が搭載されている。彼らがどのように宇宙空間を旅しているのか知るすべはないが、いささか楽しんでくれているのではないかと思う。地上への帰還予定はないが、様々なものを背負ってミッションへ参加してくれたことに感謝したい。(記事:秦・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事