探査機ニュー・ホライズンズ、「最果ての地」天体をとらえることに成功

2018年9月9日 13:24

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撮影された「ウルティマ・トゥーレ」の写真 (c) NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute

撮影された「ウルティマ・トゥーレ」の写真 (c) NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute[写真拡大]

 アメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査機ニュー・ホライズンズがカイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ(最果ての地)」の姿を初めてとらえた。「ウルティマ・トゥーレ」は太陽から約65億キロメートルの地点にあり、今回の観測は、「ウルティマ・トゥーレ」から1億7,200万キロメートル離れた場所で行われた。これは、観測史上、太陽から最遠の地で撮影された天体となる。

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 「カイパーベルト天体」は太陽系の中でも海王星軌道より遠い太陽系外縁天体のうち、エッジワース・カイパーベルトと呼ばれる円盤状の領域にある天体の総称。かつて太陽系の第9惑星とされていた冥王星の軌道もこのエッジワース・カイパーベルトに含まれる。探査機が訪れる天体としては史上最遠であることから「Ultima Thule(ウルティマ・トゥーレ、最果ての地)」の愛称が付けられた。「最果ての地」らしくカイパーベルト天体付近は太陽からの距離が遠すぎるため太陽電池を使うことができず、ニューホライズンズには原子力電池が搭載されている。地球からの距離も遠いため通信速度も低下するが、直近のミッションであった冥王星探査時のデータはメモリに蓄積し数カ月かけて地球へと送信された。

 今回撮影された48枚の画像もNASAのネットワークを通じ、撮影の後数日間をかけて地球へと送られた。探査機ニューホライズンズの長焦点望遠カメラ「LORRI」で撮影されたこの画像には背景の恒星が非常に多く写っており、ウルティマ・トゥーレを探し出すのは非常に困難を極めた。まさに「干し草の中の針を探すようなもの」と語ったのはジョンズホプキンス大学応用物理学研究所LORRI主任研究者のHal Weaver氏だ。氏によると、現段階ではただの「こぶ」のようにしか見えないウルティマ・トゥーレだが、探査機が近づくにつれもっと明るく見やすく写るようになるとのことだ。

 今回の撮影と今後4カ月の間に得られる観測データをもとに、運用チームは探査機の軌道を修正し2019年1月の最接近に備える。地球からの距離が遠いため、何かと「史上最遠」という肩書が踊るが、「最果ての地」への探検はそれでなくても心躍るものであると言っておきたい。なお、「ウルティマ・トゥーレ」の正式な名前はまだ決まっておらず、探査の後に命名される予定だ。(記事:秦・記事一覧を見る

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