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世界的な高級車メーカーとしての基盤を確立したアウディでは、15年以降排ガス不正問題で幹部6人が辞任に追い込まれ、現役取締役も詐欺の容疑で捜査対象となっている。今年6月にはルペルト・シュタートラー会長がドイツ検察当局に逮捕されるという衝撃の発表があった。容疑はディーゼル車の排気ガスに関わる不正で、詐欺や虚偽記載の嫌疑がかけられている。15年に発覚したディーゼルエンジンの不正がその後の、世界におけるEV化への潮流を決定付けたと言っていいだろう。
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17年6月には有力メーカーとしては初めて、スゥエーデンのボルボが19年以後の発売する車両すべてをEVやハイブリッド車などの電動車にすることを発表し、7月にフランスやイギリスが40年までに国内のガソリン車及びディーゼル車の販売を禁止することを発表した。同月にはアウディに加えて、メルセデス・ベンツ、BMWの“ジャーマン3”として知られるドイツの自動車大手が、EVの開発に精力を傾け、EVを搭載するためのプラットフォーム(PF)を19年以降に揃って投入する計画を発表している。同様の動きはインドや中国などのアジアにも及び、世界中がEVに雪崩を打ったかの印象を与えた。
17年7月、フランス政府は40年までに国内のガソリン車及びディーゼル車の販売を禁止することを発表した。世界大手の自動車メーカーを自国に抱える国が、内燃機関車の禁止を世界で初めて明確に打ち出したとして話題になった。フランスでは大気汚染問題は深刻だ。パリ市では昨年1月から排出ガス汚染のレベルを表示するステッカーによる車両通行規制実施している。ステッカーはフランス政府が大気汚染対策として導入したシステムで、車両を排ガス汚染度の小さいものから順に0から6までの7段階のステッカーで色分けした。レベル6の旧型車はステッカーを取得できず平日の日中に市内を走行することは出来ない。通行制限は段階的に拡大される。このシステムは20年までにフランス全土の20前後の大都市圏でも導入予定だ。
17年8月にベルリンで開催されたドイツ政府および自治体と自動車大手の首脳会合で、メーカーが自主的にディーゼル車を無償改修を行い排ガス除去能力を高めて、環境対策を強化することで合意が形成され、自治体が検討していたディーゼル車の走行禁止を求める議論には歯止めが掛かった。ドイツ自動車工業会は「ディーゼル禁止が避けられたことを歓迎する」と表明している。ドイツは国家としてもメーカーとしてもディ-ゼル車を延命させることを選択した。型式の古いディーゼル車を最新の環境車に買い替える奨励金をメーカーが負担する。買い替えの対象にはEVやハイブリッド車(HV)のみならず、最新のディーゼル車も含まれる。ドイツメーカーが培ってきた高度な燃料噴射技術や触媒技術は、国家的な財産と言えるレベルにある。みすみす大きな財産を捨てたくないということである。
領土を接する欧州の大国同士でもエネルギー問題に対するスタンスは全く違う。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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