エネルギーの消費が情報価値を生み出す【スマホでサンマが焼ける日】

2018年8月27日 18:40

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記事提供元:biblion

 【第18回】電気・エネルギー業界は今、50年に1度の大転換期を迎えています。電力自由化をきっかけに各家庭へのスマートメーター導入が開始され、電力産業、電力関連ビジネスは一気にデジタル化の道を歩み始めました。本連載では、RAUL株式会社代表取締役の江田健二氏が、IoTとも密接な関係を持つ電力とエネルギーの未来を、ワイヤレス給電、EV(電気自動車)、ドローン、ビッグデータ、蓄電池、エネルギーハーベスティング、VPPといった最新テクノロジーの話題とからめながら解説します。

エネルギーの消費が情報価値を生み出す【スマホでサンマが焼ける日】

 本連載は、書籍『スマホでサンマが焼ける日』(2017年1月発行)を、許可を得て編集部にて再編集し掲載しています。

「エネルギー×情報」であなたの情報資産が売れる!

 今、あなたはどうやってお金を稼いでいますか?
 中には株やその他の投資、不動産などで、いわゆる不労所得を得ている人もいるでしょうが、ほとんどの方は何かしらの労働によってお金を得ていると思います。つまり、みなさんは自分の「労働力」(スキルや才能、または時間)を売って、その引き換えにお金をもらっているわけです。

 でも、「労働力以外のものを売ってお金にできたらいいな、しかも手間隙もかけずに、苦労しないで」と思ったことはありませんか? そんな方法があるなら今すぐ教えてほしい、と言う声が聞こえそうですが、これからはそれが可能な時代になります。

 インターネットが出てくる前は、お金を稼ぐ方法は、個人であれば「労働力を売る」、会社や商店であれば「モノを売るか、サービスを売る」ことしかありませんでした。しかしインターネットによって、個人でもブログやメルマガなどで課金したり広告をつけたりして「情報を売る」ことができるようになりました。
 そして今、私たちは今まで売ることのできなかった新しいモノを売ってお金にできるようになりました。それは電気というエネルギーであり、電気利用情報です。
 個人が電気自体を売ることは、すでに太陽光発電などによって実現していますが、これからは前述したようにもっと個人発電が進んだり、個人で電気を貯めておいたり簡単に人に送ったりできるようになるので、誰もが気軽に電気をつくり、売れる時代がくるでしょう。

 今後さらに重要な点は、2つ目の「電気利用情報、エネルギー情報」をお金にすることができるということです。これからは個人の電気利用データに新しい価値が生まれる時代です。したがって、「あなたの電気利用情報を買います」という企業や、ここまでの細かいデータを開示してくれたら家電を安く売ります、といったサービスも出てくるでしょう。また、自治体が地域でのエネルギー利用状況を集めておいて、それを使いたいIT企業や電力会社に売ることによって対価を得られたり、電気をタダで供給してもらえるといったこともあるでしょう。

 これまでの、電気自体がお金がかかるもの、消費するだけのものから、使ったデータを第三者に渡すことによって報酬が得られる、つまり「買うものから、売るもの」になる可能性を秘めています。それだけで生計が立てられるわけではないと思いますが、細かい電気利用情報をオープンにすることで、月に払っている電気代がタダになるくらいの収入は得られるようになるのではないでしょうか。
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情報はクローズドよりオープンにするほうが得する時代

 これからは個人的な電気使用状況をオープンにすることによって様々なメリットを享受できる時代になっていきます。
 しかし、現在ネットの世界での個人情報について様々な問題が指摘されているように、今後、電気利用データの提供、開示についても問題にされていくでしょう。電気利用データは個人の生活スタイルや生活パターン、ライフログがすべて分かってしまうので、ある意味重要な個人情報です。
 したがって、今、ブログやSNSで自分の生活や考え、場合によっては個人情報的なものを好んでオープンにして、それによって得られるメリットに価値を感じている人と、「SNSなんてやらない。プライベートなことはできるだけオープンにしたくない」という人がいるように、「自分の電気利用情報はオープンにしたくない」という人も出てくるはずです。

 どちらの考えかたも、それは個々の価値観なのでどちらが正しいということはありませんが、私は、これからは電気利用データやIoTで「見える化」される個人的なデータが大きな価値を持つようになる時代には、情報をできるだけオープンにするほうがよいと思っています。
 かつては個人的な情報を含め、情報は開示しないでクローズドにしておくことのほうが良いという考え方が主流であったと思いますが、インターネット社会では、逆に情報をオープンにすることで、人やお金が集まってくる、様々な可能性が広がる時代になりました。今は、マインドセット(思考様式)としてクローズドよりオープン思考の人のほうが得をする時代です。

 それは単に情報をお金に変えられるということではなく、家電の使われ方など電気利用のデータを開示すれば様々なアドバイスがもらえて、より生活が豊かになるということです。たとえば健康診断がよい例です。自分の体やメンタルに関するデータをオープンにして、それを診断してもらうことによって「あなたはこういう生活をしたほうがいいですよ」とアドバイスをもらえます。こうした健康診断と一緒で、自分の情報をオープンにすることでもっと得をするということです。

 これからはエネルギー情報資産の時代です。IoTで電気の使われ方が変わってくると同時に、電気、エネルギーの消費が情報価値を生み出す時代になるのです。

書籍著者:江田 健二さん

書籍著者:江田 健二さん「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆/講演活動などを実施。富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。その後起業、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。RAUL株式会社 代表取締役、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員。 元のページを表示 ≫

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