大人との会話は幼児の言語能力を伸ばす マサチューセッツ工科大の研究

2018年8月17日 11:43

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●両親の社会的地位や収入は関係なく発達する言語能力

 マサチューセッツ工科大学が『Journal of Neuroscience』に、幼児の言語能力発達について最新の研究結果を発表した。

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 それによると、幼児期に成人との会話が日常的であった子供は、言語に関する2つの脳領域の発展が促進される可能性が示唆された。また、両親の社会的ステイタスや収入とは関係なく、大人との会話によって語学力を培うことができるという。

●90年代の研究とは異なる結果

 現在にいたるまで、家庭環境や経済状況と子供の語学力については一貫した研究結果がなされてこなかった。90年代には、「ワード・ギャップ」という言葉が生まれている。これは、就学年齢に達した時、育った環境が貧困層であった場合に子供たちが習得している語数が大幅に少ないという研究結果であった。

 また家庭環境と語学力についても、心理学の分野においてその相関性が立証されていたが、根本的な原因については不明のままとなっていた。

●就学率や学歴にも影響を与えた「大人との会話」

 今回のマサチューセッツ大学の研究では、両親や育つ家庭の社会的地位や経済的状況とは関係なく、早期から大人との会話が日常的であった子供は成人後に認知スキルが発達し、学歴も高いことが明らかになった。

 研究チームは、4歳から6歳の幼児の脳の異なる領域の神経細胞を分析、また家庭内の会話も記録した。

●ブローカ野とウェルニッケ野、会話の関連性が

 この2つのデータを詳細に分析した結果、両親との会話が多い子供ほど、脳の領域の一部であるブローカ野とウェルニッケ野にその関連性が認められた。ブローカ野は「運動性言語中枢」、ウェルニッケ野は「知覚性言語中枢」と呼ばれ、言語に関する基本的な領域と考えられている。そして、今回の研究では、親の給与水準とこの脳の領域における発展の関連性は認められなかった。

●社会的に不利な条件にある子供たちにもチャンスが

 研究者たちは、研究結果から社会的に不利な条件にある子供たちのために、習得語数の少なさを補う教育的プログラムを組むことができると語る。大人との会話が増えることによって、家庭環境が原因とされていた習得語数の多寡はある程度調整できる可能性が出てきたことになる。

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