NASA、3基の電波望遠鏡を連携させ小惑星を双子星と確認

2018年7月29日 10:33

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アレシボ天文台の電波望遠鏡 (c) 123rf

アレシボ天文台の電波望遠鏡 (c) 123rf[写真拡大]

 NASAは7月12日、世界最大級の電波望遠鏡3台を使って、小惑星「2017 YE5」がそれぞれ900メートルの大きさを持つ、2つの双子小惑星であることが分かったと発表した。昨年見つかった小惑星「2017 YE5」(以降、小惑星)は、6月21日、地球から600万キロメートルと一番近い軌道に乗った。今度、同じように地球に近づくのは170年後のことになる。

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 6月21日から26日の間に、小惑星の詳しい観測のために使用した電波望遠鏡は、「アレシボ天文台」「グリーンバンク望遠鏡」「ゴールドストーン・太陽システム・レーダー」の3つである。

 米国科学財団が所有する「アレシボ天文台」はプエルトリコにある。窪地を直径305メートルの球面反射鏡にしており、150メートル空中に吊り下げられた受信機を持つ固定式のアンテナがある。地球にぶつかるかもしれない小惑星を追跡出来る天文台と言われている。

 ウエストバージニア州にある「グリーンバンク望遠鏡」は、世界最大の可動式の電波望遠鏡だ。望遠鏡から半径16キロメートルの地域では、携帯電話、テレビのリモコンや電子レンジなどの家電製品の使用が禁止または制限されている。

 NASAの「ゴールドストーン・太陽システム・レーダー」(GSSR)は、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠に位置する地上局である。アメリカ合衆国国定歴史建造物にも指定されているが、そのアンテナは電波望遠鏡としても使用されている。

 観測の初期、GSSRにより、小惑星が二重になっている兆候を観測した。しかし重なりあって観測されたため、この2つの天体が連なっているのか、別々のものなのかわからなかった。その後、アレシボ天文台から小惑星にレーダー信号を送信し、グリーンバンク望遠鏡が跳ね返ってきた信号をキャッチするという観測を行った。この時の観測により、2つの天体のレーダー反射率に顕著な差があることがわかり、それぞれ独立している双子(二重)の小惑星だとわかった。

 2つの小惑星は、お互いを20~24時間かけて互いにまわっていることがわかった。これはソーラーシステム研究センターのブライアン・ワーナー(Brian Warner)氏による、可視光線による明るさの変化の観測でも確認された。可視光線で観測されたものよりも小惑星の実際の大きさは大きかった。これは2つ天体が、典型的な岩石小惑星よりも太陽光を反射する度合いが低いためであり、木炭ほどの暗い反射率だということを示している。

 また他の小惑星でも、二重になっている連星はたくさんあるが、大抵の場合「大きな星と極小な星」の組み合わせだという。今回のように同じ大きさの双子連星の発見は、世界で4つ目とのことである。

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