香港に海外進出の活路見出す日系6社 第25回香港ファッション・ウィーク春/夏

2018年7月17日 17:01

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記事提供元:アパレルウェブ

 アジア最大級のファッション見本市「第25回香港ファッション・ウィーク春/夏」が7月9~12日に香港・湾仔で開かれ、日本からは6社が参加した。このうち半数の3社は、海外への展示会参加そのものが初めてとなった。中国をはじめ、各国のファッション・アパレル企業がバイイングオフィスを構える香港において、グローバルなトレンドや商慣習をつかめたことに魅力を感じたという声が多く聞かれた。
ペルソー(PERSO)


デザイナーの多田隈氏







 個性的なデザインに多くのバイヤーの足を止めていたのが、ジッパーを使ったアクセサリーを主力とする「ペルソ―」だ。使用するジッパーは、ラグジュアリーブランドでも採用されているというYKKの「エクセラ(EXCELLA)」シリーズで、丁寧に磨きがかけられた独特の艶感が魅力。通常は副資材として用いられるジッパーの留め具だけを使ったピアス、ジッパーの開きによって表情(デザイン)が変わるリングやブレスレット、ストラップをバッグなどを提案する。ブランド名は、フランス語で“個人の”を意味する“Personnel”が語源。「身につける人によって、様々な楽しみ方をしてほしい」という意味を込めた。現在国内のセレクトショップを中心に販路を広げるが、韓国でも取り扱いがある。アクセサリーは1万円台のものが中心。バッグは1万~3万年台。

 デザイナーの多田隈敦氏は、東京とパリでファッションを学んだ後、仏や台湾でオートクチュールのパタンナーとして約5年間活動。熊本出身の同氏だが、帰国後は、スタートアップ企業が活気づく福岡を拠点とし、雑貨デザイナーなどを経験。2015年に同ブランドをスタートした。海外での生活を通し、「中華圏の人々とコミュニケーションができると、自身にとってもビジネスにおいても、一気に世界が広がる」ことを体感したという多田隈氏。ブランド運営についても、当初から海外進出を視野に進めてきた。海外初出展となった同展示会でも、中国や香港をはじめ、ベトナムやマレーシアなどのアジアから、オランダやスペイン英国などの欧州、カザフスタンなどの中東までさまざまな国・地域のバイヤーが訪れるなか、台湾時代の友人とともに、流暢な中国語や英語で対応した。アイテムを個人購入したいというバイヤーや、すべてのアイテムを100点ずつほしいという大型提案まであり、グローバルなトレンドや商流を知る貴重な機会となったという。

 今回の出展は、IFF交換プログラムによるもので、8月には、米ラスベガスで開かれる「マジック」への参加も控える。オートクチュールや雑貨における豊富な経験を生かし、今後は、ジッパー以外の素材を使ったアイテムや、アパレルにも商品の幅を広げたいという。
フィットジョイ(FIT JOY)


ブースに実際に秤を置き、軽さをアピールした



 東京・台東区発の「フィットジョイ」(運営:フィットジョイ ジャパン)は、靴のOEM事業に長年携わってきたスタッフたちが2017春夏に立ち上げた機能性シューズブランド。柔らかくストレッチ性の高いシープスキンを用いたカジュアル靴は、片足100~130グラムと軽く、50~80歳代の女性客を幅広く取り込んでいる。価格は、1万円台が中心。国内では百貨店を中心に販路を広げるが、顧客から届いた約3,000通のアンケートには、「私たちの世代に合うおしゃれな靴」「履き心地がよく、ようやく履きたい靴に出会えた」という声が多く、手応えを感じている。

 海外出展は今年4月の「ギフショナリー台北」に続き2回目。国内市場が縮小するなか、「香港を切り口に、その背後にあるグローバルな市場での事業拡大を目指したい」(徳原将貴副社長)と参加を決めた。新ブランドでありながら、靴づくりに精通したプロたちによるこだわりや懇切丁寧な対応に、バイヤーやメディアの反応も上々だという。
宇仁繊維



 テキスタイル大手の宇仁繊維(大阪、宇仁龍一社長)は、テキスタイル見本市「インターストッフ・アジア・エッセンシャル」が2014年9月の秋展を最後に終了して以来、香港への出展を行っていなかったが、今年1月の「香港ファッション・ウィーク秋/冬」から再開した。既存取引先とのダイレクトな商談や新規客の開拓を図りたいと、今回も高級ゾーンを主力に継続出展した。現在同社で打ち出し中だというデザイン性の高いジャカードを幅広く揃え、テキスタイルメーカーが並ぶブースの中でも、ひと際賑わいを見せていた。
テジャス(tejas)



「テジャス」を運営するネイシュの西浦公雄代表
 上質な天然素材を使用したヨガウエア「テジャス」(運営:ネイシュ/東京、西浦公雄代表)は、アパレル業界出身のスタッフが立ち上げた新ブランド。フィットネス向けのカッティングやパターンを採用しながらも、街着にも対応するデザイン性の高さが魅力。現在は百貨店のスポーツフロアやスポーツ用品専門店、ヨガスタジオ、自社オンラインストアなどを中心に販売する。中心価格は9,000~9,500円。ブランド立ち上げから6年目を迎えるが、国内においても、フィットネスウエア市場が盛り上がりを見せるなか、他社との差別化や市場拡大を目指、今回初めて海外の展示会に参加した。

 中小企業の産業支援を行う国際ファッションセンター(KFC)のサポートを受け参加。出展者とバイヤーを取りつなぐ同センターのマッチングプログラムを通し、香港で日本ブランドなどを取り扱うエージェントがブースを訪れ、次回の商談も取り付けるなど、好反応が見られた。今後は、全売リ上げの3~4割を占めるという自社オンラインストアをてこ入れし、多言語に対応した越境ECへとリニューアルする予定。海外とウェブ双方を基軸に市場を広げていく。
セーペル クー アバウト ザ リビング(C.P.KOO about the living)




人気のインディゴ染めアイテム。一宮産地で織った良質な麻に、インディゴ顔料をさらに塗布して完成させる手のかかった素材。麻ならではのくったりとした風合いがある


コットンながら伸縮のきいた素材。テキスタイルデザイナー出身の豊福氏ならではのこだわりで、個性的な素材が並ぶ
 KFCの取りまとめにより参加したもう1つのブランドが、ウィメンズカジュアルの「セーペル クー アバウト ザ リビング」。デザイナーの豊福教子氏は、複数の有力ブランドでテキスタイルデザイナーとして活動した後、独立。自身の母親世代が楽しめる洋服を作りたいと、2010年に同ブランドをスタートした。インドのカディコットンや桐生で織られたジャカードを使用したウエアは、ゆるやかなシルエットや天然の素材によるナチュラルなムードが持ち味。価格は、国内需要が増えたことで量産体制を整えつつあること、国内の合同展示への参加を通し、香港や台湾の取引先を開拓できたことなどから、海外でのビジネス拡大に商機を感じた。海外への見本市参加は、2015年の「タイペイ・イン・スタイル」に続き2回目。今回は、愛知や群馬の産地に焦点を当てた素材や型なども提案した。

 会期中は、中国からの来場者を中心に反応がよく、東京で行う展示会に興味を示してくれたバイヤーもいた。一方、大口受注を受けた場合の価格設定や、素材へのこだわりをどう付加価値として訴求するかなど、ビジネス拡大を前提とした対応やブランディングについても考えさせられる機会にもつながったという。
マノン ミニー(Manon Minnie)



 「マノン ミニー」(運営:株式会社マノン ミニー/東京、山本祐也社長)は、AKB48の衣装なども手がけたスタイリストの細田真弓・木村文香両氏が監修するレディスウエアブランド。淡いカラーリングを中心にチュールやレースを用いたガーリーなテイストが特徴で、ウエアの価格はおよそ1万~1・5万円。ドレスで3万円台。10~20代の女性を取り込んでいるが、その多くが、インスタグラムなどのソーシャルメディアを介してファンになるケースが多いという。日本ならではのガーリーでファンシーな世界観をいかに打ち出せるかというマーケットリサーチも含め、IFFの交換プログラムを通し、今回初めて海外展示会に参加した。中国や香港、マレーシアのバイヤーを中心に商談を行ったが、なかでもウエアとともに人気のあるアクセサリー(中心価格3,000~8,000円)に目を留めるバイヤーが目立ったという。8月には、ラフォーレ原宿への出店が決まっているほか、9月にはNYの展示会への出展も予定するなど、国内外での市場拡大を加速している。
 
(取材・撮影:戸田美子)
 

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