ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、今年2度目の打ち上げ延期

2018年7月17日 16:48

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(Credit: NASA)

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(Credit: NASA)[写真拡大]

 NASAは6月28日、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(以降、JWST)の打ち上げ予定日を2021年3月30日に延期すると発表した。2018年3月に、2020年へ延期すると発表されたばかりだったが、何度も延期になる原因はどこにあるのだろうか。

【3月には】ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、不具合修正のため打上延期へ

 JWSTは赤外線宇宙望遠鏡であり、遠い星の観測に適している。主な任務は、宇宙の始まり(ビッグバン)から2億年後以降の、最初に生まれた星や銀河の光を捉えることである。その他に太陽系内惑星、小惑星のより正確な観測と、太陽系外の新たな惑星の発見も重要なミッションだ。

 現在活躍しているハッブル宇宙望遠鏡(以降、HST)は、地上600キロメートルと比較的地球から近い軌道上にあり、初期の不具合に対してスペースシャトルで修理を行ったこともあった。

 一方JWSTは、地球から150万キロメートルも離れたところに設置することになっている。地球から月までの距離が38万キロメートルなので、月の約4倍の距離になる。修理は不可能で一発勝負となる。位置は太陽から見て地球の外側の軌道をまわり、太陽光が常に遮られた状態を保つことになっている。

 JWSTの質量はHSTの半分の6.2トンと軽量にして搭載されることになっている。主鏡はベリリウム製の六角形の反射鏡を18枚合わせて、約6.5メートルの1枚の鏡になる。また日除け(サンシールド)部分はテニスコートの大きさになるという。しかしその大きさの状態で打ち上げることは、今の技術では出来ない。折り紙のような状態での打ち上げになる。これらすべての複雑なパーツは、宇宙空間で展開されることになっているが、果たして予定通り行くのだろうか。

 また挑戦する課題として、主鏡(反射鏡)を低温-220度に保つということがある。低温にすることによって、宇宙誕生初期の星の赤外線の波長を捉えることが出来るという。そのためにも太陽の光から地球の影になる位置、ラグランジュ点(L2)に配置する必要がある。

 今回、様々な問題を抱えるJWSTの進捗状況を評価するために、NASAが設立したIRB(独立審査委員会)という組織がある。組織はJWSTが次世代を担う科学的可能性、天体物理学の重要性を再確認し、開発を継続すべきと全会一致で勧告した。

 その新規開発費の見積もり額は88億ドル(約1兆円)という。JWSTは、NASA(アメリカ航空宇宙局)を中心に、ESA(欧州宇宙機関)、カナダ宇宙機関との国際プロジェクトである。

 打ち上げは、南米フランス領ギアナの、ギアナ宇宙センターで行われる予定だ。

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