中堅製薬「塩野義製薬」の営業利益率が高い理由

2018年7月9日 17:10

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 塩野義製薬(以下シオノギ)は、我々の身近にある一般医薬品でも消炎鎮痛剤「セデス」シリーズや栄養補助剤「ポポンS」シリーズで知られた存在。だが売上高の約9割は、医療用医薬品で占めている。言葉を選ばずに言えば、業界でのポジショニングは「中の上」。が売上高営業利益率は業界平均が2割弱なのに対し、「3割超」という状況にある。何故か。

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 シオノギの注力分野は、「感染症」「疼痛・神経」「フロンティア(主に制がん剤)」。業界アナリストは「感染症/疼痛・神経分野では、大型薬に関し他社を圧倒する戦略を見せつけている」とするが、確かに今年に入って接したニュースにもそれは確認できる。

 感染症の病気として、インフルエンザがある。これまでインフルエンザ対応薬としては、タミフルを主体とした4種類の薬が主役だった。対してシオノギが世に問うたA型・B型インフルエンザウィルスの感染症を対象とした新薬「ゾフルーザ」(3月発売)は、まさに大型新薬の条件を備えている。その理由はこんな具合だ。

◆1回飲めばよい(年齢や体重により量は異なる)。タミフルは1日2回、5日間の使用が必要だった。その分、感染症リスクが低減する。

◆タミフルに耐性のあるウィルスが欧州などから登場してきた。現に日本でも患者から、タミフルなどが効きにくいウィルスが検出されている。そうしたタイミングでの投入である。

 また疼痛・神経症として「鬱」がある。シオノギは抗うつ薬分野でも、米国のイーライ・リリーから「導入」した「サインバルタ」を日本での臨床を経て抗うつ薬の代表薬として有している。

 だが2021年には「後発品」が登場するタイミングにあった。そうした中6月に、米国の製薬ベンチャーのセージ・セラピューティスクの新型抗うつ剤の日本・台湾・韓国での「独占的開発・販売権を取得した」と発表した。契約金は約100億円。同社にとっては多額な投資である。抗うつ剤はサインバルタ然りで「服用から血中濃度が高まり効果が現れるまでには、2-4週間を要する」とされてきたが、新薬は米国での臨床試験(治験)で「翌朝から効果確認」という結果も出ている。ちなみに米国では新薬はFDA(米国食品薬品安全局)から、ブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)に指定されている。

 シオノギは初代:塩野義義三郎氏により「大阪の薬の町」と呼ばれた道州町で1878年に産声を上げているが、なかなか「儲け方」にも長けた企業のようである。

 得手分野をさらに強力化することは、事業展開上の必須要件でもある。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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