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宇宙線「ミュオン」が電子機器を誤作動させる 九大、阪大などが解明
負ミュオンが半導体メモリデバイスに入射し、負ミュオン捕獲反応で発生した二次イオン(陽子やヘリウム等)により電荷が付与されて、ビット情報反転が生じる現象の模式図。(画像:九州大学発表資料より)[写真拡大]
ミュオン(ミュー粒子とも言う)は、1936年に発見された宇宙線の一種である。放射線治療に使われたり、火山の内部構造の解析(ミュオグラフィ)に使われたり、また同様の原理によって原子力発電所の炉心を調査したりなど、有効活用の手段もあるのだが、実は宇宙から降り注ぐミュオンが、スマートフォンや家電などの電子機器にソフトエラーを生じさせることが、九州大学、大阪大学などの研究によって明らかになった。
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研究グループに名を連ねているのは、九州大学大学院総合理工学研究院の渡辺幸信教授、同大学院総合理工学府博士後期課程1年の真鍋征也氏、大阪大学大学院情報科学研究科の橋本昌宜教授と同博士後期課程3年の廖望氏、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所、J-PARCセンター、日本原子力研究開発機構(JAEA)原子力基礎工学研究センターの11名である。
電子機器が起こすエラーはあまたあるが、その中の一つに「ソフトエラー」と呼ばれる現象がある。電子機器が宇宙線に被爆した際に生じる、一過性の誤作動や故障をいう。
宇宙線というものは絶えず地球上に降り注いでいるが、その主要な成分(荷電粒子の約75%)はミュオンである。ミュオンは透過力が高く、電子機器の中にも到達する。
昨今の半導体デバイスはより微細に、そしてより低消費電力化しえるため、放射線耐性についていえば昔のそれよりも低下している。従来から中性子の影響が生じる可能性は指摘されていたが、ミュオンに関しては、正ミュオン照射実験の報告があるだけで、負ミュオンの照射報告は存在しなかった。
そこで今回、負ミュオンビームを用いて半導体デバイスの照射試験を行ったところ、正ミュオンよりも負ミュオンの方がソフトエラーの発生確率が高いことが明らかになったという。
これが原因で実際にデバイスが誤動作を起こすことは確率的には稀であるが、半導体デバイスの普及は加速度的に進んでいるため、今後はその件数は増大していくことが予測される。そのため、この現象についてさらなる検証を進め、対策を練ることが必要であるという。
なお詳細は、IEEE Transaction on Nuclear Scienceに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る)
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