イモリの血液は再生に必要な物質を運んでいる、筑波大学らの研究

2018年5月28日 11:46

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Newtic1を発現する赤血球。Newtic1タンパク質は成熟過程にある赤血球の縁にリング状に局在する。下に見える2つの赤血球は成熟しておりNewtic1を発現していない。(画像:筑波大学発表資料より)

Newtic1を発現する赤血球。Newtic1タンパク質は成熟過程にある赤血球の縁にリング状に局在する。下に見える2つの赤血球は成熟しておりNewtic1を発現していない。(画像:筑波大学発表資料より)[写真拡大]

 イモリは脊椎動物としては特異的な再生能力を持つことで知られている。尾が千切れても生え変わるというのは有名だが、アカハライモリ(ニホンイモリともいう)においては、尾だけではなく四肢を肩関節から落としても指先まで再生する。目のレンズを再生させるという能力もある。さて、この再生能力のために必要なNewtic1と命名されたタンパク質が、赤血球に乗せられて体内を運ばれているという事実を、筑波大学をはじめとする研究グループが明らかにした。

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 研究に名を連ねているのは、筑波大学生命環境系 千葉親文教授、中谷敬教授(当時)、八畑謙介講師、丸尾文昭助教、櫻井啓輔助教、同 生命環境科学研究科生物科学専攻 Roman M. Casco-Robles院生(D3、MEXT研究留学生)、宇都宮大学大学院工学研究科 外山史准教授、山形大学学術研究院 渡邉明彦教授、熊本大学大学院先端科学研究部(理学系) 江頭恒准教授、名古屋大学アイソトープ総合センター 竹島一仁准教授(当時)、北里大学医療衛生学部 小畑秀一准教授、立教大学理学部 木下勉教授、玉川大学農学部 有泉高史教授、日本獣医生命科学大学獣医学部 中田友明講師らの研究グループ(イモリネットワークNNNプロジェクトグループ)らである。

 さて研究グループは、アカハライモリの遺伝子情報を網羅的に解析し、独自にデータベースを開発した(公開も行っている)。これを用いて、イモリが持つ高い再生能力の鍵となる遺伝子を探索したところ、Newtic1が発見された。Newtic1タンパク質が、一部の赤血球のみに発現している事実も突き止められた。

 実験的にイモリの肢を切断したところ、その肢が再生する過程において、Newtic1タンパク質が発現し、また毛細血管中において徐々に集積してくることが分かった。再生が進み、軟骨が分化するほどの段階になると、集積された再生物質は減少していった。

 さて、実は赤血球というものの機能には謎が多い。酸素を運んでいるというのは有名だが、それ以外に赤血球が何らかの生体機能を担っていることがはっきりと裏付けられたのは非常に珍しい報告であり、血液の機能というものについて再考を促すものであるという。

 なお研究の詳細は、Scientific Reportsに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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