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仮想通貨包囲網の形成が進む(1) G20での共通認識はどうなったのか?
3月19日から20日まで、アルゼンチンで開催されたG20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明では、仮想通貨を「消費者や投資家の保護や市場の健全性を損ない、脱税やマネーロンダリング及びテロ資金供与への懸念を有する」と指摘した。この流れを受け継いで、世界の主要国間では仮想通貨への規制を強化する方向に進むと見られる。
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G20が懸念する“消費者や投資家の保護と市場の健全性”を担保するには、現在の仮想通貨の価格変動が大きすぎると言える。仮想通貨の価格が変動する要因は、“需要”があるかどうかということに絞られ、供給量に限りがあって知名度が高い“ビットコイン”のような人気銘柄は、売りと買いのバランスが多少いびつに片寄るだけで、大きな価格の変動となってしまう。今ある仮想通貨に、生まれつき備わった個性だろう。
今年の1月、日本の大手交換業者であるコインチェック社で、約580億円相当の仮想通貨流出事件が発生したことで、仮想通貨の交換・保管のシステムに向き合う交換業者の姿勢には、大いなる差異があることが露呈した。コインチェック社では、その後長く取引が出来ない状況が続き、利用者の被った損失は計り知れない。こうした事態を繰り返すようでは、業界全体のイメージダウンはさらに拡大するだろう。
仮想通貨の匿名性は、マネーロンダリングに直結するリスクとして大きな問題である。世界の各国が、マネーロンダリング対策やテロ資金対策を共通の課題としていることから、仮想通貨への規制も徐々に強まっている。しかし、上述のコインチェック社事件では、流出した仮想通貨のほとんど全額が、匿名性の強い闇サイトで他の仮想通貨と、交換されたと看做されることが、22日に判明した。「NEM財団」は追跡停止後に「実用的な情報を法執行機関に提供できた」とのコメントを出しているが、“実用的な情報”で実行犯を特定できるかどうかは不明で、追跡を停止した理由も明白ではない。交換された仮想通貨は、現金化される可能性高く、ハッキングへの防止策を向上させなければ、マネーロンダリングの精神が形骸化されるとの危機感が高まっている。
G20の共同声明では仮想通貨をCrypto-asset(暗号資産)と表現している。G20での主要国のコンセンサスは“仮想通貨は通貨に当たらず、資産である”ということでまとまった。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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