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不発に終わった日銀「指値オペ」
日銀の黒田東彦総裁は続投するのか、辞任するのか。正式には決まっていない。だが金融機関の誰もがその胸中を「残るも地獄、去るも地獄でしょう」と推測している。黒田総裁の胸中を覗き込んでみたいものだ。
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2013年3月の総裁就任直後に「異次元的金融緩和策」を掲げ、超低金利時代の幕を開けた。その詳細な施策はここでは省くが、決定打となったのは16年1月29日の「ゼロ金利政策」の導入だった。日銀政策決定会合の審議委員9人中4人が反対するという状況下での決定だった。この施策以降、銀行や生保といった金融機関が、苦しい経営状況に追い込まれたことは周知の通りである。
ゼロ金利政策下では市中金利(債券利回り)は低下する。だがいま事態は急変している。長期金利が上昇に転じているのだ。背景には欧米の中央銀行が「金融緩和策・低金利政策」の出口に向かって動き出す中での、黒田発言だった。1月26日のダボス会議で「物価目標2%にようやく近づいてきた」とした。直後、日銀広報課は「2019年度頃に、という認識に変わりはない」とした。しかし黒田発言を金融市場は「出口模索政策入り」と受け止め、金利・円が上昇に転じた。
そうした流れの中で、日銀は2月2日「指値オペ」を7か月ぶりに実施した。1月31日の「国債買い入れオペ」で日銀は残存期間が3年超5年以下の長期国債の買い入れ額を半年ぶりに実施、ことの鎮静化を図ろうとしたが効果は十分ではなかった。そこで「指値オペ」である。
具体的には、指標債が前日比0・005%高い0・095%では始まった市場に「新発10年債(指標債)を0・110%で買い入れると」通知した。が、応札した金融機関はゼロだった。「市場の取引実勢価格より指標債価格が安くなるのに、買いに向かうはずがないでしょう」とした金融機関関係者は、こう続けた。「日銀が焦っていることはミエミエでしたし、指値オペは織り込み済みでした」。
俗に「自分で蒔いた種は、自分で刈れ」という。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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