民間月面探査チーム「HAKUTO」、審査会を通過 打ち上げは延期

2017年11月10日 07:12

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月面探査ローバー「SORATO」(写真:チーム「HAKUTO」発表資料より)

月面探査ローバー「SORATO」(写真:チーム「HAKUTO」発表資料より)[写真拡大]

 世界初のロボット月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参加している日本のチーム「HAKUTO」は8日、レースを主催するXPRIZE財団とXPRIZEの審査員がHAKUTOのミッション計画を審査し、計画の実行性と達成基準を確認したと発表した。加えて、当初年内とされていた打ち上げ期限の変更に伴い、ミッションの成功を最優先にすべく、準備期間を確保するために打ち上げ時期を変更することも発表している。

【打ち上げロケットは】Goolge Lunar XRPIZEに挑戦するHAKUTO、インドのPSLVロケット契

 Googleが2007年9月にスポンサーとなり、史上最高総額3000万ドルの懸賞金を提供する世界初の月面探査レースが「Google Lunar Xprize」だ。参加チームは、国家からの資金提供は10%未満という制約があり、月探査機の設計、資金獲得、ミッション達成という全ての計画と遂行を民間主導で行う。

 日本から唯一挑む産学合同チーム「HAKUTO」は、2008年4月に月面探査レースにエントリー。2015年には中間賞として、50万ドルを獲得している。

 約60名からなる「HAKUTO」チームは異色だ。袴田リーダが社長を務めるベンチャー企業「ispace」、東北大学の「吉田研究室」、プロボノと呼ばれる専門分野のボランティアからなる。チームの力で、月面を走行できるローバー「SORATO」の開発、資金調達、プロモーションに取り組む。

●レースのミッション

 ミッションは3つ、地上では簡易に思える内容も、宇宙では一つの失敗も許されない過酷なものだ。2018年3月末までに、ミッションを完遂する必要がある。

 ・月面に純民間開発ロボット探査機を着陸させること(事前に着陸地点を報告)
 ・着陸地点から500メートル以上移動すること(地上からの遠隔操作が必要)
 ・高解像度の動画や静止画データを地球に送信すること(地球から月への送信も含む)

●ファイナルへの挑戦は5チーム

 2017年1月、16チームの中から、レースの最終フェーズに進む5チームを発表。日本の「HAKUTO」は最終フェーズに駒を進めた。

 ・Synergy Moon(国際チーム)
 ・Moon Express(アメリカ)
 ・SpaceIL(イスラエル)
 ・Team Indus(インド)
 ・HAKUTO(日本)

●優勝賞金

 優勝賞金は2千万ドル(約23億円)、準優勝賞金は500万ドル。次期の宇宙開発に向けた事業にも役立つ高額な賞金だ。

●月面探査機(チーム「HAKUTO」、SORATO)のテクノロジー

 宇宙への打ち上げ費用は、重量に比例するので、軽量化が重要課題だ。7キロから4キログラムの軽量化を達成したという。効果の大きかったものは、軽くて強い素材であるCFRP(炭素繊維強化プラスチック)をボディなどに多用。加えて、3Dプリンタで空洞のチタン製ギアを開発し、ミリ単位で軽量化に挑んだという。

 月面の昼夜の温度差は250℃以上という。温度差による電子部品の故障は致命的だ。ウルテム樹脂という耐熱性と強度に優れた素材をホイールに採用。また、内部の温度環境を一定範囲に入れるため、ボディ外面を銀テフロンにして熱収支をコントロールしているという。

 月面走行の命綱は、カメラの眼と通信制御だ。故障回避のために4カ所のカメラは異なる製品を使うという。38万キロ離れた月との交信は、3秒ほどかかるという。この遅延を考慮した運行速度、不測の事態に備えた900MHz帯と2.4GHz帯のハイブリッド通信を搭載する。なお、電力はソーラーパネルで賄う。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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