総合診療医制度の枠組みと課題

2017年11月3日 20:41

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 来年度から、専門分野に拘らず幅広い視野で患者を診断する「総合診療医」制度がスタートする。医師不足に悩む地方への対応策である。具体的には若手医師を対象に2年程度の時間をかけ医師会病院の総合内科で診療を担当してもらいつつ、内科以外の例えば「整形外科」「皮膚科」などについてはそれぞれの開業医が経験に基づいた専門知識を伝授するという枠組み。給与や専門技術の伝授費用は、医師不足に悩む地方・地域の医師会が負担する。2年余り後、件の若手医師はいわば「よろず診療所」を医師会の援助を得て開設。医師会と連携を取りながら「医師不足」解消の入り口を担うことになる。

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 既に先行して「総合医療医」制度の趣旨を実行に移している地方の医師会もある。例えば、島根県益田市医師会。10余年前から「新人医師は研修先を自由に選べるようになった結果、都市部に人気が集中した。それまで大学病院が担っていた地方病院への医師派遣が困難になった。このままでは地方の医療危機が加速する」という当時の医師会病院長が音頭をとり、実行に踏み切った。

 単に若手医師に「来て」と呼び掛けただけでは、困難。若手医師に「存在感」を実感してもらう必要がある。浮上したのが「よろず診療所長」。やはり「地域医療の脆弱化」に危機感を抱いていた開業医が「講師」として手を挙げた。手を挙げたのが全員男性だったことから「親父(おやじ)の背中プログラム」と名付けられた。

 こうした流れが加速していかないことには、総合診療医制度も機能しない。第2・第3の島根県益田市医師会が相次ぐことを期待したい。

 そうでなくては拡大が期待されている「日本版CCRC」の動向にも、大きく影響してくる。CCRCとは「リタイア後の高齢者が地方に移住し、介護・医療状態が整備した中で安心した老後を送る」という、米国産の概念。日本版CCRC創りの構想が「人口減少」に悩む地方自治体で盛り上がりを見せている。現に移住者用の施設が着工された例もある。人口減⇔若手医師の都会集中への対応策が進められなくては、日本版CCRC構想も「画餅」に終わってしまう。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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