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木を有効活用する時代(下)
山林が多い日本だが・・[写真拡大]
九州地方を襲った大雨・洪水・土砂崩れに伴う悲惨な状況の爪痕が、未だ生々しい。周知の通り日本の国土は約7割が山林である。にもかかわらず我が国の木材の自給率は3割水準にとどまっている。森林事情に詳しい専門家は、こう明かす。
【上はこちら】木を有効活用する時代(上)
「日本の山林の原点は歴史を遡ると、杉や檜など針葉樹の人工植林。そうした歴史の結果、日本は世界でも冠たる森林大国になったわけだ。だが日本の森林に対する国策はお粗末そのもの。一口で言えば、適宜な伐採を怠り続けてきた。その結果、山が荒れ切ってしまった。いまそのツケに苦しんでいる。遅ればせに現政権は『国産材を積極的に使った(CLT工法による)建造物の普及』を成長戦略の一つとして打ち出しているが、口先だけに終わってしまうと日本は貴重な資源に逆に叩き潰されかねない」
山が荒れると何が起こるのか。木々の二酸化炭素の吸収力が低下し、温暖化が加速する。洪水や土砂災害の防止にも多大な影響を及ぼす。日本の総面積の約900分の1に当たる部分で山林経営を行い、木材製造・流通・木造建設を一貫して手掛けている住友林業の木下営業部では、こう警鐘を鳴らしている。
「現在の年間の(森林)伐採量は、面積にして約3500万平方メートル。山を荒らさないためには、約1億7000万平方メートルの伐採が必要だ。しかし現実は5分の1に止まっている。伐採量の増加が必須。だからこそ、件の成長戦略も打ち出されたのだといえる。実際に不可欠な伐採量を実現するには、使い道を考えなくてはいけない。具体的にはビルやホテルの木質化が進まなくてはならない。少子高齢化の進行下で、かつ若者の持ち家離れが指摘される中、住宅以外の分野に我々は木材資源の活用の道を先頭に立ち切り開いていく覚悟だ」
現に同社では100%子会社を介して展開している介護事業では、例えば有料老人ホームのフロアや手摺などは全て木質化。また今年7月には東京・国分寺市の某輸入商社の本社を竣工しているが、7階建てビルの4-7階部分はCLT工法(上を参照)を駆使した木質建屋を実現している。
国策に沿い林野庁の伐採補助金も増額された。日本でも「適宜な森林伐採」「木質建屋拡充」のレールが敷かれ始めた。(記事:千葉明・記事一覧を見る)
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