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iPS細胞から免疫細胞作製、アルツハイマー病など難病治療に光明か
19日、京都薬科大学の高田和幸准教授は、A*STAR(シンガポール科学技術研究庁)との共同研究として、iPS細胞を基にして、全身の臓器・組織に生着する免疫細胞である「マクロファージ」の作製に成功したと発表した。アルツハイマー病など数ある難病研究、治療への応用が期待される。
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マクロファージは免疫細胞の中核を担うアメーバ状の細胞で、体内に侵入した細菌や、ウイルス、またがん細胞をも排除する、とても重要な細胞だ。この細胞は出生前、胎生期の限られた時期に胚性マクロファージとしてつくられた後、全身の各組織に移行して、その組織特有のマクロファージへと分化する。
ただ、胚性マクロファージは医療において非常に高い研究価値がありながら、発生時期の関係でこの細胞を培養する、といったことは難しく、そのため研究しようにも従来は十分な量が得られなかった。
それが今回、ヒトやマウスのiPS細胞を使い、一度に多量の胚性マクロファージ様の細胞(iMacsと呼称)作製に成功した。加えて様々な組織マクロファージに分化して、機能することも確認された。
言い換えれば、人体を守る非常に重要な細胞がどうやってつくられるのか、また全身に多くある、マクロファージが関わる疾患を治すにはどうすればいいのかを調べる土台ができた、ということだ。
例えばiMacsは、同じiPS細胞から作製した神経細胞と共に培養することで、脳特有のマクロファージであるミクログリアに極めて近い細胞へと分化する。実際に、マウスの脳には生着した。そして、アルツハイマー病発症にはミクログリアの機能異常が関与することが明らかになりつつある。
つまり、iMacs分化過程の解明を進めれば、同時に未だ謎の多いアルツハイマー病などの病態解明にも近づいていくのである。そこには細胞治療へ応用できる可能性も秘められている。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る)
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