【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆セルインメイ◆

2017年4月23日 10:05

印刷

記事提供元:フィスコ


*10:05JST 【休日に読む】一尾仁司の虎視眈々(3):◆セルインメイ◆

〇突如、英国総選挙発表、リスク回避拍車〇

昨夕、メイ英首相は6月8日の英国総選挙実施を発表した。2020年予定を大幅に前倒しするもので、欧州情勢の不透明感が一気に強まり、リスク回避に拍車が掛かった。発表直前、一旦英ポンド安に振れたが、直後に急伸、一時昨年10月以来の1.2904ドルまで上昇し、2%強高い1.28ドル台での揉み合い。株価(FT100)は一方通行的に180ポイント安(2.46%安)。IMM通貨先物建玉(11日時点)で対ドルで英ポンドは10万5901枚の売り越しが滞留しており、巻き戻しが起こったと考えられる。

学者のなかには、「メイ首相は追い詰められて解散」と解説する向きもあるが、市場はブレグジットを巡って保守党内部も分裂を抱え、議会が機能しないことに業を煮やしたメイ首相の強気姿勢の表れと受け止めている様だ。各国事情は異なるが、日本ですら国会は機能マヒ状態、米国もトランプ政権が政策遂行に大幅遅れが生じている。ただし、またしても6月か、と昨年のブレグジット国民投票の予想外の結果を思い起こす人も多い。仏大統領選直前、この後にイタリアやドイツも選挙を控え、まずは不透明感の強まりを嫌気する展開になったと考えられる。なお、最新の世論調査で保守党支持44%、労働党23%。Eu離脱反対は40%強で、移民対策などは支持が広がってきていると見られるが、総選挙後までブレグジット交渉は停滞することになる。

大きな背景には、1-3月に見られたエネルギー・資源価格の上昇が剥落して来ており、インフレ観が後退=世界的な金利低下、米トランプ政権の減税策が夏以降に大幅にズレ込む公算が強まっていること、依然として朝鮮半島情勢が緊迫していることなどがある。

資源価格を抑えているのは供給過剰懸念。中国の鉄鉱石先物相場が3ヵ月ぶりの安値を付け、原油相場では3月末米原油在庫が5億3550万バレルの過去最高に達していたことが重荷。ドンドン下落する局面ではないが、前年比での原油高効果が剥落するとともに、14日発表の米3月CPI(消費者物価指数)は前月比0.3%、13カ月ぶりの下落に転じた。米10年物国債利回りは2.1718%に低下、6月利上げ確率は43%(6日時点71%)に急低下している。

トランプ政権の中枢を元幹部が占め、金利上昇などの恩恵を受けるとして期待を集めていた米GS(ゴールドマン・サックス)株が4.7%急落したことが象徴的だ。GSは商品相場のリーダー的存在であり、失望を誘ったのが債券トレーディング収益で、商品や債券相場、金融・経済動向を見誤ったと受け止められたと見られる。

ただし、調整は進んできていたので、英総選挙がダメ押し的な動きになる可能性がある。いわゆる「踏ん張りどころ」で、例年来る「5月売り」が前倒し的になった公算もある。ドル円を睨みつつ、安値圏攻防と受け止めたい。


以上


出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/4/19号)《WA》

関連記事