老人福祉・介護事業の倒産件数が過去最多を更新―東京商工リサーチ

2016年10月7日 20:31

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老人福祉・介護事業の倒産件数と負債総額の年次推移を示すグラフ(東京商工リサーチの発表資料より)

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 東京商工リサーチが7日発表した2016年1-9月の「老人福祉・介護事業」倒産状況によると、倒産件数は前年同期比35.0%増の累計77件となり、9月時点で年間倒産件数の最多記録(調査開始の2000年以降)を更新したという。

 同社によると、負債総額も同62.7%増の82億9,600万円と、前年から大幅に増加した。負債5,000万円未満の小・零細規模が全体の68.8%、設立5年以内が46.7%を占め、小規模かつ新規の事業者が倒産を押し上げているという。

 業種別では、施設系のデイサービスセンターを含む「通所・短期入所介護事業」と「訪問介護事業」が各32件(それぞれ前年同期比39.1%増)と前年同期を上回った。ほかに、「有料老人ホーム」が7件(同3.5倍)だった。

 原因別では、販売不振が同2.04倍の51件となり、同業他社との競争の激しさが伺われる。次いで、事業上の失敗が10件、設備投資過大が5件の順だった。販売不振が全体の66.2%を占めたが、安易な起業だけでなく本業不振のため異業種からの参入失敗(6件)や過小資本でのFC加盟(3件)など、事前準備や事業計画が甘い小・零細規模の業者が想定通りに業績を上げられず経営に行き詰ったケースが多いという。

 形態別では、事業消滅型の破産が75件(同33.9%増)と全体の97.4%を占めた。一方、再建型の民事再生法はゼロ(前年同期は1件)で、業績不振に陥った事業者の再建が難しいことを浮き彫りにした。

 2015年4月の介護報酬改定では、基本報酬がダウンした一方、充実したサービスを行う施設への加算は拡充された。小規模事業者は加算の条件を満たすことが難しいことから、この改定が小規模事業者の倒産増加の一因になっていることが考えられる。

 同社は、「高齢化社会の進行に伴い市場の拡大が見込まれるだけに、今後は新規参入や統合を促すため、補助金や融資支援など政策支援も必要になってくるだろう」と分析している。

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