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富士フィルムがiPS細胞ビジネスに参入 iPS細胞由来分化細胞の開発・製造・販売会社を設立
現在、新薬の開発では、候補薬の有効性と安全性の確認のため、動物試験が行われ、その後ヒトでの臨床試験が実施されている。しかし、動物試験で成功しても、ヒトでの臨床試験段階で開発が中止になることが多いため、臨床試験前にヒトの細胞を用いて有効性や安全性を確認したいというニーズが高まっている。
このような中、無限増殖性とあらゆる細胞に分化する性質をもつ、ヒトのiPS細胞を創薬に応用する動きが世界的に始まっている。日本では、製薬企業各社や多くの公的研究機関が協同で、iPS細胞由来分化細胞による安全性評価を医薬品開発へ応用することを検証しており、中でもiPS細胞由来の心筋細胞を用いた、安全性評価の標準化が進んでいる。
富士フイルムは、日本で創薬支援向けiPS細胞ビジネスを展開するため、iPS細胞由来分化細胞の開発・製造・販売会社「セルラー・ダイナミクス・インターナショナル・ジャパン」(CDJ社)を10月1日付けで設立する。CDJ社は、まずは、富士フイルムグループの米国Cellular Dynamics International, Inc(CDI社)が製造した、創薬支援向けiPS細胞由来分化細胞を輸入し、国内の大学や研究機関、企業などに販売していく。
富士フイルムは5月にiPS細胞の開発・製造のリーディングカンパニーであるCDI社を買収。CDI社は、すでに創薬支援向けに心筋・神経・肝臓など12種類の高品質なiPS細胞由来分化細胞やオーダーメイド型iPS細胞由来分化細胞を、大手製薬企業など多くのユーザーへ販売し、iPS細胞ビジネスをリードしている。
今回、国内にCDJ社を設立し、同社を通じてCDI社が製造しているiPS細胞由来分化細胞やオーダーメイド型iPS細胞由来分化細胞を提供していく。またCDJ社は、今後、国家戦略特区および国際戦略総合特区に指定されている殿町地区(神奈川県)に製造・研究開発拠点を設ける計画。ユーザーからのiPS細胞由来分化細胞の品質などに対するニーズを把握し、大学や研究機関、企業などと積極的に共同研究に取り組みながら、化合物探索から疾病研究、薬剤の評価など幅広く創薬支援分野へ貢献するiPS細胞由来分化細胞の開発を進めていく。また、将来的には富士フイルムの写真フィルムなどで培ってきた高度な生産技術を活用することで良質なiPS細胞由来分化細胞を大量生産し、国内に安定供給していく予定だ。
富士フイルムは、細胞の3次元構造化に適した「足場」として、生体適合性に優れ、さまざまな形状に加工できるリコンビナントペプチド(RCP)を開発している。今後、創薬支援分野において、RCPにより3次元構造化した細胞を用いて、より高度な薬剤評価の実現に取り組んでいく方針。また、iPS細胞の応用が期待されている再生医療分野においても、富士フイルムの高機能素材技術・エンジニアリング技術、CDI社のiPS細胞関連技術・ノウハウやグループ会社のジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの治療用細胞の生産技術とのシナジーを発揮させ、再生医療の産業化を目指す。(編集担当:慶尾六郎)
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