ロシアの新型補給船「プログレスMS」、11月の打ち上げに向け準備開始

2015年8月16日 15:34

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記事提供元:sorae.jp

ロシアの新型補給船「プログレスMS」、11月の打ち上げに向け準備開始(Image Credit: TsENKI)

ロシアの新型補給船「プログレスMS」、11月の打ち上げに向け準備開始(Image Credit: TsENKI)[写真拡大]

 ロシアの新型補給船「プログレスMS」が8月10日、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地に到着し、打ち上げに向けた準備が始まった。

 プログレスMS補給船は、現在活躍中の「プログレスM-M」を大きく改良した機体で、外見や搭載能力などに大きな変化は無いが、全体的に近代化が図られている。

 まず、国際宇宙ステーション(ISS)とのランデヴーとドッキングに使うセンサー「クールスA」が、新型の「クールスNA」に変わる。この新型センサーにより、消費電力が抑えられ、また機械的な故障の発生確率が低くなる他、クールスAはウクライナ製だったが、NAでは完全にロシア製となり、ウクライナから購入する必要がなくなる。

 クールスNAはプログレスM-15MやプログレスM-21Mに搭載されて実際に試験が行われており、プログレスMSから正式に採用されることになる。

 また、同様にウクライナ製だったクヴァーントVという無線システムやアンテナも改良される。

 スペース・デブリや宇宙塵からの防護パネルも改良され、より耐久性が高まっており、くわえて船外に4つのコンテナが追加され、超小型衛星などを搭載し、宇宙空間で放出することもできるようになるという。また、ISSとの結合機構に使われている電気モーターにバックアップが追加され、冗長性が強化される。

 さらにGPSやGLONASSなどの衛星測位システムの利用した航法システムも新たに搭載され、また船の状態確認や地上からの操縦に使われる通信システムも改良され、音声や映像の質が高くなり、またロシアの中継衛星を使うことでロシア国内の地上局の可視範囲外からの通信も可能となる。

 これらの装置に使われる部品も、クールスNAなどと同じくウクライナの関与を無くし、完全にロシアで開発、生産される。

 その他これまでに、太陽電池がより効率の良いものになり、スラスターもこれまでの1基から、より冗長性の高い4基の配置になり、さらにヘッドライトが発光ダイオード(LED)を使ったものになることなどが伝えられている。

 現在のところ、プログレスMSの1号機は今年11月に打ち上げられる予定となっている。この打ち上げにはソユーズ2.1aロケットが使われるが、従来のソユーズUによる打ち上げも可能ではあるという。

 なお、プログレスMSの1号機は「プログレスMS-1」ではなく、単に「プログレスMS」とのみ呼ばれている。ロシアの宇宙機には、1号機に1という数字が付かない慣例のようなものがあり、これまでソユーズやプログレスは例外だったが、いかなる理由かは不明だが、プログレスMSはその慣例が適用されることになった。

 またロシアは、有人のソユーズ宇宙船にも同様の改良を施した「ソユーズMS」の開発も行っており、プログレスMSの運用に問題がなければ、ソユーズMSの1号機は2015年3月ごろに打ち上げられる予定となっている。

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