通信傍受システム「エシュロン」の存在報じたジャーナリスト、スノーデン文書の調査結果を発表

2015年8月7日 11:46

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記事提供元:スラド

headless 曰く、 米国を中心に構築された通信傍受システム「エシュロン(ECHELON)」の存在を1988年に報じたDuncan Campbell氏が、スノーデン文書で存在を裏付ける資料が発見されたとして、過去の報道の裏話や新たに発見された内容に関する記事を発表している。ECHELONは1980年代に存在が報じられたものの、これまで公式に存在が認められることはなかった(The InterceptThe Register)。

 母親がアラン・チューリングのもとで働いていたというCampbell氏は、少年時代に英国政府の諜報活動について聞かされており、盗聴用の信号受信基地を偶然発見したこともあるという。Campbell氏は1976年に初めて英政府通信本部(GCHQ)の盗聴活動に関する記事を書いて以来、40年近くにわたって英国政府の諜報活動について報じ続けている。ジャーナリストとして警察の捜査を3回、収監1回を経験。制作にかかわったテレビ番組が政府の圧力で放送禁止になったことも5回あるそうだ。

 英国のスパイ衛星「Zircon」計画を調査していたCampbell氏は1987年、Center for Investigative Reportingに招へいされてサンフランシスコを訪れる。その際、ロッキードの元従業員からECHELONの存在を知らされたのだという。1988年に公表された記事は大きな注目を集めることはなかったものの、1999年に欧州議会が懸念を示したことでようやく注目を集めることになった。欧州議会では2011年9月5日、大量情報収集に反対する決議を可決したが、その6日後の9月11日に同時多発テロが米国で発生。大量情報収集を制限するような計画が正式に発表されることはなかったという。しかし、このことがECHELONの存在を裏付けるエドワード・スノーデン氏による内部告発を生むことにもなる。

 2014年12月、Campbell氏はスノーデン文書にECHELONの証拠が含まれていないか、The Intercept記者のRyan Gallagher氏に調査を依頼。その結果、ECHELON協定の詳細を含め、27年前の内部告発者の証言を裏付けるGHCQや米国家安全保障局(NSA)の文書が多数発見される。NSAが1966年に設置した包括的な通信衛星傍受プログラム「FROSTING」には、2つのサブプログラムが存在し、「TRANSIENT」ソ連の衛星を対象としたもので、「ECHELON」はINTELSATを対象としたものだという。当時、INTELSATを利用していたのは主に西側諸国で、米国が最大のオーナーであり、利用者でもあった。また、欧州議会のECHELONに対する調査に関する文書ではNSAが欧州諸国を「豚」と呼び、「豚と泥の中でレスリングするな。奴らはそれが好きだが、どちらも汚れることになる」などとも記載されているとのこと。

 しかし、内部告発から2年の間に良い方向への変化が加速しているという。5月に開催されたThe Ditchley Foundation主催のカンファレンス「Intelligence、security and privacy」でCampbell氏は、GHCQの局長に就任したRobert Hannigan氏とともに討議を進行したが、公開性に反対する意見を示した人は誰もいなかったとのことだ。

 なお、The Interceptの記事とThe Registerの記事は同じ内容だ。ただし、The Registerの記事は6ページに分割されているので、どちらか読みやすい方を選ぶといいだろう。

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