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ガソリン難民が増えた理由、そして経産省が打ち出した打開策
写真の比較的規模が大きなガソリンスタンドの場合、地下埋設貯蔵タンクはレギュラーガス2基、プレミアムガス1基、軽油1基、灯油1基で最低でも5基のタンクが必要だ。そのすべてを改修するには1000万円規模の補修費が必要だ[写真拡大]
経済産業省の発表によると、全国のガソリンスタンド(GS)の数は、1944年度末の約6万カ所から2013年度末に約3万4000カ所とピーク時の3分の2にまで減った。少子高齢化や人口減、ハイブリッド車(HV)や電気自動車の普及のほか、普通のガソリンエンジンやディーゼルなどの内燃機関車も大幅に低燃費化したことで、燃料油需要が減少、地方を中心にGSの廃業が相次いだためだ。
GS廃業の原因にはもうひとつ重大な理由がある。2011年に施行された改正消防法は、2013年2月までに40年以上経過した燃料貯蔵タンクの改修をガソリンスタンドに義務づけていた。40年以上前に建設されたGSの燃料用地下タンクの改修を義務づけ、改修せずに放置すると最悪の場合、営業許可を取り消される。
地下大型タンクの改修には1基あたり最低でも100万円以上のコストがかかる。GSにはガソリンだけでも2基、それ以外に灯油や軽油など複数のタンクがあるため総額で1000万円を超えるケースもある。この高額な改修費用が、GS運営を圧迫。中小事業者を中心に経営を断念するケースが相次いでいるというわけだ。
大規模GSなどでは、店舗に自動セルフ型洗車機、コンビニやカフェを併設させるなど、ガソリンスタンド経営者は副業などによる収入を模索している。が、多くの中小規模のGSは廃業を選択し、とくに地方では「ガソリンスタンド難民」が出てきている。
経済産業省はGSが3カ所以下の市町村を「GS過疎地」と定めており、全国で265市町村に上る。GSが1軒もない自治体も8町村あるという。GSが近隣にない場合、自動車のほか農家が使っている農業機械への給油にも支障が生じている。
近隣にGSがない「GS過疎地」で住民や農家の利便性を図るため、経済産業省は、ガソリンを運搬するタンクローリーから自動車に直接給油方式の導入に向けた検討に入った。自動車に頼る地方向けの「移動式GS」と位置付け、給油装置の開発費など約1億5000万円を2015年度予算案に計上、実証試験をはじめる。タンクローリーからクルマへのガソリンの直接給油は、消防法で原則禁止されている。が、今後、経産省は安全に給油できる装置を開発し、消防庁に規制緩和を働きかけるという。
経済産業省は、地域の石油販売業者などがタンクローリーを定期的に巡回させ、広い駐車場などを利用して、住民の車に直接給油することなどを想定している。大規模設備の必要がないため、GS運営よりも業者の負担が大幅に軽減するとみている。
ただ、ガソリンは引火性が強いため、灯油やディーゼル燃料である軽油と異なり、設備の整ったGS以外での給油が原則認められていない。消防庁は「保安上の課題が多い」と規制緩和に慎重だ。しかしながら、欧米では給油装置付きで認められている。経済産業省はより安全な装置や仕組みの提案と実証実験を目指す考え。ただし、安全な装置が開発されても、給油できるのは資格を持つ石油販売業者の社員などに限る方針のようだ。
また、経済産業省は、別途GS設備負担軽減策検討に入った。GSにはガソリンなどを貯蔵する地下タンク設置が義務付けられているが、タンクの埋設を必要としない、タンクローリーからGSの給油機を軽油して自動車に給油できる仕組みの研究開発を進める。
東日本大震災直後に各地でガソリン不足が発生した。経産省は今後の大規模災害に備え、全国的なガソリン供給網の維持を目指す。(編集担当:吉田恒)
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