ファルコン9ロケット、ドラゴン補給船の打ち上げに成功 回収試験は失敗

2015年1月11日 15:30

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記事提供元:sorae.jp

ファルコン9ロケット、ドラゴン補給船の打ち上げに成功 回収試験は失敗(Image credit: NASA)

ファルコン9ロケット、ドラゴン補給船の打ち上げに成功 回収試験は失敗(Image credit: NASA)[写真拡大]

 スペースX社は1月10日、ドラゴン補給船運用5号機(CRS-5)を搭載したファルコン9ロケットの打ち上げに成功したドラゴンCRS-5には国際宇宙ステーションに向けた補給物資が満載されており、1月12日に到着する予定だ。一方、ロケットの第1段機体を大西洋上のプラットフォームで回収する試験は失敗し、機体は破壊されたという。

 ロケットは米東部標準時2015年1月10日4時47分(日本時間2015年1月10日18時47分)、フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-40から離昇した。ロケットは順調に飛行し、約9分後に予定通りの軌道へドラゴンCRS-5を投入した。

 ドラゴンCRS-5の状態は正常で、太陽電池パドルの展開などにも成功し、国際宇宙ステーションに向けて順調に飛行を続けている。到着は2日後の1月12日6時ちょうど(日本時間1月12日20時ちょうど)に予定されている。

 ドラゴンCRS-5には、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士のための水や食料品、衣類、生活消耗品や、またステーション内で使用される実験機器など、2,317kgの補給物資が搭載されている。ドラゴンCRS-5は約1か月間滞在し、ステーションで発生した実験成果など約1,332kgを載せて、大西洋に着水する予定だ。

 スペースX社はこれまでに5機のドラゴンを国際宇宙ステーションに向けて打ち上げており、そのうち最初の1機が試験機、あとの4機が実運用機として運用され、すべて成功を収めている。

 また今回の打ち上げでは、ファルコン9の第1段機体を、大西洋上に浮かべたプラットフォームに降ろす試験が実施されたが、残念ながら失敗に終わったという。

 スペースX社のイーロン・マスクCEOがツイッターに投稿したところによれば、第2段との分離後、第1段機体はプラットフォームに向けて順調に降下し、機体を安定させるために装着された格子状の安定翼(フィン)も問題なく動作したという。しかし、着地するまでにフィンを動かすための作動液を使い切ってしまったことなどから、プラットフォーム上に強く打ち付けるように着地し、ロケットは破壊されたという。一方プラットフォームは壊れなかったものの、甲板上の設備のいくつかは交換する必要があるという。

 また、現場海域は暗く、霧も出ていたため、鮮明な映像は得られなかったものの、ロケットからのデータは受信できており、破片などと合わせて分析することで、次回以降の試験に役立てたいとしている。

 なお、来月行われる打ち上げでも回収試験を実施する予定で、また今回より50%ほど多く作動液を積む予定だという。

 スペースX社では、ロケットの打ち上げコストを劇的に引き下げることを目指しており、まずはロケットの第1段機体を再使用することを計画している。その前段階として、これまでにロケットの第1段を大西洋上に着水させる試験を何度か行っている。

 今回用意されたプラットフォームは、Autonomous spaceport drone shipと呼ばれており、その名の通り無人で自律して航行することができ、またGPSを使用した位置制御システムを持ち、嵐の中でも指定した位置に3m以内の誤差で滞在し続けることができるという。ロケットが降り立つ甲板は91m x 30mの広さを持っており、また幅は最大52mまで拡張させることができ、将来的には推進剤の再補給などもできるようになるという。

 また、降下時の第1段をより正確に制御するため、今回のファルコン9の第1段にはフィンが装備された。これまでの着水試験ではN2ガスを噴射するスラスターを使って姿勢を制御していたが、それのみでは制御には不十分であったという。このフィンは、よくある翼の形ではなく、ロシアのロケットで見られるような格子状をしており、第1段機体の周囲に90度間隔で4枚装備されている。打ち上げ時には折り畳まれており、再突入後に展開され、第1段のピッチ角、ヨー角、ロール角を制御するという。この格子状フィンによる制御はすでに、垂直離着陸ロケット実験機のファルコン9-R試験機で試験が行われている。

 もともとマスク氏は、第1段の回収試験は一発で成功するとは考えておらず、今回成功する確率も50%ほどと見ている、と述べていた。だが、今回の成果や、今後の改良を加えることで、いずれは成功することだろう。同社は今年、10機以上のファルコン9を打ち上げることをを計画しているが、そのうち1回の打ち上げでは、その以前の打ち上げで使用された第1段を整備して再使用することになるだろうという見通しを示しており、それが実現する確率は80%以上と見込んでいるという。

 マスク氏はツイッターを通じ、「このミッションで、ロケットの再使用化に向けた大きな一歩を刻んだ、わが社の職員をとても誇りに思う。諸君らは最高だ!」と語った。

写真=NASA。

■SPACEX LAUNCHES FIFTH OFFICIAL MISSION TO RESUPPLY THE INTERNATIONAL SPACE STATION | SpaceX
http://www.spacex.com/news/2015/01/10/spacex-launches-fifth-official-mission-resupply-international-space-station

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