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ウェアラブル端末を劇的に進化させる「ノーマリーオフ」とは?
ロームは神戸大学大学院の吉本雅彦教授と共同で、不揮発性メモリを活用した世界最小の超低消費電力技術の開発に成功した。需要が拡大するウェアラブル生体センサに最適なノーマリーオフ技術に期待が高まる[写真拡大]
2025年、団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となる。これにより、日本は4人に1人が75歳以上という未曾有の超高齢社会に突入する。当然、この先、日本人のライフスタイルも大きく変わっていくだろう。その変化の一つが、健康に対する意識の高まりだ。たとえ後期高齢者といわれても、いつまでも元気で人生を楽しみたいのは、誰しもが望むところ。メディアでもすでに周知されていることもあって、生活習慣病の予防に対する意識は高く、生活習慣病対策関連の市場はここ数年、右肩上がりの成長を続けている。その中でも今最も注目されているのが、身体に装着して使用するIT機器・ウェアラブル端末を使用したヘルスケアだ。
矢野経済研究所が2013年6月~2014年8月の期間で、携帯電話・スマートフォンメーカー、コンピューターメーカー、国内半導体メーカー、関連業界団体等を対象に行った『ウェアラブルデバイス市場に関する調査結果2014』によると、2013年のウェアラブルデバイスの世界市場規模は約671万5,000台、国内市場規模は2013年度約53万3,000台(いずれもメーカー出荷台数ベース)となっており、2017年には世界市場は全体で2億2,390万台、国内市場は1,310万台を予測している。ウェアラブル端末と一口に言っても、メガネ型や時計型など様々な形状があるが、ヘルスケア分野ではとくにリスト型のスマートバンドと呼ばれるタイプのものが主流だ。スマートバンドはバイタルデータの収集に特化したウェアラブル端末で、体温や心拍数、血圧などのバイタルデータ、ライフログ等のデータを搭載されたセンサを通じて、インターネットのクラウドサービスに送信して管理する。
「ヘルスケア端末」として、世界的なビジネスチャンスが期待されるスマートバンドは、メーカーもこぞって参入している分野で、日本メーカーではソニーがとくに力を入れており、海外メーカーでは、アメリカのGPS機器メーカー・Garmin、中国の通信機器メーカー・ファーウェイ、韓国のサムスン電子、LGなどがスマートバンドを発売している。つい先日の2014年10月には、マイクロソフト社も、Windows Phone/iOS/Android に対応するスマートバンド「Microsoft Band」と、健康管理のできるウェブサービスMicrosoft Health を発表して話題になったばかりだ。
しかし、ウェアラブル端末の更なる普及のためには一つの大きな課題がある。それは電力使用量をできるだけ抑えて長時間駆動させるということだ。ウェアラブル機器は身につけるものであるがゆえに、他のモバイル機器など比較にならないくらいバッテリーを小さくし、かつ長時間動作できることがもとめられる。究極を言えば、「ユーザーが装着していることを忘れる」ことが理想だ。
そしてこの度、日本の優秀な研究者と技術者たちが、その理想を実現させる技術の開発に成功したのだ。ロームと神戸大学大学院システム情報学研究科情報科学専攻の吉本雅彦教授は共同で、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下・NEDO)のプロジェクト「ノーマリーオフコンピューティング基盤技術開発」において、不揮発性メモリを活用し、処理が無い時間は電源を積極的にオフして待機電力の発生を抑制する技術の開発に成功した。これは、次世代のウェアラブル生体センサに最適な世界最小の超低消費電力技術だ。しかも、通信機能搭載で、スマートフォンからウェアラブル生体センサを制御したり、データの入出力が可能。これら動作を従来製品の約5分の1の低消費電力で実現する。
本技術は、必要に応じて電源を即座にオンする「ノーマリーオフ動作」によって消費電力の極小化を図っているが、主なポイントは3つで「消費電力が大きい心拍取得部の電力を従来比1/20に削減」「メモリ部の平均電力を1/10以下に削減」「ロジック部の消費電力を半分以下に削減」することで、世界最小の消費電力を達成している。
また、ロームではこの技術がウェアラブル生体センサの他、橋梁など構造物の監視センサや農業用センサ、エナジーハーベスト電源対応LSI、パラメータ調整などの不揮発性機能付きローパワーLSIなど、省電力が求められる場面でも応用可能な最適な技術としている。
市場の拡大が期待されるウェアラブル端末に最適なノーマリーオフ技術の開発に日本の技術者たちが成功したことは、一企業の利益だけにとどまらず、日本の経済の発展にも大きく貢献することだろう。いずれにせよ、人もバッテリーも長寿命で、いつまでも元気でありたいものだ。(編集担当:藤原伊織)
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