【アナリスト水田雅展の株式・為替相場展望】重要イベントの谷間で材料難、全体としては米国株を睨みながら一進一退

2014年7月6日 07:54

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

(7月7日~11日)

■テーマ株の個別物色が継続

 7月7日~11日の株式・為替相場については、消費増税の影響に対する警戒感が後退した流れに大きな変化はないが、重要イベントの谷間で手掛かり材料難となる。東証1部市場の売買代金の盛り上がりに欠けるだけに、全体としては米国株の動向を睨みながら一進一退の展開だろう。テーマ株を中心に個別物色が継続しそうだ。

 株式市場では、小売セクターを中心とする個別企業の月次売上動向や、2月決算企業の第1四半期(3~5月)の好業績などで、消費増税の影響は軽微との安心感が広がっている。また年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が3月に日本株を約2500億円買い越したことが明らかになり、リスク資産運用比率引き上げが材料視される状況にも変化はないだろう。

 ただし下値不安が後退して堅調な動きとはいえ、一方では積極的に主力株の上値を追う材料にも欠けるようだ。3日の米6月雇用統計を通過して当面は重要イベントの谷間となるため様子見ムードを強める可能性があり、全体としては米国株の動向を睨みながらの展開となりそうだ。

 3日の米6月雇用統計で、非農業部門雇用者増加数が前月比28.8万人増加となり、市場予想の同約21万人増加、そして5月改定値の同22.4万人を大幅に上回った。失業率も6.1%に低下した。この結果を好感して米国株式市場では、ダウ工業株30種平均株価が史上初めて1万7000ドル台に乗せた。

 日本株は、1日の日銀短観(6月調査)で設備投資が市場予想を上回る高い水準だったことを好感して上昇し、4日には前日3日の米国株高を好感して日経平均株価は終値で1万5400円台を回復した。ただし4日は寄り付き天井の形となって上値追いに慎重な印象を強めた。東証1部市場の売買代金も1兆6628億円にとどまった。4日の米国市場が独立記念日で休場だったことも影響して盛り上がりに欠ける状況だった。

 また米VIX指数が07年2月以来の水準に低下していることを逆に警戒する見方があり、ダウ工業株30種平均株価が史上初めて1万7000ドル台に乗せたことで目先的には達成感を警戒する見方も強まりそうだ。したがって米国株に関しては、8日の米アルコアから始まる米主要企業の4~6月期決算発表に対する反応が当面の焦点となる。

 そして日本株は下値不安が後退して堅調な動きだが、当面は米国株の動向を睨みながらの展開だろう。政府が6月24日に閣議決定した「骨太の方針」「新成長戦略」に関して徐々に評価が高まる可能性もあるが、主力株への本格的な資金流入はやはり、7月末から発表が始まる3月決算企業の第1四半期(4~6月)業績や、8月13日の日本4~6月期GDP1次速報の確認待ちとなりそうだ。

 4日の日経ジャスダック平均株価は年初来高値を更新し、07年2月以来の水準を回復した。中小型株・テーマ株物色で新興市場への資金流入が続いている。ネット・ゲーム・LINE関連、格安スマホ・SIMカード・仮想移動体通信事業者(MVNO)関連、ロボット関連、新燃料・新エネルギー関連、燃料電池・水素ステーション関連、原子力関連、次世代2次電池関連、バイオ関連などが引き続き日替わりで循環物色されそうだ。

 外国為替市場では、3日の米6月雇用統計が市場予想を上回る強い結果だったことや、ECB(欧州中央銀行)理事会が政策金利の据え置きを決定したことを受けて、ドル・円相場は1ドル=102円20銭台までドル高・円安方向、ユーロ・円相場は1ユーロ=139円20銭台までユーロ高・円安方向に傾いたが、4日の東京市場では逆にややドル安・円高方向、ユーロ安・円高方向に傾いた。

 一部では米FRB(連邦準備制度理事会)の利上げ時期を前倒しする見方もあるようだが、市場の動きを見る限りでは早期利上げ観測は高まっていないようだ。イエレン米FRB議長の発言などで米10年債利回りが上昇しにくい状況であり、ドル・円相場、ユーロ・円相場とも引き続き膠着感の強い展開だろう。

 その他の注目スケジュールとしては、7日の日本5月景気動向指数、ユーロ圏財務相会合、8日の日本5月国際収支、日本6月景気ウォッチャー調査、EU財務相理事会、9日の日本6月マネーストック、中国6月PPI・CPI、米FOMC(連邦公開市場委員会)6月17日~18日開催分議事要旨、9日~10日の英中銀金融政策委員会、10日の日本5月機械受注、日本5月第3次産業活動指数、日本6月企業物価指数、日本6月消費動向調査、中国6月貿易統計、11日の米6月財政収支などがあるだろう。

 その後は14日~15日の日銀金融政策決定会合、16日の中国4~6月期GDP、29日~30日の米FOMC(連邦公開市場委員会)、30日の米4~6月期GDP速報値、8月1日の米7月雇用統計、7日のECB(欧州中央銀行)理事会と記者会見、13日の日本4~6月期GDP1次速報などが予定されている。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

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