ダボス会議は国際問題の“潤滑油”、安倍首相の使い道は?

2014年1月23日 10:43

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記事提供元:フィスコ


*10:43JST ダボス会議は国際問題の“潤滑油”、安倍首相の使い道は?
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が22日から25日までスイスのダボスで開催される。ここには各国政府首脳や中央銀行幹部、企業の最高経営責任者(CEO)、非政府組織(NGO)、メディア、学者など世界の各分野で活躍する要人が一堂に会する。

安倍首相が22日夕(日本時間23日未明)に開会式での基調講演を行うなど、会議には色々な公式行事が組まれているが、見どころは各参加者が企画する「非公式セッション」。非公式行事は大々的に報道されないため目立つことはないが、国際社会で発生する様々な問題を解決方向に導く“潤滑油”の役割を果たすケースが多い。

かつては1990年代に「グローバリゼーション反対」ののろしを上げたNGOも現在はダボス会議の重要な参加者。また、2008年に発生した世界金融危機の際にも、各国の規制当局や銀行幹部らが相互の利害をすり合わせて何らかのコンセンサス(合意)を形成し、現在は何とか危機を乗り越えられる段階まで差し掛かっている。

さて、安倍首相は日本の首相として初めて基調講演を行い、自身が進める経済政策「アベノミクス」の成果強調や「積極平和主義」を国際社会にアピールした。また、韓国の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の講演を最前列で傍聴し、「素晴らしい講演だった」と評価したと報じられている。

ただ、靖国問題がくすぶる中、韓国との二国間会談は実現が難しいようで、日韓関係改善に向けた何らかの成果が出るのを期待するのは困難とみられる。

対中関係でも直接的な接触は予定されていない。一方、安倍首相は会議に参加している各国メディアとの会談で、靖国参拝について言及。中国メディアが「戦争犯罪者を英雄だと思っているのか」と質問したのに答えたもので、首相は「いわゆるA級戦犯を称揚するためではない。そこには(戦争の)ヒーローがいるのではなく、戦争に倒れた人々の魂があるだけ。憎しみもないし敵意もないし、人を辱めようというつもりはない」と述べたと伝わっている。

日中韓関係が冷え込むきっかけになった靖国参拝だが、安倍首相は「日本は悪くない」との主張を変えるつもりはないようだ。一方、アジアの軍拡競争に強い懸念を示すなど、名指しは避けながらも「中国が悪い」との含みを国際社会にアピールしている。

安倍首相がダボスで利用する機会は日中韓の関係改善というよりも、日本の主張を世界にアピールすることに重点が置かれているようだ。《RS》

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