190億円を投じて中国に自動車用アルミ材工場を設立する神戸製鋼の目論みとは?

2013年10月6日 11:55

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記事提供元:エコノミックニュース

 神戸製鋼<5406>は中国天津市の西青(シーチン)経済技術開発区に、パネル材(自動車パネル用アルミ板材)の製造・販売を行う新会社を設立することを決定した。新会社は、日系アルミ圧延メーカーでは初めての、中国におけるパネル材の現地生産拠点となる。同社真岡製造所から冷間圧延後の母材を供給し、現地では熱処理、表面処理などの精整工程を行う。

 同社は1980年代に日系自動車メーカー向けに初めてパネル材を納入して以来、日本市場を中心に実績を積み上げてきた。その結果、日本のパネル材市場において50パーセントを超えるシェアを有している。パネル材について、独自の材料開発や熱処理などの生産技術に加え、アルミに適した形状設計や加工のノウハウなどを有しており、日系自動車メーカーはもちろん、欧米系自動車メーカーからも高い評価を受けている。

 中国は、世界最大の自動車市場であり、その生産台数は今後10年間で5割程度増加すると見込まれている。加えて、大気汚染等の環境問題を契機として燃費規制が一層強化されており、自動車軽量化ニーズが高まっている。同社はこういったことから、中国市場におけるパネル材の需要は、今後急速に拡大すると見込んでいる。

 現在同社は、中国市場へのパネル材の供給を真岡製造所からの輸出で対応しているが、増大する自動車メーカーからの現地供給要請に応えるためには、現地生産化が必要と判断し、今回の決定に至ったという。

 同社は、6月に欧州のアルミ圧延大手HYDRO社とパネル材に関する技術協力契約を締結している。これに続く、この中国拠点設立により、世界的に伸長するパネル材の供給体制を強化していくとしている。

 同社のアルミ・銅事業部門は、軽量化ニーズによりアルミの採用が拡大している自動車分野に注力しており、自動車サスペンション用アルミ鍛造部品では、米国「Kobe Aluminum Automotive Products,LLC」、と中国「神鋼汽車呂部件(蘇州)有限公司」(呂は正しくは金偏の右に呂)を含めた日米中3極生産体制を確立している。また、自動車バンパーなどの押出・加工品については、世界最大手のSAPA社と技術供与契約を締結しており、同社の拠点を通じたグローバル供給体制の構築を進めている。

 新会社の名称は「神鋼汽車呂材(天津)有限公司」(呂は正しくは金偏の右に呂)で、14年初頭の設立を予定している。出資は神戸製鋼100パーセントで、総投資額約190億円で神鋼投資有限公司を経由する予定。生産能力は年間10万トン、稼働時期は16年の予定で、従業員数はフル稼働時で140人程度。(編集担当:久保田雄城)

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