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■加点主義と減点主義について
一般的な評価制度では、標準的な期待水準を設定し、それを上回ればプラス評価、足りなければマイナス評価という形を取ることが多いと思います。例えば5段階評価(S・A・B・C・Dなど)であれば、まん中(B評価)を標準と設定することが多いはずです。
この場合、評価者が厳格であったり、俗にいう「できる上司」だったりすると、この標準の期待水準を「できて当たり前」と捉え、減点対象が増えてマイナス評価の傾向が強くなります。仕事内容として、比較的定型業務が多い、ミスが許されないという傾向が強いような場合も、同じように減点主義、マイナス評価になりがちです。期待水準の記述内容で回避できる部分もありますが、以前にも述べた通り、何でも細かく書くことの弊害もありますし、それだけで万全にはなりません。
また人事考課の現場では、例えば本人に自己評価などをさせている場合、その結果というのは、だいたいにおいて上司の思っているものよりは甘くなりがちです。本人がアピールと思ってわざわざ高めの点数をつけて来ることもあります。
いくら「褒めて育てる」などといっても、人事考課で甘い採点をそのまま見過ごすことはできません。上司はやむを得ずマイナス面や不足部分を指摘して点数を直していくことになりますが、このプロセス自体は完全な減点主義です。意図していないにもかかわらず、実際の運用は「減点主義」的な方向に傾きがちになります。
「加点主義」の意識をうまく打ち出していくことができれば、社員のモチベーションアップにもつながりますが、このように実際の運用では「減点主義」になりがちです。まずは評価者の心構え、スキルが大事になりますが、「減点主義」と感じさせないような、制度上の工夫も必要と思います。
基本的には各社の事情に応じて考えて頂くとして、ここではいくつかの例を挙げておきます。
○標準評価をまん中ではなく下にシフトする
一般的な評価制度では、5段階評価(S・A・B・C・Dなど)であれば、まん中(B評価)を標準と設定することが多いですが、この標準をC評価、D評価など下へシフトすると、標準以上の段階が増えるので、「標準(期待水準)をどのくらい上回ったか」、という加点の程度を考えるように、評価者の思考が変化します。加点の程度を考えるという事は「その人のプラス要素は何があるか」を探すようになるという事で、加点主義のイメージを強めることにつながります。
絶対評価という前提であれば、実際の評価の中で標準以下と評価される比率はそれほど多くなく、まん中(B評価)を標準と設定されていて、最低のD評価までつく人はほとんどいないのが実態ではないでしょうか。実際にそこまで能力も成果も足りないような人材は、組織内にはめったに存在するものではないという事が一つ、マイナスの程度をランク付けすることにそれほど意味がないことがもう一つです。こんな点からも、試してみる価値がある方法だろうと思います。
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