本に載らない現場のノウハウ-中小企業の人事制度の作り方:第11回 評価制度の検討(4)(2/4)

2013年3月7日 12:39

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■絶対評価と相対評価の話
 そもそも評語や評価点ごとの分布率など、初めから決めてしまうには相応の根拠が乏しいですし、正規分布という設定ではなおさら不自然です。よく「2・6・2の法則」(組織で上位2割は高生産性の優秀なグループに、中位6割が平均的なグループに、下位2割が生産性の低い行動しないグループに、必ず分かれてしまうという法則)などといいますが、これだって少なくとも8割近い人は「普通程度以上に成果を出している」という計算になります。

 「相対評価」という話が出てくる背景には、実際の評価結果と会社業績の連動を意識していることが多いです。「絶対評価」と言いながら、実際にはなぁなぁの関係での甘い評価になり、そんな「評価のインフレ」が、特に人件費の面などで経営上の悪影響になることを懸念しています。

 もちろん、実際の評価結果と会社業績がかい離してしまうというのは、それはそれで大きな問題ですが、逆に100%整合するという事もありません。首位打者を取る選手がいたけど、チームは最下位、観客動員は伸び悩んで収益が悪いとなれば、チーム内の評価としては最高でも、実際の報酬はそれほど出せないということになるでしょう。ただ、こういうことは給与原資を配分する段階で考えればよいことで、評価結果そのものを相対化する必要はないはずです。

 ということで、評価制度としては、「絶対評価」という形で打ち出していくことをお勧めします。

 人件費のコントロールは賃金制度の中で十分できますし、「評価のインフレ」のような問題は、運用面の課題として取り組んでいくべきです。

 何よりも、「自分の努力だけでは評価は上がらない」という意識を与えてしまうことでの悪影響の方が大きいと思います。

■加点主義と減点主義について
 もう一つ、同じような論点で「加点主義」と「減点主義」という話があります。

 「加点主義」はプラス面を見つけて加点していくやり方、「減点主義」はマイナス面や不足部分を指摘して減点していくやり方です。

 単純に考えれば、「加点主義が良いに決まっている!」となるのでしょうが、実際にこれを評価制度の中で実行できているところは、非常に少ないのではないかと思います。

著者プロフィール

小笠原 隆夫

小笠原 隆夫(おがさわら・たかお) ユニティ・サポート代表

ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名~1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html

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