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小児がん治療の形を変える、「夢の病院」が着工
公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金とNPO法人チャイルド・ケモ・ハウスが、小児がん患児と家族が治療中でも共に生活できる「チャイルド・ケモ・ハウス」の建設に着手。建設地であるポートアイランドの神戸医療産業都市にて5月18日、地鎮祭が行われた。
日本における小児の病死原因の第一位であり、年間約2500人が罹患するという小児がん。医学の進歩により治癒する確率は上がったものの、白血病と固形腫瘍とに限らず、治療に必要となる化学療法の期間は約6ヶ月から2.5年にも及ぶという。その間、家族は子どもに「付き添って仮眠」することは出来ても「生活」することはできず、子どもは入院中も成長過程でありながら日常生活から隔離されている。また、狭い病室はそれだけでストレスとなり、遊びや教育面でのサポートなども手厚いとは言えない。こうした環境が子どもにも家族にも負担となっており、その解消及びサポートが求められていた。
今回建設が始まった「チャイルド・ケモ・ハウス」は、こうした声に応えるもの。小児がんと闘う子どもたちとその家族が、家のような環境で療養に専念できる日本初の施設となる。敷地面積3500m2に、専門医常駐のクリニックや訪問看護ステーションが併設された平屋建ての共同住宅(19戸)で、レストランなども完備されている。「生活」を最優先としているため、病院内で家族が一緒に生活をするのではなく、医療施設を中心とした一つの村のような施設となっている。また、通常6から8m2程のスペースで送ることが強いられる入院生活が、ここでは約30から50m2の広さで送ることができ、アメニティも整備されている。
こうした施設は、現在の日本の医療保険制度の中には位置付けられておらず、開業後も寄付などを取り入れて運営がなされることとなる。建設にあたっても同様であり、歯の治療でいらなくなった金属や入れ歯の寄付により回収した金属を換金して、小児がん・難病支援やミャンマー学校建設を実施している日本歯科医師会と日本財団が取り組む「TOOTH FAIRYプロジェクト」より約3億円の資金援助を受けている。また、大手不動産企業の多くが土地活用として医療・介護施設を扱う中、生涯住宅思想に基づいて公的プロジェクトにも多く参加してきた積水ハウスも、総合企画設計と施工を担当するだけでなく、約2億円の寄付を実施している。地鎮祭後の会見で、積水ハウスの伊久取締役・専務執行役員は「"家のような夢の病院"を実現したいという考えに共感し、当プロジェクトへの参加を決めた。医療介護・福祉系の建築実績やユニバーサルデザイン・キッズデザインなどに関するノウハウを生かし、全面的に協力したい」と今回のプロジェクトにかける意気込みを語った。また、当施設は人気建築家の手塚貴晴氏・手塚由比氏が設計を手掛けたとして注目を浴びている。
内閣官房が5月10日に発表した医療イノベーション5カ年戦略中間報告。ここで、日本の医療の強みとして、平均医療の水準の高さと並び、きめ細かさ・ホスピタリティ・親切・丁寧な「安心・癒しの医療」が挙げられている。「チャイルド・ケモ・ハウス」は、これを体現するものと言えるであろう。そして、こうした強みをパッケージインフラのソフト版として海外に展開、海外からも国内に呼び込む戦略であるという。しかし、「チャイルド・ケモ・ハウス」も多くの支援者や寄付団体・企業の厚意によって建設を実現したというのが現実である。日本の成長を図る一端として、将来を担う子どもたちを支えるこうした取り組みが、寄付に頼った運営から脱却できるような仕組みづくりも重要となるのではないだろうか。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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