トヨタ、衝突回避支援システムなど開発中の安全技術の一端を公開

2011年7月21日 18:55

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 トヨタ自動車は21日、モビリティ社会の究極の願いである「交通死傷者ゼロ」に貢献するため、安全への取り組みを一段と強化し、歩行者や高齢者などの交通弱者に配慮した安全技術開発を加速すると発表。同日、「衝突回避支援プリクラッシュ セーフティシステム(以下PCS:Pre Crash Safety System)」、「アダプティブ ドライビング ビーム(以下ADB:Adaptive Driving Beam)」、「ポップアップフード」、「体調急変への対応技術」など、現在開発中の安全技術の一端を公開した。

 今回公開された衝突回避支援PCSは、夜間でも機能する「追突・歩行者事故対応支援PCS」と、ブレーキに加えステアリングまで統合制御する「走路逸脱対応支援PCS」の2タイプがある。

 衝突を事前に予測し、衝突被害の軽減に寄与する現行PCSに対し、開発中の「追突・歩行者事故対応支援PCS」は、衝突回避までを視野に置いたシステム。ミリ波レーダーとステレオカメラを搭載した「クルマ」が、歩行者や前方車両を認識する。衝突の可能性がある場合、路面や走行状況など運転時の環境や諸条件に左右されるが、ドライバーがブレーキを踏めない状況でも、自動ブレーキが作動し、衝突回避を支援する。同システムは、近赤外線投光器を搭載し、昼夜問わず性能を発揮する。

 一方、「走路逸脱対応支援PCS」は、走路逸脱に対応し、ブレーキに加えてステアリングまで統合制御する。路側物や対向車など車外の状況をより広域・総合的に認識し、衝突の危険を検出する統合制御により、車両の向きを変え、安全な方向へ車両を誘導し、ドライバーの事故回避に寄与する。

 また、ADBは、トヨタが一昨年に市場導入した、先行車のテールランプや対向車のヘッドランプを車載カメラで検出し、ハイビームとロービームを自動で切り替え、夜間の視界確保に寄与する「AHB(Automatic High Beam)」をさらに進化させた新技術。車載カメラで検出した先行車や対向車に直接ハイビームを当てないように部分的に遮光することで、前方車両に幻惑を与えることなく走行時の視認性を確保する。これにより、常にハイビームに近い視界を確保することで、夜間の視認性を向上し、歩行者や車両事故の低減に寄与する。

 ポップアップフードは、フード高が低く、その下の空間が十分に確保できない車種でも、歩行者との衝突をバンパー部の圧力センサーで検知し、フード後方を自動的に持ち上げ、フード下の空間を拡大し、歩行者頭部への傷害軽減に寄与する。 

 体調急変への対応技術は、ステアリングホイールを握っている状態で、心血管活動をモニターし、緊急事態になる前の段階でリスクを予測する研究成果。今後さらに研究を進め、体調急変による重大事故の未然防止に寄与するシステムの実用化を目指す。

 同社は、クルマづくりを通じて社会に貢献する立場から「人々を安全・安心に運び、心までも動かす」をグローバルビジョンに掲げ、「安全な車両開発」・「人に対する交通安全啓発活動」・「交通環境整備への参画」の三位一体の活動に取り組んでいる。車両開発においては、「実際の事故に学び、常に改善を続けていく」という「実安全の追求」を基本的な考え方とし、「統合安全コンセプト」を念頭に、安全な商品の開発を進めている。また、実際の交通事故の調査・解析では、今年米国に設立した「先進安全技術研究センター(Collaborative Safety Research Center)」や世界各地の研究機関とも連携して推進している。

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