7月以降の「親亀」たちの攻防次第で日産系「小亀」5社に「想定外」展開も=浅妻昭治

2011年6月27日 16:16

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

「親亀こけたら子亀がこける」のは、早口言葉として人口に膾炙しているように十分に「想定内」である。誰も驚きはしない。ではこの反対の「子亀こけたら親亀がこける」となるとどうなるか?親亀の背中に乗った子亀が、親の背中から落下したくらいでは、親亀にとって痛くも痒くもない日常茶飯事と想像するのは常識である。

「親亀こけたら子亀がこける」のは、早口言葉として人口に膾炙しているように十分に「想定内」である。誰も驚きはしない。ではこの反対の「子亀こけたら親亀がこける」となるとどうなるか?親亀の背中に乗った子亀が、親の背中から落下したくらいでは、親亀にとって痛くも痒くもない日常茶飯事と想像するのは常識である。[写真拡大]

【浅妻昭治(株式評論家・日本インタビュ新聞社記者)のマーケット・センサー】

  「親亀こけたら子亀がこける」のは、早口言葉として人口に膾炙しているように十分に「想定内」である。誰も驚きはしない。ではこの反対の「子亀こけたら親亀がこける」となるとどうなるか?親亀の背中に乗った子亀が、親の背中から落下したくらいでは、親亀にとって痛くも痒くもない日常茶飯事と想像するのは常識である。ところが、こけた小亀が、甲羅を背中にして手足をバタバタさせ慌てふためいている隣で、親亀がそれ以上にもがき苦しんでいるのである。これは、どうしても「想定外」とするほかない。

  この「想定外」の事態が、3月11日に発生した東日本大震災の影響で起こってしまった。いわゆるサプライチェーン(供給網)の寸断、途絶である。被災地の部品会社、素材会社の生産が停止した途端に、自動車、電機などの日本の基幹産業の生産ラインがストップしてしまった。この影響は国内だけにとどまらない。米国景気の下ぶれ要因になって、株価まで変調させる大事に発展してしまった。

  この「想定外」の緊急事態を前に次に問題となるのは、親亀のこけ方の程度となる。こけ方の差が歴然と現れたのが、自動車業界である。業界序列の変動が如実となった。業界3位の日産自動車 <7201> (東1)の業績がトップのトヨタ自動車 <7203> (東1)や2位のホンダ <7267> (東1)の業績を上回ろうとする激変が起きようとしているのである。日産の今3月期の営業利益は、4600億円(前期比14%減)と予想され、トヨタの3000億円(同35%減)、ホンダの2000億円(同64%減)の各予想値に減益率の低さでも利益額でも大きく水を開ける。

  この親亀たちのこけ方は認められるのか?とくに問題となるのはトヨタであるのは衆目の一致するところだろう。前期は、わずかの差でホンダの後塵を拝し、今期は日産に1600億円もの差をつけられるのである。社長の座にあるのは、創業家直系3代目の豊田章男氏である。リコール問題の処理でミソをつけ、いままた大震災の後処理で後手に回ろうとしている。もちろん、かつての事業仕分けで鋭く切り込んだ蓮舫行政刷新担当大臣のように「2番じゃ駄目なんでしょうか」というわけにはいかないはずだ。ということは7月以降、この親亀たちの攻防、こけ方の修復方向、まき返し方が、株価動向の大きな注目材料に浮上することは、容易に想像がつくことになる。

【第1のチェックポイントは今3月期業績の開示動向】

  親亀たちのこけ方の修復には、2つのトレンドが考えられる。1つは、トヨタ、ホンダが急速にマイナスをプラスに転換し日産に追い付き、追い越すアップ・トレンドである。証券アナリストの評価では、両社の業績予想は「保守的」とするのが大勢だそうだから、この観測通りならトヨタ、ホンダが、いずれ日産を上回ってくるアップ・トレンドが期待されることになる。もう1つは、日産が頼みの綱としている中国市場が急速に失速し、日産のこけ方がよりひどくなり、トヨタ、ホンダに下寄せするダウン・トレンドである。どちらのトレンドが主流になるのか、ゴーン社長、豊田社長の顔色から目が離せないことになる。

  「親亀」のこけ方が、「想定内」か「想定外」かによって「小亀」会社に連動の余地がある。株価的に注目したいのは、日産系の小亀会社の5社、鬼怒川ゴム工業 <5196> (東1)、日産車体 <7222> (東1)、カルソニックカンセイ <7248> (東1)、河西工業 <7256> (東1)、ヨロズ <7294> (東1)である。すでに株主総会を終わっているにもかかわらず、日産車体を除いてなお4社が、今3月期の業績と配当を未定のままとしているがやや気になるが、親亀が、前週末24日に今期業績を明らかにしたから遠からず業績開示があるはずで、この動向がまず最初のチェックポイントになる。

  いずれにしろ、「ゴーン革命」で「ケーレツ」崩壊の厳しい現実にも直面したこともあって、親会社がこのままアップ・トレンドを突き進み、株価もさらに強含むようなら、前期と同様な相次ぐ業績上方修正で上値を伸ばす展開も期待できそうだし、例えダウン・トレンドを余儀なくされても、こけ方への対応はそれ相応に心得ていると推測できることになる。(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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