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グリコ、初期むし歯の再結晶化で「SPring8賞」受賞
江崎グリコ <2206> は、財団法人高輝度光科学研究センターの大型放射光施設「SPring-8(スプリング8)」を使用した研究で、同社のオリジナル成分「リン酸化オリゴ糖カルシウム(POs‐Ca)」が初期むし歯(初期う蝕)の歯の再結晶化に効果を発揮することを証明した。この研究が評価され、このたび、SPring-8の社会全体における認識と知名度を高めることを目的として兵庫県が設置した「第8回 SPring-8賞」を受賞した。
歯の表面を覆うエナメル質の主成分は、リン酸(P)とカルシウム(Ca)からなるハイドロキシアパタイトの結晶物である。このハイドロキシアパタイトの結晶物の表面では、食事によって付着したプラーク(歯垢)に含まれる細菌が作り出す酸によってリン酸とカルシウムが溶け出す「脱灰」が起こる。この脱灰が原因となって初期むし歯が起こるのだが、この初期むし歯は、視覚的には穴があいているわけではない。しかし、表層から数百マイクロメートル(1マイクロメートルは0.001ミリメートル)の深部領域では健康な歯に比べるとミネラルが著しく減少しており、この状態が続くと視覚的にも穴があいた状態となり、一般的に「むし歯」と称されるう窩が歯の表面に形成される。
歯の表面(エナメル質部位)では、初期むし歯の原因となる脱灰が起こる反面、唾液に含まれるリン酸イオンとカルシウムイオンを歯に補給し、健康な状態に戻そうとする「再石灰化」も起こっており、歯の表面では脱灰と再石灰化という、相反する2つの現象が日常的に繰り返されている。同社が開発したリン酸化オリゴ糖カルシウムは、この再石灰化に効果を発揮するものとして、"歯のためのガム"「フラットスタイル"ポスカ(POs‐Ca)"」に配合するなど、商品化されてきた。
そもそも、初期むし歯や、脱灰・再石灰化といった現象は以前から知られていた。しかし、これまで用いられてきた国際的な標準法(TMR法などに代表されるX線透過法の一種)をはじめとした手法では、非常に微細な領域で起こる脱灰・再石灰化におけるミネラルの喪失や回復を量として捉えることはできたが、結晶の構造的変化量を詳細に捉えることは困難であり、一つの疑問として大きな研究テーマとなってきた。
そこで同社は、世界最高性能の放射光を生み出すことで原子レベルの物質構造の解析に使用される、「SPring‐8」の放射光を用いて調整された非常に細く直線性の高いX線マイクロビーム(細菌や霧1粒程度にあたる約6マイクロメートル)を利用し、初期むし歯の歯の脱灰・再石灰化の過程における全領域の結晶の量的・構造的変化を捉えることを目指した。
研究では、初期むし歯を発症させた歯エナメル質に、リン酸化オリゴ糖カルシウムを用いて再石灰化処理を行い、その変化を観察・評価した。その結果、初期むし歯を発症させた脱灰部は、ミネラルが原子単位ではなく、ハイドロキシアパタイトの結晶単位で失われていることと、リン酸化オリゴ糖カルシウムを用いて処理を行った再石灰化部では、健全な歯と同じハイドロキシアパタイト結晶が健康な歯と同じ並び(配向性)を有し、健康な歯同じ結晶構造が復元されているということが分かった。つまり、初期むし歯の状態の歯が"治っていた"ということである。
この研究の結果によって、初期むし歯の脱灰・再石灰化メカニズムの解析や、食品をはじめとしたむし歯予防・口内ケア用品などの開発に有益な情報が得られると考えられている。さらに、リン酸化オリゴ糖カルシウムを配合したガム「ポスカ(POs‐Ca)」は、9月30日付で特定保健用食品として消費者庁より許可を取得しており、同成分の効果を前面に打ち出したリニューアル商品の発売も期待される。
※この記事はエコノミックニュースから提供を受けて配信しています。
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