小惑星リュウグウ試料の磁気測定から探る初期太陽系の磁場環境
配信日時: 2026-03-03 10:00:00
【研究の要旨とポイント】
小惑星探査機「はやぶさ2」が回収した小惑星リュウグウの微小試料に対して、高感度SQUID磁力計を用いた磁気測定を行いました。
研究グループ間で異なっていた解釈を統合できる磁気データが得られ、リュウグウ母天体が太陽系形成初期に経験した水質変成時の磁場環境が記録されている可能性が示されました。
本研究は、太陽系初期の物質進化や惑星形成環境を理解する上で重要な成果です。
【研究の概要】
東京理科大学 理学部第一部 物理学科の佐藤 雅彦准教授、北海道大学の木村 勇気教授、岡山理科大学の畠山 唯達教授、東北大学の中村 智樹教授、名古屋大学の渡邊 誠一郎教授を中心とする共同研究グループは、小惑星探査機「はやぶさ2」によって地球へ持ち帰られた小惑星リュウグウの微小試料に対して高感度な磁気測定を行い、太陽系形成初期における磁場環境に関する新たな知見を得ました。本研究では、研究グループが開発した高感度SQUID磁力計を用いた微小試料測定技術により、サブミリメートルサイズのリュウグウ試料約30個を系統的に分析することに成功しました。その結果、これまで研究グループごとに異なっていた解釈を統合的に理解するための十分な磁気データが得られ、リュウグウ母天体が太陽系形成後およそ300万~700万年に経験した水質変成時の外部磁場環境を記録している可能性が強く示唆されました。本成果は、太陽系初期の物質進化や惑星形成環境を理解する上で重要な手がかりを与えるものです。
本研究成果は、2026年2月10日に国際学術誌「Journal of Geophysical Research: Planets」にオンライン掲載されました。
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/102047/234/102047-234-7ef9219cbd162cce642e9642592a2d0b-3900x1094.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図 リュウグウ試料の磁気記録データ(左)と磁気記録の性質(右)
【研究の背景】
太陽系の形成と進化を理解するためには、原始太陽系円盤を構成していた物質が、どのような物理化学的環境のもとで形成・変化してきたのかを明らかにすることが不可欠です。原始太陽系円盤の磁場は、弱く電離した原始太陽系星雲ガスの運動によって生成・維持され、星雲内物質はこの磁場と相互作用しながら成長・進化してきたと考えられています。そのため、コンドライト隕石などに代表される始原的物質が記録する原始太陽系星雲の磁場環境に関する情報は、太陽系進化史を理解する上で極めて重要な制約となります。小惑星リュウグウは、太陽系形成初期の情報を良好に保存していると考えられる炭素質小惑星であり、「はやぶさ2」によるサンプルリターンは、太陽系初期環境を直接調べる貴重な機会を提供しました。一方で、回収された試料は極めて微小で磁化も弱く、磁気測定そのものが技術的に大きな課題となっていました。
【研究結果の詳細】
これまでの研究では、ミリメートルサイズの比較的大きなリュウグウ試料に限って磁気分析が行われており、解析された試料数は合計で10個以下にとどまっていました。そのため、得られた結果は研究グループごとに異なり、リュウグウ試料が記録している磁気情報の解釈について統一的な見解は得られていませんでした。本研究では、研究グループが開発した高感度SQUID磁力計を用いた微小試料測定技術により、サブミリメートルサイズのリュウグウ試料約30個に対して磁気測定を実施しました。これは、これまでの研究と比較して大幅に多い試料数であり、リュウグウ試料の磁気特性を系統的に評価することを初めて可能にしたものです。その結果、過去の研究成果と調和的かつ統合的な比較・検討を行うための十分な磁気データが得られ、リュウグウ試料が太陽系形成後およそ300万~700万年に母天体で起こった水質変成の際の外部磁場環境を記録している可能性が高いことが明らかになりました。本成果は、太陽系形成期における磁場環境に新たな制約を与えるとともに、微小なリターンサンプルの磁気測定が太陽系進化史を解明する強力な手法であることを示しています。
【今後の展望】
今後は、リュウグウ試料が記録する磁場情報についてさらに詳細な検討を進めることで、太陽系形成期における磁場環境の理解を一層深化させていく予定です。また、本研究で確立した微小試料に対する高感度磁気測定手法を、他のリターンサンプルや隕石試料へと展開することで、太陽系形成初期における磁場環境の時間的・空間的変遷をより詳細に復元していくことが期待されます。さらに、本成果は、将来の地球外天体探査やサンプルリターン計画において、磁気情報を重要な科学的指標として活用するための基盤を提供するものです。
- 本研究は、日本学術振興会(JSPS)の科研費(JP21H01140)による助成を受けて実施したものです。
【論文情報】
[表1: https://prtimes.jp/data/corp/102047/table/234_1_b482902d6e631c186a37931ca26d6a85.jpg?v=202603031145 ]
【発表者】
[表2: https://prtimes.jp/data/corp/102047/table/234_2_41e95820b9b59c0da057f01ad473f798.jpg?v=202603031145 ]
【研究に関する問い合わせ先】
東京理科大学 理学部第一部 物理学科 准教授
佐藤 雅彦(さとう まさひこ)
E-mail:msato【@】rs.tus.ac.jp
【報道・広報に関する問い合わせ先】
東京理科大学 経営企画部 広報課
TEL:03-5228-8107 FAX:03-3260-5823
E-mail:koho【@】admin.tus.ac.jp
北海道大学 社会共創部 広報課
TEL:011-706-2610 FAX:011-706-2092
Email:jp-press【@】general.hokudai.ac.jp
岡山理科大学 企画部 企画広報課
TEL:086-256-8508 FAX:086-256-8528
Email:kikaku-koho【@】ous.ac.jp
東北大学大学院理学研究科・理学部 広報・アウトリーチ支援室
TEL:022-795-6708
Email:sci-pr【@】mail.sci.tohoku.ac.jp
名古屋大学 総務部 広報課
TEL:052-558-9735 FAX:052-788-6272
Email:nu_research【@】t.mail.nagoya-u.ac.jp
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