【和歌山高専】博物館標本×DNA解析「ミュゼオミクス」で新知見:ベトナムの食用巻貝は50種超
配信日時: 2025-12-24 08:30:00
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ベトナム・ハイフォン市の腹足類(巻貝)
和歌山工業高等専門学校(和歌山県御坊市 校長:井上 示恩 以下「和歌山高専」)のスティアマルガ・デフィン准教授が国際共同研究により、ベトナムで50種以上の巻貝が食用として消費されていることを示しました。本研究では東京大学総合研究博物館、ベトナム科学・技術アカデミー生態学生物資源研究所(IEBR)、和歌山高専協定姉妹校のインドネシア・国立IPB大学が共同で、東京大学総合研究博物館に収蔵されている、ベトナム各地の魚市場から集められた海棲巻貝の標本のDNA解析(ミュゼオミクス解析)を行いました。
本研究成果は学術誌 Future Foodsの令和7年12月号に掲載されました。
この成果は、近年注目されている食の多様化の観点でも興味深いものです。海洋国家である日本やインドネシアであっても、食用として定着している巻貝(腹足類)はサザエやアワビなど数種程度に限られています。しかし、本研究の成果により、ベトナムでは伝統的な食文化の中に50種以上の巻貝が関わっている実態が示されました。これは、巻貝を原材料とする食の多様化の可能性も示唆しています。
一方で、これまではベトナムの巻貝の多様性の実態を記録したデータが乏しかったために、資源管理や食の安全性の確保が難しいという問題がありました。従って、どの種が、どこで獲られ、何として流通しているかを、科学データで追跡できるトレーサビリティ(食糧生産課程の追跡可能性)が鍵になります。流通名と実際の種のズレが起き得ることに加え、DNA解析といった強力な手段を用いても、追跡やモニタリングで用いる参照データベースに登録名の誤りなどがあれば、同定や検証に支障が出てしまいます。これは、実装可能なトレーサビリティに立ちはだかる大きな課題です。
こうした課題に対して、本研究では「検証可能な標本」と「利用できるDNA配列の参照データ」をセットで整備し、意思決定やモニタリングを科学的根拠に基づいて進めるための基盤を提供しました。これはネイチャーポジティブ(自然回復と両立する活動)な未来に向けたデータ駆動型アクションを進めるための土台になります。さらに、世界中の自然史博物館に所蔵されている標本がネイチャーポジティブな未来に大変重要な役割をもっていることも暗示しています。
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研究に関する講演を行うスティアマルガ准教授
本研究には、和歌山高専の学生・卒業生である、廣田主樹さん(現:東京大学大学院・在学中)、清水萌さん(現:県内・塾講師・経営)、中島理子さん(現:県内・公務員)、尾崎智大さん(和歌山高専・専攻科1年生)も参加し、次世代の研究者育成の観点からも大きな意義を持つ成果となりました。
なお、本研究成果は、スティアマルガ准教授が協力者として参画している、展示イベント「食の貝」(令和7年11月20日~令和8年3月31日、東京大学総合研究博物館スクール・モバイルミュージアムと東京都文京区が共催)でも取り上げられています。このイベントでは、貝が「食」になる背景を、標本と科学データの視点から学べる一般市民向けの内容が紹介されています。
論文へのリンクはこちらhttps://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666833525001510
「食の貝」へのリンクはこちら(展示企画:東京大学総合研究博物館・佐々木猛智准教授)
https://www.bunkyo-tky.ed.jp/ed-center/index.cfm/7,html
和歌山工業高等専門学校について
和歌山高専は、国立工業高等専門学校として1964(昭和39)年に設置された、和歌山県中南部における唯一の高等教育機関です。本科は知能機械工学科、電気情報工学科、生物応用化学科、環境都市工学科の4学科を有し、さらに、専門的なエンジニアを育成するためメカトロニクス工学専攻およびエコシステム工学専攻の専攻科が設置されており、本科約800名、専攻科約40名の計840名が在籍しています。エンジニアとしての素養を身につける基礎教育と、実践を重視した専門教育を効果的に行うことにより、工学を社会の繁栄と環境との調和に生かすための創造力と問題解決能力を身につけ、豊かな人間性と国際性を備えた人材の育成を目指します。
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和歌山高専 外観
【学校概要】
学校名:独立行政法人国立高等専門学校機構 和歌山工業高等専門学校
所在地:和歌山県御坊市名田町野島77
校長:井上 示恩
設立:1964年
学校ウェブサイト:https://www.wakayama-nct.ac.jp/
事業内容:高等専門学校、高等教育機関
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