患者にやさしい新規医薬品皮下投与法の開発

プレスリリース発表元企業:東京慈恵会医科大学

配信日時: 2025-12-05 10:22:09



~パイロドライブジェットインジェクターを用いた無針投与法の開発~

東京慈恵会医科大学・臨床薬理学講座の橋口 正行教授およびは志賀 剛教授らは、就実大学薬学部・薬物動態学研究室の清水 美貴子教授との共同研究により、パイロドライブジェットインジェクター(PIJ)を用いた、投与時の穿刺の恐怖感を軽減した患者にやさしい新規皮下投与方法を開発しました。

本研究は、従来の皮下注射が抱える「穿刺に対する恐怖感」といった課題を根本的に解消するものであり、既存の皮下注射製剤投与の概念を大きく変える革新的な技術です。本方法の導入により、患者の負担軽減だけでなく、治療継続性の向上や治療効果の最大化にも寄与することが期待されます。

本研究の成果は、2025年11月12日付で「Scientific Reports」誌に原著論文として掲載されました。

【本研究のポイント】

皮下注射は投与時の痛みや恐怖感を伴うことから、治療への抵抗感やアドヒアランス低下を引き起こし、結果として皮下注射製剤による薬物治療を断念せざるを得ない患者も存在します。
本研究では、注射針を使用しない「パイロドライブジェットインジェクター」という新規薬剤注入メカニズムを活用し、リウマチ治療薬のアンカードラッグであるメトトレキサートをモデル薬として、無針による新たな皮下投与方法を開発しました。
開発した新規投与方法は、ラットを用いた動物実験において、従来の皮下注射製剤と同等のバイオアベイラビリティ(BA)を示すことを明らかにしました。

バイオアベイラビリティ(BA):投与された薬物が体内にどの程度吸収され、利用可能となったかを示す薬物動態学的指標。吸収効率を評価する上で不可欠なパラメータ。

【研究の概要】
多くの疾患の治療において、皮下投与シリンジ製剤などが広く市販され、皮下投与法は一般的に利用されています。近年では、患者自身が投与可能な自己注射製剤も普及し、在宅医療の現場でも幅広く用いられています。

しかし、皮下注射は投与時の痛みや恐怖感を伴うことから、治療に抵抗感を示す患者も少なくなく、その結果、治療アドヒアランスが低下し、皮下注射製剤による薬物治療を断念せざるを得ないケースも存在します。

本研究では、従来の皮下注射製剤と同等のBAを示す新規投与法を開発し、既存の皮下注射に代わりうる新たな投与手段となる可能性を明らかにしました。穿刺を伴わない患者にやさしい投与法の実現は、これまで穿刺に対する恐怖感のために治療継続が困難であった患者に対して大きな助けとなるものです。

この新規投与法は、治療継続性の向上を通じて、将来的には治療効果および治癒率の向上に寄与することが期待されます。

【研究メンバー】
・東京慈恵会医科大学 臨床薬理講座 教授 橋口 正行
・東京慈恵会医科大学 臨床薬理講座 教授 志賀 剛
・就実大学薬学部薬物動態学研究室 教授 清水 美貴子

【論文情報】
Mikiko Shimizu, Tsuyoshi Shiga, Masayuki Hashiguchi. A new, patient-friendly, needleless methotrexate administration method using the pyro-drive jet injector in rats. Sci Rep. 2025 Nov 12;15(1):39599. doi: 10.1038/s41598-025-23302-6. PMID: 41225020


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