【いのち会議】~いのち宣言をつなぐ「100のアクション」~ 第24回「平時の仕組みを非常時にも活かすフェーズフリーな災害対応の社会をめざして」
プレスリリース発表元企業:いのち会議
配信日時: 2025-08-18 10:00:00
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平時の仕組みを非常時にも活かすフェーズフリーな災害対応の社会をめざして
様々な社会的課題のなかでも災害はある特殊性をもちます。環境問題・貧困・高齢化といった社会的課題は、あらゆるところに、いつも存在しているため、さまざまな活動が生まれやすく、問題のある法制度の改正を迫る世論も生じやすいです。しかし、災害はある地域にたまにしか起こらないため、活動や関心は一部の人や地域の問題にとどまりやすいです。このような「ある地域にたまにしか起こらない」という特性を持つ社会的課題である災害が頻発するのが、災害大国と呼ばれる日本です。災害大国であるのだから、当然、日本社会は災害対応が得意なのだと言いたいところですが、半分あたりで半分はずれです。得意なのはハード整備で、道路や河川、学校などは、災害でダメージを受けても壊れにくく、復旧することも基本的に得意です。しかし、日本社会は被災者支援が得意とは言えません。一例をあげると、よくある避難所の生活環境水準は、難民支援などの人道援助の国際基準をはるかに下回り、長い間、混乱が継続することもあります。
日本社会が防災・災害対応におけるハード整備を得意とする理由は簡単です。防災・災害対応におけるハード整備は、国や地方自治体が平時に実施している道路を整備したり学校を建てたりすることを、強化したり、早回ししたりしておこなっているからです。あらかじめ災害に備えたハード整備をするように促す法制度があり、いざ災害が起こると平時のプロが早回しして回復するのです。
日本社会が被災者支援を得意としない理由は、防災・災害対応におけるハード整備の真逆です。人の暮らしを支えるさまざまな財やサービスは、平時は営利の事業者が多数参画する「市場」、あるいは政府が資金を出すものの、サービスは利用者が選択する「準市場」を通して民間団体が供給しています(図)。
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/161447/52/161447-52-8103270ed3f96d972d57f4ce6528f593-1290x738.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図 被災者支援が混乱する制度構造
資料 菅野(2021)をもとに作成
(注 なお、2025年5月に成立した「災害対策基本法等の一部を改正する法律」では、災害対応に専門的な民間組織が自律的に参画可能となる「被災者援護協力団体の登録制度」が創設されるとともに、高齢者や障害者などへの対応を強化するために「福祉サービスの提供」が位置づけられ、政府が課題1・2への対応を進めることとなった。)
たとえば、食料を得ようと思えば人はスーパーマーケットやレストランに行くでしょうし、家を買ったり借りたりしようと思えば不動産会社に行くことが多いでしょう。しかし、災害時には基本的な支援者は行政、特に地方自治体になります。地方自治体職員から見れば大きな災害対応は一生に一度あるかないかの経験です。慣れない人が対応するのですからうまくいくわけはありません。これが災害大国日本で被災者支援の混乱が続く理由です。
「ある地域にたまにしか起こらない」災害は、人の暮らしのすべての面を襲うので、財やサービスを平時から供給している組織に、防災や災害対応に参画してもらうことが重要です。また使い慣れた法制度にあらかじめ防災や災害対応のことを規定しておき、実際に災害が起きたら使い慣れた法制度を用いて対応することも重要です。
身のまわりにあるモノやサービスを、平常時はもちろん、災害時にも役立てることができるように設計しておくという考え方を、「フェーズフリー」と呼びます。日本では、2018年に一般社団法人フェーズフリー協会が設立され、平常時と災害時の二分法から自由な世界の構築が進められています。災害に特別に備えることだけでなく、平時の法制度に災害時のことをあらかじめ規定することで、「フェーズフリーな法制度」に変えなければなりません。
いのち会議は、このことを念頭に置き、フェーズフリー協会などと協働して、民間企業・サードセクターの組織と協働しつつ政府・自治体に働きかけ、専門性をもつアクターが被災者支援を効果的に実施できるモデルとなる取り組みを実施し、災害に対応する仕組みが地域共生社会づくりの重要な要素であることを考慮しつつ、2030年までにフェーズフリーな法制度を全国に普及させることを目指します。
参考情報
・一般社団法人フェーズフリー協会https://phasefree.or.jp
・菅野拓(2021)『災害対応ガバナンス―被災者支援の混乱を止める―』ナカニシヤ出版
※本記事を含む「100のアクション」は、いのち会議の提言にて一覧掲載しています。ぜひご覧ください。https://inochi-forum.org/declaration-articles/
本記事に関する問い合わせ先
いのち会議 事務局、大阪大学 社会ソリューションイニシアティブ(SSI)特任助教(常勤) 宮崎 貴芳(みやざき たかよし)、教授 伊藤 武志(いとう たけし)
TEL: 06-6105-6183
E-mail: ssi2@ml.office.osaka-u.ac.jp
※取材の申し込みにつきましてはお気軽にご連絡ください。
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