関節リウマチ患者の歯周病治療における効果 病態による症状改善の差異と早期治療の重要性を発表
配信日時: 2025-03-27 10:00:00
~Medical Science Monitor誌に掲載~
大阪医科薬科大学とサンスターグループ(以下、サンスター)は共同研究により、歯周炎に罹患している関節リウマチ患者を対象に歯周病治療を実施し、関節リウマチの初期段階の患者に対する早期の歯周病治療が効果的であること、また歯周病原菌であるPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis)に対する血清抗体価※1が高い患者の方が歯周病治療による関節リウマチの改善効果が大きいことを明らかにしました。
本研究成果は、「第78回NPO法人日本口腔科学会学術大会」(2024年7月19日(金)~21日(日)、於:東京大学)にて発表され、大阪医科薬科大学・医学部口腔外科学教室の松尾朋佳(まつおともか)先生が新人賞を受賞しました。また、一連の成果は、2025年1月26日(日)に「Medical Science Monitor」に掲載され、オンラインでも公開されています。
<研究概要>
◆研究の背景・目的
近年の研究により、歯周病と関節リウマチは密接に関連しており、歯周病の治療が関節リウマチの病態を改善する可能性があることが明らかになっています。一方、どのような関節リウマチ患者に歯周病治療を行うことが効果的かは今まで明らかになっていませんでした。大阪医科薬科大学とサンスターでは、関節リウマチ患者の症状改善に役立てるため、関節リウマチ患者30名における歯周病治療の効果性とP. gingivalisに対する抗体価を評価することを目的にランダム化比較対照試験※2を行いました。
◆対象者属性と方法
本研究は、軽度から重度の歯周炎に罹患している関節リウマチ患者30名を関節リウマチの治療段階と、歯科での歯周病の治療開始時期に基づいて3つのグループに分けて実施し、関節リウマチの活動性(DAS28-CRP)※3を、研究開始時のベースラインと 3、6、9、12ヶ月後に評価し、グループ間で比較しました。さらに、P. gingivalisに対する血清抗体価をベースライン時に測定し、患者をそのレベルに基づいて3つのグループに分け、12ヶ月後の関節リウマチの活動性を比較しました。
※1: P. gingivalisは歯周炎の発症と進行のキーとなる病原菌として知られており、P. gingivalisの感染が起こると、この細菌に対する抗体が産生されるため、血液(血清)中の抗体価が増加します。この抗体価は、歯周病の重症度と関連していることが報告されています。
※2:参加者を無作為にグループ分けして実施する臨床試験です。患者も医師も振り分けられるグループを選ぶことができないため、治療の有効性を客観的に評価することができます。
※3:関節リウマチの活動性(DAS28-CRP)は、関節リウマチの疾患活動性を評価する項目のひとつです。28の関節について、痛みと腫れのある関節数(圧痛関節数・腫脹関節数)を評価し、患者さんご本人の痛みの程度(患者による全般評価)とC反応性タンパク質(CRP)の結果と合わせて計算します。DAS28-CRPが4.1より大きいと高疾患活動性、2.7-4.1で中疾患活動性、2.3-2.7で低疾患活動性、2.3未満で寛解と分類されます。
<研究結果>
1.関節リウマチの治療段階と歯周病治療の効果
関節リウマチの治療を開始する前の患者で治療開始と同時に歯周病治療を開始した患者(グループ A)は、関節リウマチの治療を開始する前の患者で治療開始から3ヶ月後に歯周病治療を開始した患者(グループ B)や関節リウマチの治療中の患者(グループ C)よりも、ベースラインから 3ヶ月後までの関節リウマチの活動性(DAS28-CRP)が大きく改善しました(図1)。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/5120/477/5120-477-2841f48fc29754e20fb8c80313f9e963-907x482.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
2.歯周病原菌P. gingivalisに対する抗体価と歯周病治療の効果
ベースライン時の P. gingivalis に対する血清抗体価で3つのグループ(L:低い、M:中程度、H:高い)に分け(図2)、ベースライン時と12ヶ月後について調べた結果、P. gingivalisに対する血清抗体価が高い患者の方が、低い患者よりも関節リウマチの活動性(DAS28-CRP)が大幅に改善しました(図3)(図4)。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/5120/477/5120-477-4c0fda237372319013e7d9d1e3da1849-996x488.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
<結論>
関節リウマチの初期段階の患者に対して早期からの歯周病治療が効果的であること、関節リウマチの治療段階に関わらずP. gingivalisに対する血清抗体価が高い患者において歯周病治療による関節リウマチの改善効果が大きいことが判明しました。この結果は、関節リウマチの治療において特に歯周病治療が有効な患者を、血液を用いた簡単な検査でスクリーニングできる可能性を示唆しています。大阪医科薬科大学とサンスターは、これからも医科歯科連携と健康寿命の延伸につながる、お口と全身の健康について研究を行ってまいります。
<研究結果に関するコメント>
大阪医科薬科大学 医学部口腔外科学教室 教授(歯科口腔外科)植野高章(うえのたかあき)先生
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/5120/477/5120-477-db4b0eab84e69dd368795694ea98510e-834x870.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
関節リウマチ(以下RA)の重症化に歯周病菌Porphyromonas gingivalis(以下P.G.菌)が深く関与することは古くから知られていました。しかし、歯周病治療介入がRA患者の治療改善にどのような影響をあたえるのかについての明らかな知見はありませんでした。
われわれは、大学病院で治療を開始するRA患者の血清P.G.菌抗体価を測定し、歯周病治療を行うことによるRA治療効果DASCRPの評価を本院の膠原病内科と共同で前向き介入研究として行いました。その結果、血清P.G.菌抗体価が高い患者に対する早期の歯周病治療介入が、DASCRPを有意に改善することが明らかとなりました。
この結果は、RA患者の治療時には、早期に口腔ケアを実施する医科歯科連携が大切であることを示す大変に貴重な研究成果です。令和4年歯科疾患実態調査(厚生労働省)では全年齢層において2人に1人が歯周病に罹患し、高齢になるほどその割合が高くなることを報告しています。P.G.菌は、歯の周りや舌などの口腔粘膜でバイオフィルムを形成します。歯ブラシだけでは簡単に除去できないため専門的口腔ケアが必要です。また、P.G.菌は、動脈硬化、糖尿病、認知症との関与も広く知られています。今回の研究成果が、高齢者が増加する日本での疾患治療効果向上や予防に医科歯科連携が重要であることのエビデンスにつながれば幸甚です。
大阪医科薬科大学 医学部内科学IV教室 教授(リウマチ膠原病内科)武内徹(たけうちとおる)先生
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/5120/477/5120-477-12ab0996cc71c146e3e38203512585d2-997x1281.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
近年、歯周病と関節リウマチとの関係が注目されています。関節リウマチ患者では手指の機能障害による口腔衛生不良や免疫抑制剤の使用による易感染性などにより歯周病を併発しやすくなります。一方、関節リウマチ患者では、抗シトルリン化蛋白質に対する自己抗体(ACPA)が検出されますが、P. gingivalisはシトルリン化酵素を産生する細菌で、同酵素による過剰なシトルリン化蛋白の産生を介してACPAの産生や関節リウマチの発症の契機となる可能性が示唆されています。本研究から関節リウマチの初期治療において歯周病治療を早期から追加することで関節リウマチの疾患活動性がより早く改善することが明らかになりました。特に歯周病の病態を反映するP. gingivalis血清抗体価が高いほど、歯周病治療の追加がRA治療にも好影響を与えることが分かり、歯周病の制御が関節リウマチにおいても重要であること示唆されました。
<論文掲載情報>
・タイトル: Impact of Periodontal Treatment on Early Rheumatoid Arthritis and the Role of Porphyromonas gingivalis Antibody Titers
・著者: Yoichiro Nakajima, Nahoko Kato-Kogoe, Takako Yasuda, Rika Urakawa, Tomoka Matsuo, Michi Omori, Takaaki Ueno, Tohru Takeuchi
・掲載誌: Medical Science Monitor https://medscimonit.com/abstract/index/idArt/947146
・DOI: 10.12659/MSM.947146.
【大阪医科薬科大学医学部 口腔外科学教室について】
大阪医科薬科大学 医学部 口腔外科学教室は、大阪府高槻市にあり北摂の歯科口腔外科医療の中核を担っています。口腔健康と全身の関係の解明に力をいれており、口腔内細菌叢と動脈硬化(循環器内科と連携)、糖尿病(糖尿病内科と連携)の関係など、口腔を通じて健康寿命への貢献に高い研究実績を持ち、シンガポール、台湾など海外との共同研究も積極的に推進しています。一方で、口腔機能再建にも力をいれており、歯や顎骨を喪失した患者のインプランテーション咬合機能回復を通じ全身健康回復への研究や医療機器実用化などの実績を持つ教室です。
【サンスターグループについて】
サンスターグループは、持株会社サンスターSA(スイス・エトワ)を中心に、オーラルケア、健康食品、化粧品など消費者向けの製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・スイスSA(スイス)と、自動車や建築向けの接着剤・シーリング材、オートバイや自動車向け金属加工部品などの産業向け製品・サービスをグローバルに統括するサンスター・シンガポールPte.Ltd.(シンガポール)を中核会社とする企業グループです。
100年mouth100年health 人生100年時代、サンスターが目指すのは、お口の健康を起点とした、全身の健康と豊かな人生。毎日習慣として行う歯みがきなどのオーラルケアは、お口の健康を守り、そして全身の健康を守ることにもつながっています。
100年食べ、100年しゃべり、笑う。一人ひとり、自分らしく輝いた人生、豊かな人生を送るためにも、お口のケアを大切にしていただきたいと考えています。今後もお口の健康を起点としながら全身の健康に寄与する情報・サービス・製品をお届けすることで、人々の健康寿命の延伸に寄与することを目指していきます。
[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/5120/477/5120-477-702c5631c37679a8bdf1088788ab2836-444x296.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
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