【東芝デジタルソリューションズ】世界初、30Tbps超の大容量データと暗号鍵を多重伝送する量子鍵配送技術の実証に成功

プレスリリース発表元企業:株式会社 東芝

配信日時: 2025-03-26 17:44:14





~O帯を活用し従来比3倍に大容量化、データセンター間通信での活用を目指す~



2025-3ー26

株式会社KDDI総合研究所
東芝デジタルソリューションズ株式会社


世界初、30Tbps超の大容量データと暗号鍵を多重伝送する
量子鍵配送技術の実証に成功
~O帯を活用し従来比3倍に大容量化、データセンター間通信での活用を目指す~



 株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下 KDDI総合研究所)と東芝デジタルソリューションズ株式会社(本社:神奈川県川崎市、取締役社長:島田 太郎、以下 東芝デジタルソリューションズ)は、盗聴が不可能な量子鍵配送方式(以下 QKD方式)(注1)の暗号鍵をC帯(注2)に、大容量データ信号をO帯にそれぞれ割り当て、1心の光ファイバーで多重伝送する技術(以下 本技術)を、開発しました。また、本技術を用いて、QKD方式の暗号鍵と33.4Tbpsの大容量データ信号を80km伝送することに、世界で初めて成功しました(注3)。
 これまで、QKD方式を活用した通信の実用化に向け、暗号鍵を伝送する専用の光ファイバーをなくすことを目的に、データと暗号鍵を1心の光ファイバーで伝送する技術が開発されてきましたが、伝送データが暗号鍵にノイズとして干渉するため、大容量データを伝送することが困難でした。本技術により、1心の光ファイバーで従来以上に大容量通信ができるため、QKD方式の導入・運用コストを大幅に削減することが可能となり、データセンター間の通信などでの早期実用化が期待されます。




[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1398/106740/600_321_2025032617281467e3ba9e3e84b.jpg


<本技術の概要:光ファイバー1心による大容量データと暗号鍵の多重伝送>



 今回の成果は、2025年3月30日から4月3日まで開催される光通信技術に関する世界最大の国際会議OFC2025(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)の技術論文として報告します(注4)。
 今後、データセンター間通信では大容量化とともに機密性の高い情報をサイバー攻撃から守るセキュリティ対策の重要性がますます高まります。KDDI総合研究所と東芝デジタルソリューションズは引き続き、大容量かつセキュアな通信サービス実現に向けた研究開発を進めます。


■ 背景
 6G時代には、AIやIoTの普及により、現在よりもはるかに膨大で多様なデータがネットワークを流通することが想定され、ネットワークを支える光ファイバー通信の伝送容量のさらなる大容量化が不可欠です。また、さまざまな認証で使われる生体情報や個別化医療に必要なゲノム情報など、機密性が極めて高い情報の伝送も将来的に増えることが予想され、大容量かつセキュアなデータ通信サービスが期待されています。伝送されるデータをサイバー攻撃から守るため、現在、計算困難性に基づく暗号(注5)が用いられていますが、将来的に量子コンピューターによって短時間で解読されてしまうことが懸念されています(注6)。
 そのため、暗号鍵を安全に伝送できるQKD方式が注目されています。QKD方式は、盗聴しようとすると量子の状態が必ず変化する、という量子力学の原理によって盗聴の検知が可能なため、暗号鍵の盗聴および暗号化されたデータの解読は不可能であり、安全性が保証されています。
 一方で、微弱な光を用いるQKD方式は、近接する波長の光により生じるノイズを受けてしまうため、QKD方式を利用するには暗号鍵を伝送する専用の光ファイバーが必要になり、導入・運用コストが課題になっています。
 この課題を解決するため、異なる波長を用いて、QKD方式の暗号鍵とデータ信号を光ファイバー1心に多重し、伝送する技術が研究されていますが、データ伝送の大容量化と長距離化の両立は困難でした。データ伝送の大容量化はQKD方式に与えるノイズを大きくし、長距離化はQKD方式が受けるノイズの影響を強めるためです。
 また、KDDI総合研究所は、現在広く使用されているC帯やL帯だけでなく、超広帯域なO帯で大容量のデータを伝送する技術を開発してきました(注7)。

■ 今回の成果
 今回、O帯で伝送するデータ信号が、C帯で伝送するQKD方式の暗号鍵へ与える影響を分析・評価し、O帯伝送の光パワーや帯域幅を最適化しつつ、伝送後のO帯データ信号を増幅器で適切に増幅するパラメータを特定しました。これにより、QKD方式の暗号鍵を伝送損失が少ないC帯で、大容量データ信号を超広帯域なO帯で多重伝送し、光ファイバー1心でQKD方式の暗号鍵と33.4Tbpsの大容量データ信号を、80km伝送することに成功しました。
 この成果は、QKD方式の暗号鍵とデータ信号の両方をC帯で多重伝送する従来技術(注8)に比べて、伝送容量においては約3倍、伝送容量と伝送距離の積で示す伝送性能指数(容量距離積)においては約2.4倍高い性能となります。



[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1398/106740/600_311_2025032617281667e3baa0e8a02.jpg


<従来方式との伝送容量・伝送距離の比較>



■ 各社の役割

[画像3]https://digitalpr.jp/table_img/1398/106740/106740_web_1.png


(注1)量子鍵配送(QKD: Quantum Key Distribution)方式とは、量子力学の原理を用いた通信により、暗号鍵を秘密裏に共有する方式。光のパワーを微弱にすることで、光の量子性が顕在し、量子力学における不確定性原理および量子複製不可能定理によって、光をコピーすることが不可能になるとされています。この光に暗号鍵を埋め込んで伝送することで、盗聴の可能性が排除された安全な暗号鍵を共有できることが証明されています。
(注2)C帯は光の波長が1530-1565 nmの範囲(帯域 約4.4 THz)であり、光ファイバーの伝送損失が最も低いことから長距離伝送システムに広く用いられています。O帯は光の波長が1260-1360 nmの範囲(帯域 約17.5 THz)であり、伝送損失がC帯よりも大きいものの、約4倍広い帯域を有します。
(注3)2025年3月26日時点 KDDI総合研究所調べ。
(注4)”Coexistence Transmission of 33.4-Tb/s O-band Coherent Classical Channels and a C-band QKD Channel over 80 km,” Tu3D, April 1, 2025
(注5)現在の通信ネットワークでは、通信の内容を秘匿するための暗号鍵を交換する技術として、公開鍵暗号が用いられています。これらの公開鍵暗号は、解読に必要な計算量の大きさが安全性の根拠となっています(計算量的安全性)。
(注6)量子コンピューターにより、RSAや楕円曲線暗号等の公開鍵暗号が高速に解読される危険性を指摘されています。
(注7)2023年5月18日 KDDI総合研究所 ニュースリリース
超広帯域活用で光ファイバ通信の大容量化を実現、O帯コヒーレント高密度波長多重伝送実験に世界で初めて成功
~機器構成は従来比2分の1に。データセンタ間通信の低消費電力化も期待~
https://www.kddi-research.jp/newsrelease/2023/051801.html
(注8)従来の暗号鍵とC帯データ多重を用いた長距離伝送(80km以上)における最大の伝送容量は、下記の論文における11 Tbpsとされています(2025年3月26日時点 KDDI総合研究所調べ)。
T. Dou et al., “Coexistence of 11 Tbps (110×100 Gbps) classical optical communication and quantum key distribution based on single-mode fiber”, Optics Express, vol. 32, no. 16, July, 2024.


・東芝の量子暗号通信
https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/security-ict/qkd.html

*本文章に記載されている社名および商品名はそれぞれ各社が商標または登録商標として使用している場合があります。
*ニュースリリース/トピックスに掲載されている情報(サービスの内容/価格/仕様/関連リンク/お問い合わせ先など)は、発表日現在の情報です。予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
*東芝デジタルソリューションズ株式会社は株式会社東芝の100%子会社です。



プレスリリース情報提供元:Digital PR Platform