令和6年度『第44回伝統文化ポーラ賞』が決定!!
配信日時: 2024-07-17 10:00:00
~無形の伝統文化の発展に貢献された工芸・芸能分野の8件が受賞~
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優秀賞:渡辺 晃男(わたなべ あきお)
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優秀賞:鵜澤 久(うざわ ひさ)
公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団(理事長 小西尚子)は、顕彰事業の一環である『伝統文化ポーラ賞』の令和6年度各受賞者を決定しました。今年は優秀賞2件、奨励賞1件、地域賞5件の合計8件を表彰します。伝統文化ポーラ賞は、伝統工芸技術、伝統芸能、民俗芸能・行事など、無形の伝統文化の分野で貢献され、今後も活躍が期待される個人・団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを目的としており、今年度で44回目を迎えます。昭和56年の第1回目から今年で延べ360名の方が授賞されることになります。なお、贈呈式は12月11日(水)に「ザ ・ペニンシュラ東京」にて執り行う予定です。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/63139/table/42_1_6509a1e0580b9bf2a8cb45837d4f2680.jpg ]
■表彰内容
1)優秀賞 賞牌・賞状・副賞(100万円)
永年努力精進され、優れた業績を残して今後とも一層の業績を挙げることが期待でき、後進の指導・育成においても継続的に努力し実績を上げている個人または団体。
2)奨励賞 賞状・副賞(50万円)
将来に向けて、大きな業績を挙げ、成長の可能性が期待できる比較的若い個人または団体。
3)地域賞 賞状・副賞(50万円)
地域において永年地道に努力され、優れた業績を残して今後も継続・発展が期待でき、後進の指導・育成にも努めている個人または団体。
■ポーラ伝統文化振興財団について
「本当の美しさは、内面の美や心の豊かさを伴ってこそ初めて実現する」という想いの下、
豊かな社会と文化の向上に寄与すべく、1979年に設立。日本の優れた伝統工芸技術、伝統芸能、
民俗芸能・行事などの無形の文化財を対象に、保存・伝承・振興の活動を行っている。
【伝統文化ポーラ賞・ご取材に関するお問い合わせ】
公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団 事務局 鈴木(c_suzuki@polaculture.or.jp)
〒141-0031 東京都品川区西五反田2-2-10 ポーラ第2五反田ビル3階
TEL:03-3494-7653(平日10時~17時、土日祝は除く)
FAX:03-3494-7597
HP:https://www.polaculture.or.jp
YouTube:https://www.youtube.com/@polaculture/videos
Facebook:https://www.facebookcom/polaculture.or.jp
優秀賞:渡辺 晃男 「木工芸の制作・伝承」■ 受賞内容について
渡辺晃男氏の作品を見る時、まず見事な「指物」の技術に目を奪われます。指物とは、組み手を見せず、金釘を使用することなく組み立てられた木工品のこと。室町時代以降には、武家の調度品や、茶の湯で使用する箱物類で需要が増えたことから、大工ではない専門の指物師が生まれました。氏はこの指物を、黒柿や神代欅、楓などの表情豊かな木目を持つ材料を駆使して制作。
そこに、象牙、夜光貝、玳瑁(たいまい)、染角等を象嵌(ぞうがん)することで、エキゾチックで浪漫的な作品に仕上げます。作品には、氏によって組み合わされた素材それぞれの経年の美が折り重なり、悠然と流れる歴史を感じさせる煌びやかさが宿ります。
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令和6年 工房で黒柿の材料を観る(撮影:川崎 了)
工程の一部では機械も使用するものの、やはり重要となるのは、手作業で進める多様な工程。象嵌の細かな細工や、それを埋め込むための彫り、仕上げなどは、職人の手指の感覚で調整を進めます。伝統に基づいた確固たる技術で、木の持つ美しさを最大限に引き出していることと、その技術の継承に多大な貢献をしていることが評価され、今回の受賞となりました。
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第61回日本伝統工芸展 東京都知事賞 「黒柿有線寄木象嵌箱」(撮影:ニューカラー印刷)
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第65回日本伝統工芸展 東京都知事賞 「黒柿蘇芳染嵌荘箱『西方の風』」
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渡辺 晃男 氏
■渡辺 晃男(わたなべ あきお)プロフィール昭和28年、千葉県生まれ。昭和50年、千葉大学木材工芸科を卒業し、本多廣吉氏に師事。昭和58年より佐藤豊樵氏に師事。昭和59年に伝統工芸新作展に初入選。昭和61年、日本伝統工芸展に初入選し、同年に木夢工房を開設した。日本伝統工芸展での2度の東京都知事賞(平成26年、30年)や、伝統工芸木竹展 東京都教育委員会賞(平成25年)、東日本伝統工芸展での2度の優秀賞(平成23年、25年)等、多数の受賞歴がある。令和元年に紫綬褒章を受章した。
優秀賞:鵜澤 久 「能シテ方の演技・振興」■受賞内容について
観世流能楽師の鵜澤 久氏は、昭和24年、鵜澤 雅(観世流職分)の長女として生まれました。3歳で初舞台、13歳で初シテを勤め、やがて希代の名手観世寿夫、八世(先代)観世銕之亟に師事し、現在まで能楽師の修業にひたすら精進してきました。また、恩師観世寿夫の演劇観に学ぶ新作能、現代演劇の舞台にも意欲的に出演して活動するだ
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令和5年10月9日 鵜澤雅二十七回忌追善能「姥捨」
けでなく、北米・カナダ等の大学の招聘による公演・ワークショップを実施するなど、その幅広い活動は国内外で高く評価されています。令和5年2月には、横浜能楽堂企画公演「能役者 鵜澤久」で老女物の大曲「卒都婆小町」を勤め、難曲を淡々と、かつ情熱的に表現し、観客を堪能させました。さらに
同年10月には、「第23回鵜澤 久の会」(宝生能楽堂)において、能の秘曲とされる「姨捨(おばすて)」(三老女の一曲)を披曲(初演)し、存在感のある老女の深い演技は、人びとに大きな感動をもたらしました。芸歴70年余、能役者のあるべき身体を探りながらの求道の精進が高く評価され、今回の受賞となりました。
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第23回ひたち能と狂言 「石橋 師資十二段之式」 白獅子:鵜澤 久 赤獅子:鵜澤 光
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鵜澤 久 氏
■鵜澤 久(うざわ ひさ) プロフィール昭和24年生まれ。3歳で初舞台、13歳初シテ。「乱」(昭和47年)、「石橋」(昭和49年)、「道成寺」(昭和57年)、「卒都婆小町」(平成18年)、「鸚鵡小町」(平成25年)、「檜垣」(平成29年)、「姨捨」(令和5年)披曲。また、新作能「望恨歌」(平成31年)、復曲能「名取ノ老女」(令和3年)。聖心女子学院卒業、東京藝術大学邦楽科、同大学院修了(在学中安賞)。平成十六年重要無形文化財「能楽」(総合指定)保持者(日本能楽会会員)。平成十七年川崎市文化賞・市民文化大使拝命。
平成三十年観世寿夫記念法政大学能楽賞。
現在、(公社)銕仙会理事、鵜澤久の会主宰。
奨励賞:坂井 直樹 「金工の制作」■受賞内容について
火をあてて柔らかくした金属を、叩いてかたちづくる鍛金(たんきん)。坂井直樹氏は主にこの鍛金を用いて制作をする金属造形作家です。氏が大切にしているのは、「実用性と美の共存」。見て美しく、使って生活に馴染む金工作品とはどのようなものかを考え、現代社会の中でだからこそ生み出す美を探求し続けています。繰り返し叩き、細部まで丹念に仕上げを施すことで、氏の作品は独自の美しいフォルムを生み出します。地元である金沢で先人たちの技術に触れながら、自身の創作活動も精力的におこなうほか、現在は東北芸術工科大学の准教授として後進の育成にも力を注いでいます。
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鍛金作業風景
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令和4年 鉄瓶作品「湯のこもるカタチ」
■坂井 直樹(さかい なおき) プロフィール昭和48年、群馬県生まれ。平成15年、東京藝術大学大学院博士後期課程鍛金研究室修了、博士学位取得。金沢卯辰山工芸工房にて研修、同工房の専門員を経て、平成31年より東北芸術工科大学美術科工芸コース准教授。
地域賞:葛尾祭典組「葛尾三匹獅子舞の保存・伝承」
■受賞内容について
福島県浜通りに位置する双葉郡葛尾(かつらお)村。上葛尾・下葛尾に伝わる「葛尾三匹獅子舞」は、東日本一帯に伝わる三匹獅子舞の一つです。この芸能は、元禄時代、「葛尾大尽」といわれた松本三九郎が再興したとされる獅子舞であり、古くは牛頭天王が祀られていた日山神社に奉納され、五穀豊穣や疫病退散などを祈念する行事として受け継がれてきました。「庭入り」から「納め舞」まで、12の舞で構成されており、雄獅子(太郎・次郎)と雌獅子の他に、岡崎と呼ばれる道化が登場します。東日本大震災以降は仮設住宅で舞うなど、困難の中でも地域の復興と密接に関わり、懸命な努力を重ね、今日まで受け継いできました。地元の誇るべき伝統文化を絶やさないため、弛まぬ努力と、情熱に支えられて受け継がれた獅子の妙技が評価され、今回の受賞となりました。
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日山神社秋季祭礼(下葛尾集会所)
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平成30年10月6日 平成30年度葛尾祭典組
■葛尾祭典組 (かつらおさいてんぐみ) の紹介
昭和48年に村指定無形民俗文化財となった葛尾三匹獅子舞は、葛尾祭典組によって伝承されている。震災前は日山神社・磯前神社の例祭で奉納されていたが、震災後は「かつらお感謝祭」などのイベント時に奉納されている。
地域賞:北川崎自治会 「北川崎の虫追いの保存・伝承」■受賞内容について
虫追いは、稲虫、すなわち稲にむらがる虫を追い払うもので、各地に多彩な伝承として根付いています。北川崎の虫追いもまた、虫追いの風習を今日に伝える行事として受け継がれてきました。この行事は川崎神社において、毎年7月24日に行われるもので、江戸時代より続く伝統ある行事です。麦わらを束ねた松明を持った人々をはじめ、提灯を持つ役、そして鉦と太鼓を担当する役が行列となりゆっくりと歩きます。「稲の虫ホーイホイ」という情緒豊かな掛け声によって稲につく害虫を地区の境まで追い払い、併せて豊作を祈念します。美しい田園風景に夜の帳が下り、薄暗くなったあぜ道に連なる松明の灯、鉦や太鼓の音。古の人々の祈りを今日まで届ける貴重な虫追いの風習を守り、次世代に受け継ぐ姿勢が評価され、今回の受賞となりました。
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行列が歩き始めたところ(令和5年7月24日)
■北川崎自治会(きたかわさきじちかい)の紹介
昭和52年に県指定無形民俗文化財とされた北川崎の虫追いは、北川崎自治会が中心となり伝承されている。地元の新方小学校の生徒たちをはじめとした多くの参加者に松明作りを伝授するなど、後継者の育成にも尽力している。
地域賞:宇原獅子舞保存会「宇原獅子舞の保存・伝承」
■受賞内容について
宍粟(しそう)市山崎町宇原(うはら)に伝わる「宇原獅子舞」は、幕の中に二人が入る二人立の獅子舞の系統に属し、獅子頭と前足を担当する演者と、後ろ足を担当する演者の息のあった動きが、獅子に魂を吹き込みます。毎年、宇原の天神様と宇原岩田神社にて奉納されるこの芸能は、使用する太鼓の内側に万治3年(1660年)の銘があり、古くから演じられてきた由緒正しき芸能であることがわかります。獅子の毛には馬のたてがみを使用し、雄獅子が黒・白・茶の三種、雌獅子が黒・白・茶・赤茶の四種を使用します。近年は「子獅子」を新たに制作するなど、地域の子どもたちの参加を推進する取り組みにも尽力しています。また、他地域からの参加や、女性の参加を積極的に受け入れるなど、後継者育成を活発に行なっている点も評価され、受賞となりました。
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神事として2頭で舞う宮入(令和5年10月 宇原岩田神社)
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宇原獅子舞保存会集合写真(令和4年10月)
■宇原獅子舞保存会(うはらししまいほぞんかい)の紹介
宇原獅子舞(昭和62年、宍粟市無形民俗文化財指定)を伝承する宇原獅子舞保存会は、宇原獅子舞を活かした地域おこしと地域貢献」を理念として掲げ、伝承活動に取り組んでいる。オンライン指導なども推進し、会員数も増加している。
地域賞:菊地 孝 「泉貨紙の保存・伝承」■受賞の内容について
泉貨紙(せんかし)の歴史は古く、そのルーツは約400年前の天正年間、戦国時代まで遡ります。この紙は目の粗い簀(す)と、目の細かい簀で漉いた紙を1枚に合わせた強靭な和紙で、「泉貨居士」と呼ばれる兵頭太郎左右衛門通正によってその製法が発明されました。今の愛媛県西予市野村町で多く作られ、京都や江戸まで運ばれて公家や武家で重宝されました。
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泉貨紙を漉く作業場風景
菊地孝氏は代々この紙の手漉きを生業とする菊地家の7代目です。2枚の紙を合わせることで強度を持たせる泉貨紙ですが、氏の製法では桁(けた)の上に目の粗さが違う2枚の簀を上下に並べて置き、同時に漉いてから合わせることで、より強度の高い作品を生み出しています。また、その強靭さから、東大寺二月堂・お水取りの練行衆着用の「紙衣」(かみこ)にも使用されています。現在、代々泉貨紙を製造しているのは、全国で菊地家のみとなり、その技術の保存伝承への尽力が評価され、今回の受賞となりました。
[画像18: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/63139/42/63139-42-126d5110cd7598b815006187af244df5-2449x1632.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
菊地 孝 氏
■菊地 孝(きくち たかし)プロフィール代々泉貨紙の手漉きを生業とする、菊地家の7代目。現在、泉貨紙の製造を代々伝承し続けているのは全国で菊地家のみとなり、菊池氏はその技術の保存伝承に努めている。平成13年にえひめ伝統工芸士に認定、平成22年には現代の名工に選出された。
地域賞:真栄城 興茂 「琉球の絣織の制作・伝承」■受賞内容について
琉球藍はキツネノマゴ科の多年草植物で、一般的な藍(蓼藍)とは違う植物です。この琉球藍を使った藍染の歴史は、今から400~500年前まで遡り、王族から庶民まで広く衣料に用いられました。真栄城興茂氏はこの歴史を踏まえ、琉球藍を王族から庶民まで誰もが似合う色だと捉えます。そして、自らの手で琉球藍を育てるところから手掛けたいと、産地である本部町伊豆味に工房を構え、泥藍を作り、それを使って手作業で染め上げた糸で織る、草木染め絣織物「琉球美絣」を制作しています。真栄城氏の作品は、研究された沖縄伝統の絣柄と、氏の感性が織り交ぜられた、現代的でありながらも気品ある絣を実現しています。平成27年から令和3年まで、沖縄県立芸術大学の教授を務めるなど、後進の育成にも尽力しており、その制作と伝承に対し今回の受賞となりました。
[画像19: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/63139/42/63139-42-88da0c94f33e59b94e169fc551a4be01-2152x2700.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
第59回日本伝統工芸展入選作品 平成24年制作 木綿 琉球藍 絣織着物「潮」
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真栄城 興茂 氏
■真栄城 興氏(まえしろ おきしげ)プロフィール 昭和30年、那覇市生まれ。昭和57年に沖展で初入選以降、同展で多数受賞。平成6年日本伝統工芸展 文部大臣賞、平成8年日本伝統工芸染織展 文化庁長官賞、等受賞歴多数。平成27~令和3年沖縄県立芸術大学 工芸専攻織分野教授を務めた。
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