15歳からの高専生が強い鉄づくりの技術を競うマテリアルコンテストを新たに開催〜強靭な鉄づくりの原点を体感する〜

プレスリリース発表元企業:独立行政法人国立高等専門学校機構

配信日時: 2023-10-26 13:00:00

15歳からの高専生が強い鉄づくりの技術を競うマテリアルコンテストを新たに開催〜強靭な鉄づくりの原点を体感する〜


 独立行政法人国立高等専門学校機構 久留米工業高等専門学校(福岡県久留米市、校長:松村 晶 以下「久留米高専」)は、高専マテリアルコンテストを開催します。第1回となる今回のコンテストでは、「鉄の強靭化」をテーマとしています。材料科学を勉強し始めたばかりの若い高専生が、高専が有する豊富な専門実習施設を活用して、衝撃に強い鉄を作ることに挑戦します。今回は、佐世保高専、鈴鹿高専と久留米高専の3高専の学生がチームを組んで競い合います。最終決戦は2024年3月11日、12日に久留米高専で開催を予定していますが、それまでに調査検討の成果の発表なども行います。将来は参加校を増やして、既存のロボットコンテストやプログラミンコンテストに匹敵する全国的な高専生コンテストに成長させていく計画です。

◆コンテストを行う背景

 高専のものづくり教育は充実した実験実習と専門教育の座学に加えて、その技術と知識知見を活用したコンテストにより学生の創造性と技術の向上が図られてきました。高専ロボットコンテストや高専プログラミングコンテストなどはよく知られています。これらに加えて、新たに材料工学と材料科学にフォーカスした高専マテリアルコンテストを始めます。
 第1回となる今回のテーマは「鉄の強靭化」です。人類は、古くから鉄鋼を素材として文明社会を築き上げてきました。現在でも、鉄をはじめとする素材産業は、日本の製造業GDPの約1割を占める重要な基幹産業です。なぜ鉄鋼がそのように広く利用されるかの最大の理由は、鉄に熱を加えたり冷やしたり、さらにはさまざまな加工を施すことで、硬さや伸びやすさなどの力学性質が大きく変わるためです。人類は長い時間をかけて経験的に鉄鋼が持つこの特異な性質に気づいて古くから利用してきました。しかし、その原因が科学的に理解され始めて材料科学が生まれたのは、今から100年にも満たない近年になってからです。
 本コンテストでは、材料科学を勉強し始めたばかりの若い高専生が、高専が有する豊富な専門実習施設を活用して、衝撃に強い鉄を作ることに挑戦します。若い学生が手と頭をフル活用して、試行錯誤をしながら目では直接見えない鉄の中の変化に取り組む過程には、産みの苦しみと喜びを味わいながら思いがけない新たな発見に素直に目を輝かせる高専生の姿が随所に見られるでしょう。
 カーボンニュートラルにも大きく貢献するこの重要な分野においても、少子高齢化が進む中での人材確保と人材育成は課題です。そこで先人たちが心おどらせて取り組んできた純粋で根源的なものづくりの芽である材料とその加工技術への疑問と好奇心を、若い世代の高専生に感じてもらうべく、このコンテストを企画しました。


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◆コンテストへの道のり

 参加高専には、久留米高専から同一の化学組成を有する鉄丸棒を配布します。その鉄棒に対して、各チームが自由に鍛造などの加工や熱処理を施して強靭化を行います。2024年3月11日・12日に予定される最終決戦当日は、各チームが用意した材料に対して衝撃破壊試験を行います。外部から有識者の方もお招きして、破壊に必要なエネルギーの大きさと強靭化の工夫についてのプレゼンテーションの両方を加味し、チームで点数を競い合います。


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 本コンテストのキックオフイベントを2023年9月4日、5日に久留米高専において行いました。キックオフイベントには久留米高専に加え、独立行政法人国立高等専門学校機構 佐世保工業高等専門学校(長崎県佐世保市  校長:中島 寛 以下「佐世保高専」という。)と独立行政法人国立高等専門学校機構 鈴鹿工業高等専門学校(三重県鈴鹿市 校長:竹茂 求 以下「鈴鹿高専」という。)から教員と学生が参加しました。15歳から22歳までの年齢、学科、学校を超えて学生が集まりました。イベントでは、久留米高専の実習工場見学、鉄の強化方法の簡単なレクチャーと実験、論文調査と論文発表、鍛造実習体験、衝撃破壊体験を2日間にわたって行いました。国立研究開発法人物質・材料研究機構から津﨑兼彰氏をお招きして、材料工学としての壊れ方の面白さ、加工によって粘り強くなることの面白さを伝えて頂きました。高専毎に実習内容は異なります。久留米高専のように自由鍛造実習を行なっている高専は珍しいため、参加した他高専の学生からは貴重な体験になったとの感想をいただきました。


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◆キックオフイベントに参加した学生の感想

・「論文調査では知らない用語ばかりで固まってしまいました。でも先輩方を見て、私も学習したことを理解して応用できるようになりたいと思い、勉強のモチベーションになりました。」(久留米高専 材料システム工学科1年生)
・「鋳造があれだけ大変ということを知れて良かったです。材料によって裂け目が違ったので面白かったです。木だけしかスローモーションの動画が撮れなくて悔しかった。」(久留米高専 材料システム工学科1年生)
・「授業で習った内容を実際に体験することで、現場と机上の難しさの違いを知れた点がよかったです。」(久留米高専 材料システム工学科3年生)
・「鉄は冷やしたら二つに割れるのにアルミニウムは割れないところがびっくりしました。」(久留米高専 材料システム工学科3年生)
・「とても貴重な体験になりました。自分でも調べてみようという意欲が沸きました。」(久留米高専 材料システム工学科3年生)
・「論文調査で初めて知ったことがあって、班のみんなと協力して作業できたのは良かったです。衝撃破壊試験ではスローカメラで鉄の試験片が壊れる瞬間を見たかったです。」(佐世保高専 専攻科1年生)
・「私の高専には無いもの機会が沢山あって面白いと感じました。鍛造は人生で一度しかできない貴重な経験が出来たと思います。」(鈴鹿高専 専攻科1年生)


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◆今後の予定

 キックオフイベント後、2023年10月初旬に参加高専に今回のテーマとなる「鉄の強靭化」に向け、鉄丸棒の材料を配布しました。久留米高専では、日本刀の作成手法として広く知られる鍛造(鉄を熱して叩いて強くする手法)に着目した鉄の強靭化の実験実習を行っています。学生は鉄を鍛造する温度を変えて、どのくらい粘り強くできるのか?どのように壊れるか?など自由な発想で試行錯誤しています。


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 また、2023年11月2日に大分県別府国際コンベンションセンターで開催される水素フォーラムで、マテリアルコンテストに参加した久留米高専の学生が発表します。これまでの活動の様子と感想を記録したポスターと、鉄を鍛造する条件とどのくらい粘り強くできたか?その中間報告を行います。翌3日の大分ハイドロエキスポでは本コンテストの企画担当者である久留米高専 材料システム工学科 佐々木大輔助教から、「水素と材料のおはなし」をテーマに水素エネルギー社会におけるものづくり人材育成とマテリアルコンテストの役割について紹介いたします。こちら参加費無料となっておりますので、多くの人のご参加をお待ちしています。
 2024年3月11日、12日に久留米高専において開催予定のマテリアルコンテスト最終決戦イベントでは、プレゼンテーションと衝撃破壊試験だけではなく、鍛造実習や高専見学など学外の方にも楽しんでいただけるイベントを準備しています。人数に限りはございますが、多くの人に楽しんでいただきたいと思っています。


◆久留米工業高等専門学校について

 久留米工業高等専門学校は、昭和14年に設立された旧制の久留米高等工業学校まで遡り、その後九州大学に吸収されたのち、昭和33年に久留米工業短期大学を経て、国立高専の第3期校として昭和39年に創設されましたが、全国の高専に先駆けて、昭和41年3月に最初の卒業生を送り出しています。
 教育理念である、自立の精神と創造性に富み、広い視野と豊かな心を兼ね備えた社会に貢献できる技術者の育成に努めています。


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【学校概要】

会社名:独立行政法人国立高等専門学校機構 久留米工業高等専門学校
所在地:福岡県久留米市小森野一丁目1番1号
校長:松村 晶
設立:1964年
URL:https://www.kurume-nct.ac.jp/
事業内容:高等専門学校・高等教育機関


◆本リリースに関する報道お問い合わせ先

久留米工業高等専門学校 総務課
TEL:0942-35-9333
e-mail:pi-staff.gad@on.kurume-nct.ac.jp


◆マテリアルコンテスト 久留米高専チームの様子

URL : https://note.com/kurume_asm/m/m4d9adf08945d


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