糸魚川総合病院 市内小中高校生の片頭痛有病率、痛み止めの飲み過ぎによる頭痛(薬物乱用頭痛)有病率を世界ではじめてオンライン調査 

プレスリリース発表元企業:新潟県厚生農業協同組合連合会 糸魚川総合病院

配信日時: 2023-01-24 10:20:00

GIGAスクール構想で整備された通信環境を用いて頭痛・片頭痛・薬物乱用頭痛の小中高校生の有病率調査をはじめて実施

 糸魚川総合病院 脳神経外科、同 小児科、糸魚川市こども教育課、同 健康増進課の研究チームは、糸魚川高校、糸魚川白嶺高校、海洋高校、能生国民健康保険診療所、仙台頭痛脳神経クリニックと共同で、「糸魚川市小中高校生の頭痛・片頭痛・痛み止めの使いすぎによる頭痛(薬剤の使用過多による頭痛、薬物乱用頭痛)有病率調査」を糸魚川紅ズワイガニ研究と題して行いました。コロナ禍で対面のコミュニケーションや調査が難しい中、GIGAスクール構想で整備された通信環境および通信端末を利用することで、小中高校生の頭痛有病率を世界で初めてオンライン調査により明らかにしました。小学生の頭痛、片頭痛、薬物乱用頭痛の有病率はそれぞれ26.5%、4.9%、0%、中学生では40.5%、11.3%、0.4%、高校生では51.0%、16.2%、1.5%でした。
 本研究は臨床神経学の医学雑誌「Clinical Neurology and Neurosurgery」に掲載されることが2023年1月19日に決定しました。



(説明)
 【背景】日本における片頭痛の年間有病率は8.4%で、20-40歳代の若年女性に多いと言われています。片頭痛を含め頭痛の大半は命に関わることはなく軽視されがちですが、片頭痛による欠勤や休業、学業や労働のパフォーマンス低下などによる間接的経済損失は1人あたり176万円/年と言われています。片頭痛を含め頭痛の多くは、1.痛いときに飲む「痛み止め」の適切な選択と内服 2.痛くなって困らないように頭痛の重症度や頻度を改善する「予防薬」の内服 の2本柱の治療により、生活への支障を最小限にコントロールすることができます。そのため、月に2回以上頭痛があるなど、頭痛により普段の生活に支障をきたしている場合は医療機関で適切な治療を受けることが、患者さん自身の生活の質の向上および日本の経済発展のために重要です。
これまでに成人の頭痛有病率の調査は世界的に行われてきましたが、日本の一地域において小学生、中学生、高校生まで縦断的に頭痛有病率を調べた研究は有りませんでした。またGIGAスクール構想で整備された通信端末や通信環境を用いた医学的調査もほとんどありません。そこで今回糸魚川総合病院、糸魚川市、糸魚川市内高校が協力し、コロナ禍で対面でのコミュニケーションや調査が難しい中、頭痛有病率のオンライン調査を行うことにしました。
【方法】グーグルフォームを用いたオンラインアンケートを作成し、小中高校生にアクセスのためのQRコードを配布しました。オンデマンドで好きな時間に家族と一緒に取り組んでいただきました。片頭痛の原因に対してクラスタリング解析も行いました。
【結果】糸魚川市児童・生徒の75.9%にあたる2489人の回答を集計。小学生の頭痛、片頭痛、薬物乱用頭痛の有病率はそれぞれ26.5%、4.9%、0%、中学生では40.5%、11.3%、0.4%、高校生では51.0%、16.2%、1.5%でした。コロナ禍によって頭痛が増えたと回答した割合は10.3%、減少した割合は4.0%でした。
頭痛が原因で抑うつを経験したことが有る人は70.3%、我慢したことがある人は69.5%、早退したことがある人は42.6%、学校を休んだことがある人は38.9%、授業に集中できなかったことがある人は37.2%、課外活動に支障があった人は32.1%でした。病院にかかったことがある人は34.6%でした。
片頭痛を引き起こす原因に対するクラスタリング解析により3つの片頭痛患者像が明らかになりました。1:天気、運動、睡眠、ストレス、月経、ゲームなどさまざまな原因によって頭痛が起きる集団。2:天気やスマートフォンによって頭痛が起きる集団。3:頭痛が起きる原因があまり特定できない集団。とくに集団2は生活に支障が出ているにも関わらず病院を受診しない傾向が明らかになりました。
【今後の展望】中学生や高校生は成人よりも頭痛の有病率が高いことがわかりました。また生活に支障が出ているのにも関わらず病院を受診しない集団が存在することも明らかになりました。今回の調査が小中高校生の健康管理に役立てば幸いです。
またGIGAスクール構想で整備された通信環境を用いる先進的な方法で調査を行いました。今後医学に限らず様々な分野において同様の研究手法を用いることが期待されます。
頭痛は適切な治療でその生活への支障を最小限にすることが可能な疾患であるため、今回の調査をきっかけに、小中高校生のみならず保護者や地域の方々も含め、頭痛への理解、医療機関への適切な受診が広まることが期待されます。そして、デジタルトランスフォーメーションによる更に便利な社会において、人々が充実した暮らしや活力あふれる生活を送り、日本が経済的に豊かになっていくことが願いです。


(論文情報)
論文名 School-based online survey on headache, migraine, and medication-overuse headache prevalence among children and adolescents in Japanese one city -Itoigawa Benizuwaigani Study –

著者 Masahito Katsuki, Yasuhiko Matsumori, Junko Kawahara, Chinami Yamagishi, Akihito Koh, Shin Kawamura, Kenta Kashiwagi, Tomohiro Kito, Masato Oguri, Shoji Mizuno, Kentaro Nakamura, Katsushi Hayakawa, Osamu Ohta, Noa Kubota, Hina Nakamura, Jun Aoyama, Isamu Yamazaki, Satoshi Mizusawa, Yasuhide Ueki, Takashi Ikeda, Fuminori Yamagishi.

掲載誌 Clinical Neurology and Neurosurgery (https://www.sciencedirect.com/journal/clinical-neurology-and-neurosurgery

DOI 10.1016/j.clineuro.2023.107610

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