【鶴岡高専】燃料電池等の次世代エネルギーデバイスに用いられる白金代替材料を共同開発・論文に発表

プレスリリース発表元企業:独立行政法人国立高等専門学校機構

配信日時: 2023-01-05 09:00:00

安価な燃料電池としての普及に大きな期待

独立行政法人国立高等専門学校機構 鶴岡工業高等専門学校(山形県鶴岡市 校長:森 政之 以下「鶴岡高専」という。)の専攻科を卒業された本間海斗さんが進学先の筑波大学と母校の鶴岡高専との共同研究のきっかけとなり、その成果を学術誌:Angewandte Chemie(出版社:Wiley-VCH)に発表・掲載されました。次世代の電気を生み出すシステムとされる燃料電池の高価な貴金属を使わないメタルフリーの材料としては世界最高レベルの性能を有し、燃料電池の普及に大いに貢献されることが期待されます。



[画像1: https://prtimes.jp/i/75419/258/resize/d75419-258-f0a42360cd597057281a-2.jpg ]



研究概要と背景

 カーボンニュートラルを実現する上で、水素と酸素からエネルギー(電気)を作り出す固体高分子型燃料電池(PEFC)※は極めて重要な発電システムの一つです。しかしながら、現在実用化されているPEFCの電極材料に用いられる白金系触媒(Pt/C)は、高性能である一方、非常に貴重な金属であるため埋蔵量が限られており、PEFCの価格上昇の原因の一つになっています。従って、PEFCを今以上に日常の生活に使用するまでに普及させるためには、高価な白金を使わない電極材料(触媒)の開発が求められています。その有力な候補として、非常に安くてたくさん身の回りにある炭素材料を主原料とし、長時間の作動にも適している窒素ドープカーボン触媒が注目されていますが、実際に燃料電池の材料として使用すると発電性能が低いという問題があり、実用化されていませんでした。
 鶴岡高専を含む、筑波大学、九州大学の研究チームはこれまでに、窒素ドープカーボン触媒の働きが燃料電池の発電時に低下する仕組みを調べ、燃料電池の電気を生み出す際に生成される水との関係がその原因であることを明らかにしてきました。今回、この仕組みに基づいて電極材料の設計を行い、燃料電池が電気を生み出す時でも白金系触媒に迫る性能と、鶴岡高専の森永教授の研究室が有する水素イオン(プロトン)を流す材料(ポリマーブラシ付与シリカ微粒子)を添加することで、更なる高い発電性能を示す窒素ドープカーボン触媒を開発することに成功しました。この材料は、金属を全く使用しないメタルフリー触媒としては世界最高レベルのものです。また長時間の運転も考慮すると、高価な貴金属を使用しない材料の中でも最高レベルといえます。この開発した材料を燃料電池に実際に使用して利用することができれば、様々な業界や我々の生活に大きな波及効果をもたらし、非常に大きなインパクトを持つ社会実装につながると期待されます。


概要図


[画像2: https://prtimes.jp/i/75419/258/resize/d75419-258-c22f035de18dec7698e3-0.png ]




掲載論文

題名:Activating Nitrogen-doped Graphene Oxygen Reduction Electrocatalysts in Acidic Electrolytes using Hydrophobic Cavities and Proton-conductive Particles.
   (疎水性キャビティとプロトン伝導粒子を用いた窒素ドープグラフェン酸素還元電極触媒の活性化)
発表論文URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.202212506
著者名:Santosh K. Singh, Kotaro Takeyasu, Kaito Homma, Shigeharu Ito, Takashi Morinaga,
    Yuto Endo, Moeko Furukawa, Toshiyuki Mori, Hirohito Ogasawara, Junji Nakamura



高専卒業生のコメント

筑波大学 修士2年生 本間 海斗 君

 燃料電池の開発は将来ゼロエミッションに向けて更に注目を集めていくと思います。その中で自分たちの研究がきっかけとなり、世界中の誰もが燃料電池の存在を知り、利用している社会になればと思います。また高専で行ってきた関連研究を大学院でも継続して行えたこと、高専で学んだ実験力、研究力が大学院でも活かせたことをうれしく思います。



本間君の卒業研究室担当教員のコメント

鶴岡高専 伊藤滋啓 准教授

 今回の成果は昨今のエネルギー問題解決、次世代代替エネルギーデバイス開発に大きな波及効果をもたらす成果かと思います。その成果を大学と高専がコラボレーションしてその架け橋を高専の卒業生が担ってくれたこと、卒業しても大学の研究室で頑張ってくれていることを非常にうれしく思います。今後もこのように高専を卒業して元気に活躍してくれる人材を育てていきたいと思います。


[画像3: https://prtimes.jp/i/75419/258/resize/d75419-258-6068b0db4a7490389fa7-1.jpg ]


【用語解説】
※固体高分子型燃料電池(PEFC)
 固体高分子形燃料電池(polymer electrolyte fuel cell, PEFC)は、イオン伝導性を有する高分子膜(イオン交換膜)を電解質として用いる燃料電池です。発電効率が高い、作動温度が低い、軽量コンパクトといった特徴からPEFCはわれわれの生活の中で利用しやすく、燃料電池自動車や家庭用電源に使われています。


鶴岡工業高等専門学校について


[画像4: https://prtimes.jp/i/75419/258/resize/d75419-258-46a2e3ca178e65e54426-4.jpg ]

【学校概要】
学校名:独立行政法人国立高等専門学校機構 鶴岡工業高等専門学校
所在地:山形県鶴岡市井岡字沢田104
代表者:校長 森 政之
設立:昭和38年(1963年)
URL:https://www.tsuruoka-nct.ac.jp/
事業内容:教育及び研究


【本研究に関するお問い合わせ先】
鶴岡工業高等専門学校創造工学科 化学・生物コース准教授 伊藤 滋啓
e-mail s-ito@tsuruoka-nct.ac.jp


【本リリースに関する報道お問い合わせ先】
鶴岡工業高等専門学校 総務課総務係 宮野 亮
TEL 0235-25-9034
e-mail s-soumu@tsuruoka-nct.ac.jp

[画像5: https://prtimes.jp/i/75419/258/resize/d75419-258-7e882adaeb34853d9c24-3.jpg ]

~2022年度、高等専門学校制度は創設60周年を迎えます~
https://www.kosen-k.go.jp/Portals/0/60th/

PR TIMESプレスリリース詳細へ