令和3年度 第41回 『伝統文化ポーラ賞』が決定
配信日時: 2021-08-17 10:00:00
~無形の伝統文化の発展に貢献された工芸・芸能分野の8件が受賞~
公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団 (理事長 小西尚子)は、事業の一環である『伝統文化ポーラ賞』の令和3年度各受賞者を決定しました。今年は優秀賞2件、奨励賞2件、地域賞4件の合計8件を表彰します。
令和3年度 第41回 『伝統文化ポーラ賞』が決定
~無形の伝統文化の発展に貢献された工芸・芸能分野の8件が受賞~
公益財団法人 ポーラ伝統文化振興財団 (理事長 小西尚子)は、事業の一環である『伝統文化ポーラ賞』の令和3年度各受賞者を決定しました。今年は優秀賞2件、奨励賞2件、地域賞4件の合計8件を表彰します。伝統文化ポーラ賞は、伝統工芸技術、伝統芸能、民俗芸能・行事など、無形の伝統文化の分野で貢献され、今後も活躍が期待される個人・団体に対し、更なる活躍と業績の向上を奨励することを目的としており、今年度で41回目を迎えます。
今年度の優秀賞は、九谷焼・色絵磁器の武腰 潤氏、長唄 (唄方)の杵屋 勝彦氏の、各分野の第一人者として長年にわたり活躍を続ける両氏に授与されました。
今回は初めての試みとして、無形文化財の魅力をより多くの人に体感してもらえるよう、本年度の受賞者に焦点を当てた受賞者記念展「BIRTH~それぞれのはじまり~」を12月4日(土)から12月11日(土)まで「すみだリバーサイドホールギャラリー」にて行います。詳細は後日、改めて発表いたします。弊財団は無形の伝統文化を次世代に継承すべき財産として、これからも永く支援を続けてまいります。
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■表彰内容
1)優秀賞 賞牌・賞状・副賞(100万円)
永年努力精進され、優れた業績を残して今後とも一層の業績を挙げることが期待でき、更新の指導・育成においても継続的に努力し実績をあげている個人または団体。
2)奨励賞 賞状・副賞(50万円)
将来に向けて、大きな業績を挙げ、成長の可能性が期待できる比較的若い個人または団体。
3)地域賞 賞状・副賞(50万円)
地域において永年地道に努力され、優れた業績を残して今後も継続・発展が期待でき、後進の指導・育成にも努めている個人または団体。
■ポーラ伝統文化振興財団について
「本当の美しさは、内面の美や心の豊かさを伴ってこそ初めて実現する」という想いの下、豊かな社会と文化の向上に寄与すべく、1979年に設立。日本の優れた伝統工芸技術、伝統芸能、民俗芸能・行事などの無形の文化財を対象に、保存・伝承・振興の活動を行っている。
優秀賞:武腰 潤「色絵磁器の伝承・制作」
■受賞内容について
白磁に色絵具で絵付けし、焼成したものを「色絵磁器」と呼びます。中国の明・清時代にその技術は発達し、17世紀中期に肥前有田 (佐賀県)に伝わったのち、加賀九谷 (石川県)でも導入されました。
「九谷焼」は五彩 (緑・黄・紫・紺青・赤)の色鮮やかな上絵付けを特徴とします。一般的に江戸時代前期に制作されたものは「古九谷」と呼ばれますが、近代以降はかつての画風などの影響を受けつつ現代的なデザインや文様が展開され、現在は個人作家たちによる多彩な作風を見ることができます。
■受賞のポイント
武腰氏は九谷焼・色絵磁器の第一人者として長年活躍しており、作品はニューヨークやロンドンなど海外からも高い評価を得ています。自ら釉薬の研究を重ねることでこれまでにない豊かな色彩を実現し、独自の色絵磁器の世界を創り続けていることが評価され、今回の受賞となりました。
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■作品紹介
山ぶどうの木陰で遊ぶ二羽の山蝉。皿はタタラ作り (轆轤などを用いず土を叩いて成形する技法)による成形。白い素地に透明感と深みのある緑が彩色され、生命のいぶきが生き生きと表現されています。繊細な筆づかいと色釉の厚みが生み出す立体感からは、熟練した釉法技術がうかがえます。
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■武腰潤 (たけごしじゅん)プロフィール
昭和23年、代々色絵磁器の家系・三代泰山 (たいざん)の長男として石川県能美郡寺井町に生まれる。金沢美術工芸大学の日本画科を卒業後、26歳で本格的に作陶をはじめる。日展などで多数の受賞歴をもち、平成26年には石川県文化功労賞を受賞。平成28年、石川県九谷焼美術館の館長に就任。平成29年からは石川県指定無形文化財保持団体「九谷焼技術保存会」の会長として後継者育成と九谷焼の普及にも尽力している。
優秀賞:杵屋 勝彦「長唄の伝承・振興」
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■受賞内容について
江戸時代に成立した「長唄」(ながうた)は、日本の声楽を代表するジャンルの一つであり、数人の唄方と三味線方によって演奏されます。歌舞伎の伴奏音楽としても知られ、長唄演奏家が担当する音楽を「歌舞伎囃子」といい、舞台上で演奏する「出囃子」(でばやし)と、舞台下手の「黒御簾」(くろみす)などで演奏する「陰囃子」(かげばやし)からなります。長唄は重要無形文化財に指定されており、受賞者の杵屋 勝彦は保持者の一人として長唄の継承に努めています。
■受賞のポイント
唄方として活躍する杵屋氏は、歌舞伎座や国立劇場での歌舞伎公演にて演奏を行うほか、「杵勝会」の理事として長唄の普及、振興、伝承に励んでいます。また、長唄の研究においても多大な貢献があり、特に、「稀曲」(ききょく)、すなわち上演される機会が少ない貴重な曲の研究にも努めています。稀曲への深い理解に基づいた演奏と研究は随一のものと称賛されています。
長年にわたり修行を積まれ、輝かしい功績をのこすだけでなく、後進の育成にも尽力しています。その他、掛川市では毎年鑑賞会を開催しており、「輝くかけがわ応援大使」も務めるなど、長唄界の今後を明るく照らす杵屋氏の更なる活躍が期待され、今回の受賞となりました。
■公演歴
平成24年に設立された「稀曲の試み」の会ですが、新型コロナウイルス拡大の影響を受け、令和2年9月には、紀尾井小ホールにて公演「稀曲の試み」を無観客にて実施。本年9月には、同会場での「稀曲の試み」の公演を予定しているなど、コロナ禍での長唄の上演にも尽力しています。
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■杵屋勝彦 (きねやかつひこ)プロフィール
昭和38年、東京都生まれ。幼少のころから、端唄や民謡に興味を持ち、独学で三味線を始める。高校二年生からは「長唄三味線」を杵屋勝雄師に師事。昭和57年、東京藝術大学音楽学部邦楽科長唄三味線専攻入学。在学中より「長唄」を東音福田克也師に師事。現在、一般財団法人杵勝会 理事などを務め、長唄界を牽引するほか、輝くかけがわ応援大使 (静岡県掛川市)なども務め、一般への長唄文化の普及に尽力している。
奨励賞:四代 田辺 竹雲斎「竹工芸の伝承・制作」
■受賞内容について
日本では、日用道具をつくるための素材として、古くから竹が用いられてきました。江戸時代の終わり頃には大阪や京都を中心に、中国からもたらされた煎茶が流行し、日本全国へと広まります。煎茶道具として花籠や盛籠など竹籠の需要が高まると、高度な技術を習得した籠師たちが次々と現れ、独自の表現を発展させていきました。
明治時代以降、大阪の竹工芸を代表する人物となったのが初代田辺竹雲斎 (1877~1937)です。精緻に編んだ唐物風の作品で名を馳せ、柳里恭式 (りゅうりきょうしき)という独創的な装飾を特徴とする様式を編み出しました。パリ万国装飾美術工芸博覧会に出品するなど、日本の近代竹工芸を興隆に導いていきました。
■受賞のポイント
伝統的な技術を用いて制作される精緻で可憐な花籠や茶道具は、国内だけでなく欧米諸国からも高い評価を得ています。また、伝統技術を駆使し、竹工芸の精神性を表現する造形作品は、伝統工芸の可能性の指針ともなっています。自身の工房では多数の弟子を受け入れ、竹工芸の技術継承にも力を入れていることから、今回の受賞となりました。
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■作品紹介
四代竹雲斎氏の作品は、初代から三代にわたる竹工芸のワザの基盤の上に成り立っています。初代竹雲斎の竹の美を生かす手法、二代目の繊細かつ優美な造形、そして父である三代目の枠にとらわれない芸術の在り方。歴代の竹雲斎のワザの妙味が集約され、清麗かつ躍動感を湛える四代竹雲斎氏の作品は生み出されます。
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■四代 田辺竹雲斎 (よんだい たなべちくうんさい)プロフィール
昭和48年、大阪府堺市生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業した後、父・三代竹雲斎のもと竹工芸を本格的に学ぶ。平成14年、ニューヨークで個展開催。平成28年、第63回日本伝統工芸展奨励賞受賞。平成29年、四代田辺竹雲斎を襲名。国内外において竹工芸への興味を喚起し、その認知を広める活動を精力的に行なっている。
奨励賞:新内 多賀太夫「新内節の伝承・振興」
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■受賞内容について
新内節は、延享~安永年間 (1744~81)頃に江戸で生まれた浄瑠璃 (三味線伴奏による語り物)です。受賞者の新内多賀太夫氏は、昭和57年、新内節冨士元派家元・新内仲三郎氏の長男として東京に生まれ、現在は新内節の伝承・振興につとめる若手演奏者として活躍しています。
新内節は「新内流し」という独特な演奏形態においても知られています。二人一組で街を歩きながら演奏するもので、文化文政時代 (1804~30)に始まったとも考えられています。かつては「流し」といえば新内流しを意味するほど、江戸の街の「サウンドスケープ」(音風景)として印象深いものでした。新内多賀太夫氏は深川江戸資料館においてこの新内流しの再現を行うなど、新内流しの紹介にも尽力しています。
■受賞のポイント
多賀太夫氏は、平成4年に新内剛士の名で舞台活動を始め、平成29年4月には冨士元派七代目家元・新内多賀太夫を襲名し、 冨士元派家元(新内協会理事)として活動をしています。また、東京藝術大学大学院にて、音楽学位博士を取得されるなど、演奏と研究の世界で幅広く活躍していることから、今回の受賞となりました。
■公演歴
歌舞伎や新派公演、国立劇場、三越劇場、紀尾井ホール主催公演等に、平成13年より立語りとして出演して好評を得ています。
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■新内多賀太夫 (しんないたがたゆう)プロフィール
昭和57年、新内節冨士元派家元・新内仲三郎さん(人間国宝)の長男として東京に生まれる。幼少より新内節の修行を積み、10歳のころより、新内剛士として舞台を務める。その後、平成23年、東京藝術大学大学院音楽研究科にて音楽学位博士号を取得。平成29年4月、冨士元派七代目家元・新内多賀太夫を襲名。平成25年、第33回松尾芸能賞新人賞、平成26年、第68回文化庁芸術祭賞新人賞、平成27年、第65回芸術選奨文部科学大臣新人賞、平成30年(2018)の第22回日本伝統文化振興財団賞といった各賞を受賞し、華々しい足跡をのこしている。
地域賞:浦川 太八「アイヌ木工芸の伝承・制作」
■受賞内容について:アイヌ木工芸
北海道、千島列島、樺太などの広い地域に暮らしてきたアイヌの人々は、生活用具などを自らの手で制作しつつ、周囲の諸民族との交易を通じて、独自の文化を育んできました。江戸時代末期ごろには交易品や土産品として茶盆・衣紋掛・糸巻などの木工芸品の制作をしていたことも確認されています。こうした木彫りの仕事は主に男性によって担われていました。戦後は木工芸品が産業として興隆すると同時に、アイヌ文化の保存伝承にも関心が深まり、さまざまな技術継承の活動も行われました。
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■受賞のポイント
長年にわたりアイヌ民具の制作に精通しており、なかでもマキリ(小刀)づくりの匠として著名です。その精緻な細工には習熟した技が表れています。また、自ら制作した道具を使いアイヌ伝統の狩猟や漁撈を実践しています。国立民族学博物館やアイヌ民族文化財団の依頼を受けてアイヌ民族資料の制作や複製に協力する一方、アイヌ木工芸の後継者育成などにも尽力していることから、今回の受賞となりました。
■作品の紹介
浦川氏の作品は、実用性に優れた造形であることはいうまでもなく、彫りこまれたアイヌ文様が制作に対する真摯な姿勢をも浮き彫りにしています。整えられた文様の美しさのみを求めるのではなく、作品を通じ、その根底を流れるアイヌの伝統を伝えることを信条としています。
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■浦川太八 (うらかわたはち)プロフィール
昭和16年、北海道浦河町に生まれ、アイヌ文化の伝承者である母親のもとで育つ。30代の頃より木彫制作に携わるとともに、自らが制作した道具も用いて山猟や川漁を行ない、アイヌの伝統文化の実践的継承に取り組む。平成20年第12回アイヌ文化奨励賞受賞。国立民族学博物館をはじめ、国立アイヌ民族博物館などに多数の作品が所蔵・展示されている。
地域賞:秋保の田植踊保存会「田植踊の保存・伝承」
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■受賞内容について
秋保の田植踊は、宮城県仙台市太白 (たいはく)区秋保の馬場・長袋・湯元地区に伝わる田植踊の総称です。国指定重要無形民俗文化財であり、平成21年にはユネスコ無形文化遺産代表一覧表に記載されました。小正月 (正月15日)の頃に豊作を願って行われているもので、江戸時代後期には行われていたものと考えられています。
秋保の田植踊は三つの地区の保存会がそれぞれに伝承活動に従事しており、地元の祭礼での奉納だけでなく、地元住民が主催する民俗芸能大会などを通して、民俗芸能の振興にも尽力しています。
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■受賞のポイント
田植を統率する「弥十郎」(やんじゅうろう)、苗を植える「早乙女」(さおとめ)。この田植踊における二つの重要な役を演じるのは小中学生であり、保存会は後継者の育成を最大の課題として伝承活動に取り組んでいます。高校進学後も祭礼の手伝いを積極的にする人がいることなど、芸能を通じた地域住民のつながりは、伝承の大きな力となっていることから、今回の受賞となりました。
■公演歴
平成27年には第3回国連防災会議の枠組みにおける国際専門家会合レセプション、平成28年にはG7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議の歓迎レセプション、そして平成29年には日本・タイ修好130周年記念事業の一貫としてタイ王立舞踊団との交流事業に参加し、その華麗な踊りを披露しました。
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■秋保の田植踊保存会 (あきうのたうえおどりほぞんかい)プロフィール
秋保の田植踊についての明確な発生年は諸説あるものの、江戸時代後期には行われていたものと考えられている。一般へは、昭和23年に民俗芸能研究で著名な本田安次が調査・紹介し、その名が広く知られていくきっかけとなった。平成16年文部科学大臣表彰 (長袋田植踊保存会)、平成17年、文部科学大臣表彰 (湯元田植踊保存会)、平成18年 文部科学大臣表彰 (馬場植踊保存会)、令和3年、宮城県知事表彰 (長袋・湯元・馬場の3団体)。東北地方の田植踊は、予祝儀礼がきわめて洗練された形で舞踊化の道を歩んで成立したものであると考えられており、秋保の田植踊りが余興として有する「鎌倉踊り」や早乙女の美しい姿は、その芸能化の様子を今に伝えている。
地域賞:瀬戸本業窯「瀬戸焼の制作・伝承」
■受賞内容について
瀬戸焼は、愛知県瀬戸市で生産される陶磁器の総称で、日本六古窯のひとつにも数えられます。鎌倉から室町時代にかけて生産された灰釉、鉄釉などは「古瀬戸」と呼ばれ中世唯一の施釉陶器誕生となります。江戸時代後期になると九州より伝わった染付磁器の生産が興隆し、新しく登場した磁器は「新製焼」、従来の陶器の仕事を「本業焼」と呼び分けました。明治時代以降は近代化が進み食器にとどまらずノベルティー、碍子、ファインセラミックスなどに展開し、瀬戸は日本における陶磁器生産の中心となっていきました。
■受賞のポイント
瀬戸本業窯は、本業伝統の釉薬を用いた豊かな彩色と絵付を特徴とする実用陶器をつくり続けています。「本業」の歴史・文化の普及に尽力しているとともに、地域の文化財である古い登り窯の保存活用や資料館の運営を行うなど、瀬戸の本業を次世代へ伝える取り組み等が評価され、今回の受賞となりました。
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■作品の紹介
江戸時代後期から昭和にかけて瀬戸・洞町を中心に生産されていましたが、近年、途絶えていた伝統文様を瀬戸本業窯で蘇らせました。鉄や呉須を使い勢いよく描かれた渦巻文には絵付師の習熟した技が見られます 。
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■瀬戸本業窯 (せとほんぎょうがま)プロフィール
瀬戸・洞町 (ほらまち)において約250年にわたり本業焼の伝統を受け継ぐ。六代水野半次郎の時代に民藝運動の指導者である柳宗悦をはじめ濱田庄司、バーナード・リーチらとの親交を持ち、瀬戸焼の「本業窯」として民藝の世界でも広く知られるようになった。現在は七代水野半次郎と八代後継の水野雄介が轆轤師・絵付師らとともに、むかしながらの分業制を守りながら健全な作品を生み出している。
地域賞:犬飼農村舞台保存会「襖からくりと地芝居の保存・伝承」
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■受賞内容について
徳島県徳島市八多町 (はたちょう)の五王神社境内。鎮守の森に囲まれた犬飼農村舞台は、明治6年に建造された農村舞台です。農村舞台とは、人形浄瑠璃や地芝居のために地域で造られ、守られてきた野外舞台であり、地域住民による舞台の保存活動は、地域芸能の文化伝承にも大きく貢献してきました。
時代の移り変わりとともに取り壊される舞台も増える中、五王神社の氏子を中心として昭和48年に設立された犬飼農村舞台保存会は舞台の保存に尽力し、舞台は平成10年に国指定重要有形民俗文化財に指定されました。
■受賞のポイント
五王神社の秋の例祭では、地芝居や人形浄瑠璃だけでなく、保存会による「襖からくり」が披露されます。徳島市無形民俗文化財に指定されるこの芸能は、132枚の襖が目にも鮮やかな42景の景色・動物・花・文様などを次々と繰り出すもので、熟練したからくり操作によって観客を魅了してやみません。
毎年、県内外から500人以上の観客が訪れるほか、襖からくりを伝習するべく訪れる他地域の農村舞台保存会の人びとも多く訪れます。また、平成19年には国立劇場において保存会による襖からくりが披露されました。農村舞台の保存・伝承だけでなく、地域に伝わる様々な民俗芸能の伝承に寄与していることから、今回の受賞となりました。
■公演歴
保存会では後継者育成のため、平成24年の国民文化祭で、高校生を中心とした人形浄瑠璃が犬飼農村舞台において上演。また、平成25年には、大阪芸術大学の学生によるファッション×舞踊×襖からくりのコラボレーション公演を実施。新型コロナウイルスが流行した令和2年度は、無観客での公演だけでなく、独自に映像の撮影・編集を行い、インターネットで公開しました。
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■犬飼農村舞台保存会 (いぬがいのうそんぶたいほぞんかい)プロフィール
明治初期より続く犬飼農村舞台での襖からくりは、少子高齢化や過疎化の影響により1959年以降、公演が中止されていた。しかし、「文化を絶やしたくない」という地域住民の声により、度重なる補修作業や襖からくり技術の復興運動により、1976年10月に復活公演を行うこととなった。そのような地域の人々の活動が実を結び、1998年12月、国指定重要有形民俗文化財に指定。舞台が要となり、地域の地芝居など、様々な無形文化の伝承に寄与している。
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